老人ホーム紹介サービスとは?無料の仕組みと上手な使い方を元入居相談員が解説
老人ホームを探していると、「老人ホーム紹介サービス」や「老人ホーム紹介センター」という言葉を目にすることがあります。
呼び方は事業者によって異なりますが、この記事では、本人や家族から希望を聞き、老人ホーム探しや見学調整などを支援する民間サービスを「老人ホーム紹介サービス」と呼びます。
施設を探してくれる。
空室を確認してくれる。
見学の日程を調整してくれる。
それなのに、本人や家族は無料で相談できるところが多い。
そう聞くと、
「それで、どうやって商売しているの?」
と思いますよね。
私は実際に老人ホームの紹介会社で入居相談員として働き、本人や家族から相談を受け、施設探しや見学調整などをしていました。
だからこの記事では、
「無料で便利なのでおすすめです」
だけで終わらせるつもりはありません。
紹介会社も事業です。
便利なところはたくさんあります。
一方で、紹介する側で働いていたからこそ分かる事情や、利用する前に知っておいた方がいい限界もあります。
その両方を、できるだけ包み隠さずお伝えします。
- 老人ホーム紹介サービスとは何をしてくれるのか
- 無料で利用できる仕組み
- 紹介手数料は誰が支払っているのか
- 入居相談員が実際にしていた仕事
- 紹介サービスのメリットと限界
- 元入居相談員から見た上手な使い方
- 老人ホーム紹介サービスは「一緒に施設を探すサービス」
- 老人ホーム紹介サービスはなぜ無料なの?
- 紹介手数料の仕組みを何度も説明していたのには理由がある
- 紹介手数料があるからといって、悪いサービスという話ではない
- 「ほかにはないんですか?」と聞かれて困ったこともある
- 正直、私も「これは難しいぞ」と思った相談があった
- 「1週間後に退院です」から施設を探したこともある
- 空室確認は「部屋が空いてますか?」だけでは終わらない
- 見学には同行することもあれば、家族だけで行ってもらうこともあった
- 紹介サービスのメリットは「たくさん紹介してくれること」だけじゃない
- 紹介サービスでも、すべての老人ホームを紹介できるとは限らない
- 相談員によって経験や得意分野に差がある
- 紹介手数料が高い施設ばかり紹介されることはないの?
- 老人ホーム紹介サービスのデメリットも知っておこう
- 元入居相談員の私なら、紹介サービスをこう使う
- 老人ホーム紹介サービスについてよくある質問
- まとめ|紹介サービスは「理想の施設を出してくれる場所」ではない
老人ホーム紹介サービスは「一緒に施設を探すサービス」
老人ホーム紹介サービスは、本人や家族から希望を聞き、条件に合いそうな老人ホームを探して提案してくれる民間サービスです。
事業者によってサービス内容は異なりますが、施設探しだけでなく、空室確認や見学の日程調整などを行っているところもあります。
ただ、私が実際にしていた仕事を振り返ると、
「条件をパソコンに入力して、候補を3施設出す」
そんな単純な仕事ではありませんでした。
まず確認していたのは、本人が今どんな生活をしているのかです。
- 介護度はどのくらいか
- 認知症の状態はどうか
- 医療的な対応は必要か
- 希望する地域はどこか
- 毎月の予算はどのくらいか
- いつ頃までに入居したいのか
- 本人や家族が何に困っているのか
こうしたことを一つずつ聞きながら、施設を探すための条件を整理していました。
相談してくるのは家族だけではありません。
ケアマネや病院の医療ソーシャルワーカーなどから、
「施設を探している方がいるんですが」
と相談を受けることもありました。
電話だけでは状況が分かりにくければ、直接会って話を聞くこともありました。
老人ホームを探す前に、そもそも「何を基準に探すのか」を一緒に整理する。
これも入居相談員の大切な仕事だったと思っています。
家族の希望をそのまま検索するだけでもなかった
たとえば、
「この地域がいい」
「月額はこのくらいまで」
「できれば個室」
「認知症にも対応してほしい」
といった希望があったとします。
もちろん、まずはその条件で探します。
でも、老人ホーム探しでは希望が全部きれいに揃う施設が見つからないことも普通にあります。
そんなときは、
「もう少しエリアを広げると候補があります」
「この条件を少し変えれば、別の施設も検討できます」
と提案することもありました。
あえて最初の希望から少し外れた施設を候補に入れることもあります。
これは家族の希望を無視しているわけではありません。
比較してみることで、
「駅から多少離れても、こっちの方が本人には合いそう」
「建物の新しさより、介護体制を優先したい」
と、家族自身の優先順位が見えてくることもあるからです。
私自身、紹介サービスは、
「希望を入力すれば理想の老人ホームが出てくる場所」
というより、
「家族と一緒に、現実的な選択肢を探していくサービス」
だと思っています。
老人ホーム紹介サービスはなぜ無料なの?
ここは、利用するなら知っておいてほしいところです。
多くの老人ホーム紹介サービスでは、本人や家族から相談料を受け取るのではなく、紹介した老人ホームへの入居が決まった際に、施設側から紹介会社へ支払われる紹介手数料を収益の一つとしています。
つまり、
「無料だから、誰もお金を払っていない」わけではありません。
利用する本人や家族ではなく、施設側から紹介会社へ紹介手数料が支払われる仕組みです。
私は入居相談員をしていた頃、この話を聞かれたときだけ説明していたわけではありません。
ヒアリングの段階で、こちらから説明していました。
紹介会社はボランティアではありません。
会社として運営している以上、当然ですが収益が必要です。
だから私は、
「私たち紹介会社は、この紹介手数料で成り立っているんです」
ということも、ご家族にお伝えしていました。
無料の理由をぼかして、
「とにかく無料なので安心してください」
とだけ伝えるより、仕組みを知ったうえで利用してもらった方がいいと考えていたからです。
「実際、紹介手数料っていくらなの?」と聞かれたこともある
施設見学へ向かう車の中で、ご家族から、
「実際、紹介手数料っていくらくらいなんですか?」
と聞かれたこともありました。
まあ、気になりますよね(笑)。
ただ、具体的な紹介手数料の金額についてはお答えしていませんでした。
施設運営会社との契約内容に関わることですし、条件も一律ではなかったからです。
利用する家族にとって大切なのは、具体的な金額よりも、
「無料で利用できる背景には、施設側から紹介会社へ支払われる紹介手数料がある」
という仕組みを知っておくことだと思います。
紹介手数料の仕組みを何度も説明していたのには理由がある
ここからは、少し紹介会社側の事情も書きます。
私が働いていた当時、施設運営会社によっては、紹介会社から施設を提案したあとに家族が先に施設へ直接問い合わせたり、そのまま見学へ行ったりすると、紹介会社経由として扱われないケースがありました。
そうなると、最終的に入居が決まっても、紹介会社へ紹介手数料が支払われない場合があります。
だから、
「気になる施設があったら、まずこちらへ連絡してくださいね」
ということは、ご家族にもかなり説明していました。
ここまで読むと、
「なんだ。結局、紹介会社が手数料をもらえなくなるからでしょ?」
と思う方もいるかもしれません。
その部分は否定しません。
それも理由の一つです。
紹介手数料で事業を運営している以上、紹介会社にとって大切なことです。
でも、実際に仕事をしていると、それだけではありませんでした。
ご家族が先に施設へ連絡して話を進めてしまい、こちらが把握していないところで見学や入居の話まで進んでしまったことが、稀ですが実際にありました。
あとから相談を受けて、
「えっ、もうそこまで話が進んでいるんですか?」
となるわけです。
こうなると、紹介会社側も途中から状況を把握し直さなければならず、うまく対応できないことがありました。
紹介サービスが間に入って施設探しを進めるなら、
空室確認。
本人の状態の共有。
受け入れ可能かどうかの確認。
見学の日程調整。
こうした連絡をある程度一本化した方が、話を整理しやすかったんです。
パンフレットに電話番号のシールまで貼っていました
今振り返ると、本当に地味な仕事もしていました。
家族へ老人ホームのパンフレットを送るとき、
私が働いていた紹介会社の電話番号が書かれたシールを、パンフレットにわざわざ貼っていました。
気になることがあったら、施設へ直接連絡するのではなく、まず紹介会社へ連絡してもらうためです。
パンフレットを用意して。
電話番号のシールを貼って。
資料を揃えて。
封筒に入れて送る。
老人ホームの入居相談員というと、家族と面談して、きれいなパンフレットを広げながら施設を紹介している姿を想像するかもしれません。
でも実際には、こんな地味な作業も普通にやっていました(笑)。
そして、その小さなシールにもちゃんと意味がありました。
紹介手数料があるからといって、悪いサービスという話ではない
ここは誤解してほしくありません。
施設側から紹介手数料を受け取る仕組みだからといって、
「老人ホーム紹介サービスは使わない方がいい」
という話ではありません。
むしろ私は入居相談員として働いていて、
「これを家族だけで全部やるのは大変だろうな」
と思う場面を何度も見てきました。
空室はあるのか。
予算に収まるのか。
認知症の状態に対応できるのか。
必要な医療に対応できるのか。
いつから入居できるのか。
候補になりそうな施設へ一件ずつ確認していく。
そして、一件目で決まるとは限りません。
「空室はあるけど、この状態では難しいです」
と言われることもあります。
また次を探します。
老人ホームを探している家族が、時間にも気持ちにも余裕があるとは限りません。
退院期限が迫っていることもあります。
在宅介護が限界に近づいていることもあります。
条件が重なり、なかなか候補が出てこないこともあります。
そんなときに、
施設探しを一緒に進める人がいる。
これは、実際に紹介する側で働いた今でも、老人ホーム紹介サービスの大きなメリットだと思っています。
ただし――
紹介サービスを利用すれば、どんな条件でも理想の老人ホームが見つかるわけではありません。
私自身、
「これはなかなか厳しいぞ……」
と頭を悩ませた相談もありました。
そして、ご家族から、
「ほかにはないんですか?」
と聞かれて困ったこともあります。
次は、そんな実際の施設探しを交えながら、老人ホーム紹介サービスのメリットと「できること・できないこと」をもう少し具体的に見ていきます。
「ほかにはないんですか?」と聞かれて困ったこともある
紹介サービスを利用すれば、希望に合う老人ホームを何十施設も紹介してもらえる。
そんなイメージを持っている方もいるかもしれません。
でも、実際の施設探しはそんなに簡単ではありません。
本人の状態。
介護度。
認知症や医療面。
予算。
希望する地域。
入居したい時期。
条件が増えるほど、候補になる施設は絞られていきます。
私も入居相談員として、条件に合いそうな施設をいくつか提案したあと、ご家族から、
「ほかにはないんですか?」
と聞かれたことがありました。
そう言われると、こちらももう一度探します。
エリアを少し広げたらどうか。
予算を変えられないか。
施設の種類を変えたら候補が出ないか。
本人の状態を受け入れてくれそうな別の施設はないか。
それでも――
ないものは、ないんです(笑)。
もちろん、ご家族にそんな言い方はしませんでした。
実際には少し言葉を選びながら、
「この条件ですと、今ご案内できるのはこのあたりですね」
とお伝えしていました。
入居相談員だからといって、存在しない施設を作り出すことはできません。
無理に候補数を増やすために、本人の状態や予算に合わない施設を並べても意味がない。
紹介サービスにも、できることとできないことがあります。
私は、そこも知ったうえで利用してもらった方がいいと思っています。
条件が厳しいときほど「何を動かせるか」を考えていた
候補が少ないときに、
「ありません」
で終わらせていたわけではありません。
むしろ、そこから考えます。
たとえば、
- 希望エリアを少し広げられないか
- 施設の種類を変えられないか
- 予算の考え方を整理できないか
- 絶対に必要な条件と、妥協できる条件を分けられないか
- すぐ入居する必要があるのか、少し待てるのか
全部の条件を動かす必要はありません。
本人や家族にとって、
「ここだけは譲れない」
という条件もあります。
だから、何を守って、どこなら少し広げられるのかを一緒に考える。
実際の施設探しでは、こういう作業を何度もしていました。
正直、私も「これは難しいぞ」と思った相談があった
入居相談員として働いていると、比較的すぐ候補が見つかる相談もあれば、なかなか見つからない相談もあります。
私が特に頭を悩ませた条件の一つが、
要支援で、生活保護を利用している方の施設探し
でした。
生活保護を利用している方を受け入れていること。
費用面で条件に合うこと。
さらに、要支援の方でも入居対象になること。
そこに希望地域や本人の状態なども加わります。
条件を一つずつ重ねていくと、
「いやー、これは候補が少ないぞ……」
となることもありました。
紹介サービスを利用している家族からすれば、
「専門の人なんだから、どこか見つけてくれるだろう」
と思うかもしれません。
でも、専門職や入居相談員でも、条件そのものを変えることはできません。
だから、施設へ電話して相談する。
別の地域を探す。
ほかの施設種別を検討する。
条件をもう一度整理する。
簡単に見つからないときに、次に何を考えるか。
そこに相談員の経験が出る仕事だったと思っています。
→「生活保護でも老人ホームに入れる?入居できる施設・費用・利用できる制度をケアマネが解説【2026年版】」
「1週間後に退院です」から施設を探したこともある
老人ホーム探しが難しくなるのは、条件だけではありません。
時間がない。
これもかなり大きいです。
私が実際に担当した中には、
「1週間後に退院が決まっています」
という相談もありました。
1週間。
普通に聞けば、それなりに時間があるように感じるかもしれません。
でも、老人ホームへ入居するとなると、やることはたくさんあります。
本人の状態を確認する。
家族の希望を聞く。
予算を確認する。
候補になる施設を探す。
空室を確認する。
本人の状態や必要な医療について施設へ伝える。
受け入れ可能か確認する。
見学する。
施設を決める。
契約や入居の準備をする。
これを1週間の中で進めていく。
結構バタバタします。
しかも、
「空室があります」
と言われたからといって、それで入居できるわけではありません。
本人の状態を伝えたら、
「申し訳ありませんが、今回は難しいです」
となることもあります。
そうなれば、また次を探します。
病院まで行って話を聞いたこともある
退院期限が迫っていて、医療的な対応も必要だった方の施設を探したことがあります。
そのときは病院まで出向き、ご本人やご家族、医療ソーシャルワーカーから話を聞きました。
そこから条件を整理して、候補になりそうな施設へ確認していきます。
でも、やはり全部の施設が受け入れてくれるわけではありません。
断られた施設もありました。
また探す。
また確認する。
そして、受け入れてくれる施設を探していく。
最終的に入居先が決まったときは、
こちらもホッとしました。
これは今でも覚えています。
紹介サービスのメリットを説明するとき、
「施設探しの時間を短縮できます」
と書けば一行で終わります。
もちろん、それも間違いではありません。
でも、私が実際に働いて感じていたメリットはもう少し泥臭いものでした。
家族だけではかなり大変な施設探しを、一緒に走る人がいる。
特に時間がないときは、そこに紹介サービスの価値があると思っています。
→「老人ホーム入居までの流れを徹底解説|相談から入居まで7ステップ【ケアマネ監修】」
空室確認は「部屋が空いてますか?」だけでは終わらない
老人ホーム紹介サービスのメリットとして、空室確認をしてもらえることがあります。
これも実際にやっていました。
でも、
「空いていますか?」
「はい、空いています」
「じゃあ紹介します」
ではありません。
本人の状態によっては、空室があっても入居できないことがあります。
だから施設へ確認するときには、必要に応じて、
- 介護度
- 認知症の状態
- 必要な介助
- 医療的な対応
- 入居を希望する時期
などを伝え、
「この方の受け入れは可能ですか?」
というところまで確認していました。
もちろん、最終的な入居可否は面談や診療情報なども踏まえて施設側が判断します。
それでも、家族が一件ずつ施設へ電話して、
「こういう状態なんですが入れますか?」
と最初から説明する負担を減らせるのは、紹介サービスのメリットです。
一方で、ここにも限界があります。
紹介会社が「大丈夫です」と言えば入居できるわけではありません。
最終的に受け入れを判断するのは施設です。
紹介サービスは、その間に入って情報を整理し、施設へつなぐ役割だと考えた方が分かりやすいと思います。
見学には同行することもあれば、家族だけで行ってもらうこともあった
私が入居相談員をしていた頃は、ご家族と一緒に老人ホームを見学することもありました。
車で施設まで向かい、一緒にホームを見て回る。
そんな仕事もしていました。
でも、すべての見学に同行していたわけではありません。
私が働いていた当時の会社は土日祝日が定休日でした。
一方、ご家族は平日に仕事をしていて、
「見学できるのは土日しかありません」
ということも珍しくありません。
そういうときは施設側と調整して、ご家族だけで見学へ行ってもらうことも実際にありました。
だから、
「紹介サービスを利用すれば、相談員が必ず見学に同行してくれる」
とは限りません。
現在の営業日や同行サービスについては、利用する紹介会社へ確認してください。
それでも、私は見学して決めてほしいと思っていた
相談員が同行するかどうかより、私が大切だと思っていたのは、
本人や家族が実際に施設を見ること
です。
資料だけでは分からないことがあります。
職員の雰囲気。
入居者さんの様子。
施設のにおい。
共有スペースの空気感。
居室までの距離。
周辺環境。
こういうものは、実際に行ってみないとなかなか分かりません。
私が同行できるときには、車の中でもご家族といろいろ話をしていました。
緊張していないかな。
不安に思っていることはないかな。
そんなことも気にしながら施設へ向かっていました。
見学が終わったあとには、
「実際に見てどうでした?」
と感想を聞く。
そこで初めて、
「思っていたより良かった」
となることもあれば、
「ちょっと違うかな」
となることもあります。
それでいいんです。
施設見学は、契約するためだけに行くものではありません。
「ここは違う」と確認することにも意味があります。
→「老人ホーム見学チェックリスト15選」
紹介サービスのメリットは「たくさん紹介してくれること」だけじゃない
ここまで書いてきたことを考えると、私が思う老人ホーム紹介サービスのメリットは、単純に「施設をたくさん知っている」ことだけではありません。
- 本人や家族の希望条件を一緒に整理できる
- 候補施設の空室や受け入れ可否を確認してもらえる
- 条件が合わないときに別の探し方を提案してもらえる
- 見学の日程調整などを任せられる場合がある
- 退院期限など時間がない施設探しを一緒に進めてもらえる
ただし、何度も書いているように万能ではありません。
紹介できる施設には限りがあります。
希望条件によっては、候補が数施設しかないこともあります。
相談員によって経験にも差があります。
見学に必ず同行してもらえるとも限りません。
それでも私は、施設探しに困ったときに相談できる選択肢の一つとして、紹介サービスには十分な価値があると思っています。
ただ――
ここで、もう一つ知っておいてほしいことがあります。
紹介サービスは、世の中にあるすべての老人ホームを自由に紹介できるとは限りません。
私が実際に働いていたときも、提携状況によって紹介できる施設と、そうではない施設がありました。
ここは紹介手数料の仕組みとも関係する、紹介サービスの大切な「限界」です。
次はこの部分を含めて、利用する前に知っておきたいデメリットと、私ならどう使うかをお伝えします。
紹介サービスでも、すべての老人ホームを紹介できるとは限らない
ここは、老人ホーム紹介サービスを利用する前に知っておいてほしいところです。
紹介会社によって提携している老人ホームは異なります。
そのため、
「地域にある老人ホームを、すべて紹介してもらえる」
とは限りません。
私が入居相談員として働いていたときも、提携状況などによって紹介できる施設と、そうではない施設がありました。
これは、先ほどお伝えした紹介手数料の仕組みとも関係します。
紹介サービスは、施設側から支払われる紹介手数料などによって事業を運営しています。
そのため、紹介会社と施設運営会社との契約や提携状況によって、紹介できる施設の範囲が変わることがあります。
候補が少ない=相談員が探していない、とは限らない
これは実際に紹介する側にいたからこそ、伝えておきたいことです。
ご家族からすると、
「紹介会社なら、もっとたくさん老人ホームを知っているんじゃないの?」
と思うこともあるでしょう。
もちろん、探し方が足りない可能性を疑うこと自体は悪くありません。
でも、
- 予算
- 希望地域
- 介護度
- 認知症の状態
- 医療的な対応
- 入居希望時期
- 施設側の受け入れ条件
こうした条件が重なった結果、本当に候補が少ないこともあります。
先ほど書いたように、私自身もご家族から、
「ほかにはないんですか?」
と聞かれたことがあります。
こちらも探します。
条件を見直します。
施設にも確認します。
それでも候補が増えない。
そんなことは実際にありました。
だから、候補が少ないと感じたら、
「どうしてこの施設しか候補にならないんですか?」
と相談員に聞いてみてください。
理由をきちんと説明してくれる相談員なら、その説明自体が施設を選ぶための材料になります。
相談員によって経験や得意分野に差がある
老人ホーム紹介サービスは、会社だけで選べばいいとも限りません。
実際に担当する相談員との相性や経験も大切です。
私自身、入居相談員として仕事を始めたばかりの頃から、何でも分かっていたわけではありません。
施設の特徴。
費用。
医療対応。
認知症の受け入れ。
地域ごとの施設事情。
実際に施設を見たり、施設の担当者と話したり、ご家族から相談を受けたりしながら覚えていくこともたくさんありました。
これは、どんな仕事でも同じだと思います。
だから、
「紹介会社の相談員だから、誰でも同じレベルで施設を提案できる」
とは考えない方がいいでしょう。
私は「絶対ここがいい」とは言わないようにしていた
私が入居相談員をしていた頃、気をつけていたことがあります。
それは、
「絶対にこの施設が合っています」
と言い切らないことです。
もちろん、
「この条件なら、この施設は候補になると思います」
「ここは一度見てみてもいいと思います」
という提案はします。
でも、そこで暮らすのは私ではありません。
本人です。
そして、その生活を支えていく家族です。
パンフレットを見て良さそうでも、実際に見学したら、
「なんとなく違う」
と感じることもあります。
逆に、最初は第二候補だった施設を見学して、
「こっちの方がいい」
となることもあります。
最後に決めるのは、本人と家族。
私は、そのための材料を集めて、一緒に考えるのが入居相談員の役割だと思っていました。
紹介手数料が高い施設ばかり紹介されることはないの?
ここまで紹介手数料の話をしてきたので、
「だったら、紹介手数料が高い老人ホームを優先して紹介されることもあるんじゃないの?」
と思う方もいるでしょう。
この疑問を持つのは自然だと思います。
ただ、私はすべての老人ホーム紹介会社の営業方針や契約内容を知っているわけではありません。
そのため、
「紹介業界では絶対にそんなことはありません」
とは言い切れません。
一方で、私自身が入居相談員として施設を探していたときは、まず本人の状態や家族の希望、予算などから候補を考えていました。
紹介手数料だけを見て、
「この施設に入ってもらおう」
と決めていたわけではありません。
そもそも本人の状態を受け入れられなければ入居できません。
予算が合わなければ続きません。
家族が納得しなければ選ばれません。
老人ホームは、紹介して終わりの商品ではなく、その人が生活する場所です。
だからこそ、紹介された施設をそのまま決めるのではなく、本人や家族自身でも比較することが大切です。
老人ホーム紹介サービスのデメリットも知っておこう
ここまでの内容を一度整理します。
紹介サービスは便利です。
でも、万能ではありません。
- 紹介会社によって提携している施設が異なる
- 地域にあるすべての施設を紹介できるとは限らない
- 相談員によって経験や得意分野に差がある
- 希望条件によっては候補がほとんど出ないこともある
- 見学に必ず同行してもらえるとは限らない
- 最終的な入居可否は施設側が判断する
でも、私はこれらを「だから紹介サービスは使わない方がいい理由」だとは思っていません。
仕組みと限界を知って使えばいいんです。
紹介サービスだけで決める必要もありません。
ケアマネに相談してもいい。
地域包括支援センターへ相談してもいい。
自分で施設を探してもいい。
そして、紹介サービスを使ってもいい。
施設探しの入口は一つではありません。
→「老人ホーム探しはどこに相談する?無料相談窓口と失敗しない施設の探し方をケアマネが解説」
元入居相談員の私なら、紹介サービスをこう使う
もし今、私自身が家族の老人ホームを探すことになったら、紹介サービスも選択肢に入れます。
特に、
- 老人ホームの違いがよく分からない
- どこから探せばいいか分からない
- 仕事や介護で施設探しに時間をかけられない
- 退院期限が迫っている
- 医療面などの条件があり、受け入れ先を探すのが難しい
- 候補施設の空室や受け入れ可否を一件ずつ確認するのが大変
こういう状況なら、相談するメリットは大きいと思います。
ただし、
「紹介サービスに任せれば、あとは何もしなくていい」
とは考えません。
私なら、紹介された理由を聞きます。
できれば複数の施設を比較します。
見学にも行きます。
分からないことは質問します。
そして最後は、自分たちで決めます。
→「老人ホーム見学チェックリスト15選」
老人ホーム紹介サービスについてよくある質問
本人や家族から相談料や紹介料を受け取らず、無料で利用できる紹介サービスは多くあります。
その場合、入居が決まった際に施設側から紹介会社へ支払われる紹介手数料などが収益になります。
ただし、サービス内容や料金体系は事業者によって異なるため、利用前に確認してください。
「老人ホーム紹介サービス」「老人ホーム紹介センター」など、呼び方は事業者によって異なります。
この記事では、本人や家族の希望を聞き、老人ホーム探しや見学調整などを支援する民間サービスを「老人ホーム紹介サービス」と呼んでいます。
いいえ。
紹介された施設はあくまで候補です。
見学したうえで合わないと感じれば、別の施設を検討して構いません。
最終的にどこへ入居するかを決めるのは本人や家族です。
もちろん構いません。
ただし、紹介サービスから提案された施設へ直接問い合わせる場合は、先に担当相談員へ確認した方がいいことがあります。
紹介会社や施設によって、問い合わせや見学の流れ、紹介の取り扱いが異なるためです。
必ず見つかるとは限りません。
予算、地域、本人の状態、医療面、介護度、入居希望時期などの条件によっては、候補がかなり限られることがあります。
候補が少ない場合は、「なぜ少ないのか」「どの条件なら広げられるのか」を相談員と一緒に確認してみてください。
紹介会社によって異なります。
私が働いていた当時も、同行できる見学もあれば、ご家族だけで見学へ行ってもらうこともありました。
同行を希望する場合は、対応可能か事前に確認しておきましょう。
まとめ|紹介サービスは「理想の施設を出してくれる場所」ではない
老人ホーム紹介サービスについて、実際に入居相談員として働いていた経験も交えながらお伝えしてきました。
- 老人ホーム紹介サービスは施設探しや空室確認などを支援してくれる
- 本人や家族が無料で利用できる背景には紹介手数料の仕組みがある
- 紹介会社によって提携施設やサービス内容は異なる
- 条件によっては紹介できる施設が少ないこともある
- 相談員にも経験差があり、紹介サービスは万能ではない
- 紹介された施設を比較し、最後に決めるのは本人と家族
入居相談員をしていた頃、本当にいろいろな相談がありました。
1週間後に退院が決まっている。
医療的な対応が必要。
要支援で生活保護を利用している。
予算も地域もできるだけ変えたくない。
そして、いくつか施設を提案すると、
「ほかにはないんですか?」
と聞かれる。
こちらも、もう一度探します。
でも、どうしてもないこともある。
ないものは、ないんです(笑)。
それでも、
「じゃあ、どうするか」
を家族と一緒に考える。
エリアを少し広げるのか。
条件を整理し直すのか。
別の施設種別を考えるのか。
施設へ直接相談してみるのか。
私は、そこまで含めて入居相談員の仕事だったと思っています。
老人ホーム紹介サービスは、
「希望を伝えれば、理想の老人ホームを出してくれるサービス」
ではありません。
「本人や家族と一緒に、現実的な選択肢を探していくサービス」
です。
仕組みを知る。
紹介会社にも事情があることを知る。
紹介サービスにも限界があることを知る。
そのうえで上手に使えば、老人ホーム探しで頼れる相談先の一つになると思います。
→「良い老人ホームの特徴7選|後悔しない施設選びのポイント」
私は介護現場、施設ケアマネ、老人ホームの入居相談員として、施設を「探す側」「紹介する側」「入居後を支える側」に関わってきました。
紹介サービスには、家族だけでは大変な施設探しを手伝ってもらえる大きなメリットがあります。
一方で、紹介会社も事業ですし、どんな条件でも施設を見つけられる魔法のサービスではありません。
だからこそ、私は「全部お任せする」のではなく、「一緒に探してもらう」くらいの使い方がちょうどいいと思っています。
監修・執筆:よっしー
介護福祉士・介護支援専門員
介護現場、施設ケアマネ、老人ホーム入居相談員としての経験をもとに執筆しています。


