老人ホームの種類と違いを徹底解説|6種類の特徴・費用・選び方を比較
老人ホームを探し始めると、まず困るのが「種類が多すぎて、何が違うのか分からない」という問題です。
実際、老人ホーム入居相談員としてご家族から相談を受けていた頃も、
「結局、うちの親ならどこを探せばいいんですか?」
というところで迷っている方は少なくありませんでした。
そして、介護現場や施設ケアマネとして施設の中を見てきた立場から、もう一つ伝えたいことがあります。
同じ種類の施設だからといって、中身まで同じではありません。
特養でも、ユニット型と多床室では生活の雰囲気が違います。
住宅型有料老人ホームも、職員体制や介護サービスの受け方は施設によって違います。
サ高住にいたっては、自立度の高い方が暮らす住宅に近いところから、介護付きホームとして運営されているところまであります。
老人ホームの「種類」は入口にすぎません。大切なのは、その先にある実際の暮らしを見ることです。
この記事では代表的な6種類について、制度上の違いだけでなく、私が介護現場・施設ケアマネ・老人ホーム入居相談員として実際に見てきたことも交えながら解説します。
- 老人ホームの代表的な6種類と違い
- 特養・老健・介護付き・住宅型・サ高住・グループホームの特徴
- それぞれどんな人が候補になりやすいのか
- 介護サービスの受け方や職員体制の違い
- 施設の種類だけでは分からない「実際の暮らし」
- 自分の親ならどの施設から探せばいいのか
- 老人ホームは「施設の種類」から決めなくていい
- 老人ホームの代表的な6種類をざっくり比較
- 特別養護老人ホーム(特養)|原則要介護3以上の長期的な生活の場
- 介護老人保健施設(老健)|「ずっと暮らす場所」とは役割が違う
- 介護付き有料老人ホーム|「3:1」でも職員が余っているわけではない
- 住宅型有料老人ホーム|「施設に介護職員がいる=全部施設の介護」ではない
- サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)|同じ「サ高住」でもかなり幅がある
- グループホーム|「アットホーム」という言葉だけでは分からない
- 結局、うちの親ならどの老人ホームを選べばいい?
- 老人ホーム選びで「施設の種類」より見てほしい5つのこと
- 老人ホームの種類に関するよくある質問
- まとめ|老人ホームは「種類」を選ぶのではなく「暮らし」を選ぶ
老人ホームは「施設の種類」から決めなくていい
老人ホームを探すとなると、
「特養がいいのかな?」
「有料老人ホームの方が安心?」
「認知症だからグループホーム?」
と、最初に施設の名前を決めたくなるかもしれません。
でも、私はその順番を逆にしてもいいと思っています。
先に整理したいのは、本人の状態と生活です。
- どのくらい介護が必要なのか
- 認知症はあるのか、どんな症状があるのか
- 医療的な対応はどのくらい必要なのか
- 毎月どのくらいまでなら無理なく支払えるのか
- 本人はどんな生活をしたいのか
この5つを整理してから施設を見ると、候補を絞りやすくなります。
こういう場合も、「要介護3だから特養」「認知症だからグループホーム」だけでは決められません。
本人の認知症の状態、必要な介護、医療、予算、空室状況、そして本人がどんな環境で暮らしたいかによって候補は変わります。
老人ホームの代表的な6種類をざっくり比較
この記事では、老人ホーム探しでよく候補になる次の6種類を比較します。
| 種類 | 大まかな特徴 | 候補になりやすい人 |
|---|---|---|
| 特別養護老人ホーム(特養) | 介護保険施設で、長期的な生活の場 | 原則要介護3以上で常時介護が必要な人 |
| 介護老人保健施設(老健) | リハビリなどを行い在宅復帰・在宅療養を支援 | 退院後などにリハビリや在宅復帰支援が必要な人 |
| 介護付き有料老人ホーム | ホームが介護サービスを提供 | 介護を受けながら長く暮らしたい人 |
| 住宅型有料老人ホーム | 生活支援を受けながら、必要に応じて介護保険サービスを利用 | 必要な介護サービスを組み合わせながら暮らしたい人 |
| サービス付き高齢者向け住宅(サ高住) | 安否確認・生活相談サービスがある高齢者向け住宅 | 比較的自立した人から介護が必要な人まで施設により幅がある |
| グループホーム | 認知症の人が少人数で共同生活 | 認知症があり、一定の入居条件を満たす人 |
こうして並べると違いが分かりやすく見えます。
ただ、ここで一つ注意してほしいことがあります。
この表だけ見て「うちの親はここ」と決めないでください。
私は介護職、施設ケアマネ、老人ホーム入居相談員としていろいろな施設を見てきましたが、同じ「住宅型」、同じ「介護付き」、同じ「特養」でも中身は結構違います。
職員の人数。
介護のやり方。
入居している人の状態。
生活の自由度。
医療への対応。
施設の雰囲気。
看板が同じだから、中身まで同じとは限りません。
ここからは6種類を一つずつ、制度と現場の両方から見ていきます。
特別養護老人ホーム(特養)|原則要介護3以上の長期的な生活の場
特別養護老人ホーム、いわゆる「特養」は、常時介護を必要とする人が生活する介護保険施設です。
新規入所は原則として要介護3以上が対象になります。
要介護1・2でも、やむを得ない事情がある場合には特例的に入所対象となることがあります。
- 新規入所は原則要介護3以上
- 食事・入浴・排泄など日常生活の介護を受けられる
- 長期的な生活の場として利用される
- ユニット型個室や多床室など居室タイプがある
- 施設や地域によって待機状況が異なる
ここまでは制度上の説明です。
では、実際の現場はどうだったのか。
私が見てきた特養は「要介護3から」のイメージより重かった
これはあくまで私自身の経験ですが、初めて特養の現場を見たときは正直驚きました。
「要介護3以上っていうけど、要介護3の人ってどこにいるんだろう?」
そう感じるくらい、介護量の多い方が目立つ施設もありました。
100人規模の特養で、私の体感では9割以上の方が車いすを利用しているように見えた施設もあります。
もちろん、これは私が実際に関わった施設での経験であり、全国すべての特養がそうだという意味ではありません。
ただ、入居者の多くに移乗、排泄、入浴、食事など何らかの介助が必要になる現場では、職員の身体的な負担も大きくなります。
ベッドから車いすへ。
車いすからトイレへ。
そしてまた車いすへ。
一日に何度も移乗介助を繰り返す。
介護職として現場を経験してきた私は、「そりゃ腰もやられるよな……」と思ったものです(笑)。
こういう部分は、「特養は原則要介護3以上です」という説明だけではなかなか見えてきません。
特養を見るときは入居条件だけでなく、「実際にどんな状態の人が暮らしているのか」まで見てほしいと思います。
同じ特養でもユニット型と多床室では雰囲気が違う
もう一つ知っておきたいのが、「特養」とひとまとめにしないことです。
特養には、少人数の生活単位でケアを行うユニット型や、複数人で一つの居室を使用する多床室などがあります。
私が現場で見てきた感覚でも、ユニット型と従来型・多床室では、職員の動き方や入居者との関わり方に違いを感じました。
ユニット型だから絶対に良い。
多床室だから悪い。
そんな単純な話ではありません。
本人が個室を好むのか。
人の気配がある方が落ち着くのか。
費用をどこまで負担できるのか。
そうしたことも含めて考える必要があります。
→「特養と有料老人ホームの違いを徹底比較|費用・入居条件・サービスをわかりやすく解説」
介護老人保健施設(老健)|「ずっと暮らす場所」とは役割が違う
介護老人保健施設、いわゆる「老健」は、特養とは役割が異なります。
老健は、病状が安定した人に対してリハビリテーションや必要な医療・介護などを提供し、在宅復帰や在宅療養を支援する役割を持つ介護保険施設です。
そのため、最初から「ここでずっと暮らす」という目的で選ぶ施設とは少し違います。
こうしたときに、老健が選択肢になることがあります。
病院から自宅へ一直線に戻るのが難しい場合などに、リハビリや介護を受けながら今後の生活を考えていきます。
- 在宅復帰・在宅療養支援が大きな役割
- リハビリテーションを受けられる
- 医師・看護職・リハビリ専門職などが配置される
- 特養のような長期的な生活の場とは目的が異なる
- 退所後の生活も含めて考える必要がある
私は老健勤務経験がない。だからこそ、ここは言い切らない
ここは先に正直に書いておきます。
私は老健で勤務した経験はありません。
介護職・施設ケアマネ・老人ホーム入居相談員として老健や老健を利用する方と関わった範囲での話になります。
その中で、介護量の多い方を見て、
「この状態から、本当に自宅へ戻れるのだろうか」
と感じたことはありました。
もちろん、私が外から見ただけでは分からない事情もあります。
在宅復帰といっても、自宅だけではなく、その人の状態や家族の介護力、住環境、利用できるサービスなどを含めて退所後の生活を考えていく必要があります。
だから老健を、単純に「リハビリができる老人ホーム」とだけ理解するのは少し違うと思っています。
老健を利用するときは、「入ること」だけでなく「その後どこで、どう暮らすのか」まで一緒に考えることが大切です。
介護付き有料老人ホーム|「3:1」でも職員が余っているわけではない
介護付き有料老人ホームは、介護保険の「特定施設入居者生活介護」の指定を受けた有料老人ホームです。
食事や生活支援だけでなく、入浴・排泄・移動など、必要な介護をホームの職員から受けながら生活します。
老人ホームを探しているご家族にとっては、比較的イメージしやすい施設かもしれません。
- 特定施設入居者生活介護の指定を受けている
- ホームの職員から介護サービスを受ける
- 要介護度に応じた介護保険サービス費がかかる
- 施設によって職員体制・医療対応・看取りなどに違いがある
- 自立から入居できるホームもあれば、要介護者を中心とするホームもある
「3:1」という数字だけでは現場の忙しさは分からない
介護付き有料老人ホームについて調べると、よく出てくるのが「3:1」という数字です。
一般型の特定施設では、要介護者に対する看護・介護職員の配置について、常勤換算で3:1以上という人員基準があります。
ただし、ここは勘違いしやすいところです。
「3:1だから、入居者3人につき職員1人が24時間ずっとそばにいる」という意味ではありません。
早番もいる。
日勤もいる。
遅番もいる。
夜勤もいる。
休みの職員もいる。
そうした勤務を含めた人員配置の基準です。
見学時に「当施設は3:1の人員配置です」と説明されても、その瞬間にフロアへ何人の職員がいるかとは別の話です。
私自身、介護付き有料老人ホームで働いてきましたが、正直、
「今日は職員が余ってるなあ」
なんて感じた日は、ほとんど記憶にありません(笑)。
入浴介助をしている職員がいる。
トイレ介助に入っている職員がいる。
居室でコールが鳴る。
食事の準備もある。
記録もしなければならない。
その最中に転倒や急変が起きることもあります。
基準上の人数と、現場で感じる「手が足りているか」は必ずしも同じではありません。
同じ介護付きでも「中身」は結構違う
もう一つ覚えておきたいのが、介護付き有料老人ホーム同士でも違いがあることです。
たとえば、
- 看護職員がいる時間
- 夜間の職員体制
- 認知症への対応
- 医療処置への対応
- 看取りの方針
- 外出・外泊・面会など生活の自由度
こうした部分は施設によって違います。
「介護付き」という名前だけで安心するのではなく、本人に必要な介護や医療が、その施設で実際に受けられるのかを確認しましょう。
介護付き有料老人ホームについて詳しく知りたい方は、こちらの記事でも解説しています。
→「特養と有料老人ホームの違いを徹底比較|費用・入居条件・サービスをわかりやすく解説」
住宅型有料老人ホーム|「施設に介護職員がいる=全部施設の介護」ではない
住宅型有料老人ホームは、食事や生活支援などを受けながら暮らす有料老人ホームです。
介護が必要になった場合は、訪問介護・通所介護などの介護保険サービスを利用しながら生活するのが基本的な仕組みです。
ここが、介護付き有料老人ホームとの大きな違いです。
- 有料老人ホームの一つ
- 食事・生活支援などを受けながら暮らす
- 介護が必要な場合は訪問介護などを利用する
- 介護サービスの利用量によって自己負担が変わることがある
- 職員体制や提供サービスは施設ごとの差が大きい
住宅型は「誰が、どの立場で介護しているのか」が分かりにくい
住宅型有料老人ホームは、初めて見学する家族には少し分かりにくいと思います。
なぜなら、施設の中に介護職員らしい人が普通にいるからです。
そうすると、
「この人たちが必要な介護を全部やってくれるんでしょ?」
と思いますよね。
でも、住宅型ではホームとして提供する生活支援と、訪問介護などの介護保険サービスを分けて考える必要があります。
施設に訪問介護事業所が併設されているケースもあり、同じ建物の中でサービスが提供されていると、利用する側からはさらに分かりにくく感じることがあります。
まさにそこです。
制度を知っている人なら区別できますが、初めて老人ホームを探す家族にそこまで理解しろという方が難しいと思います。
住宅型では「職員がいるか」だけでなく、「誰が・どの立場で・どこまで対応してくれるのか」を確認することが大切です。
職員が多く見える住宅型もあれば、少なく感じる住宅型もあった
ここからは私の経験です。
私が見てきた住宅型有料老人ホームは、職員体制の見え方が本当に施設によって違いました。
「結構、職員さんがいるな」と感じるところもあれば、
「この人数で回しているのか……」
と思ったところもあります。
もちろん、見学した時間帯だけで人員体制のすべてを判断することはできません。
また、住宅型有料老人ホームそのものの職員と、併設・外部の訪問介護事業所などの職員は、制度上の立場も異なります。
だからこそ、パンフレットに「24時間スタッフ常駐」と書いてあるだけでは、介護体制のすべては分かりません。
医療に特化した住宅型では費用が大きく変わることもあった
住宅型でもう一つ注意したいのが、月額料金だけでは実際の支払額が見えにくいケースがあることです。
老人ホーム入居相談員をしていた頃、医療ニーズの高い方を受け入れている住宅型などでは、パンフレットに載っている月額料金だけを見ても、実際に必要になる費用が分かりにくいことがありました。
介護保険サービスの自己負担。
医療費。
生活支援の費用。
日用品。
そのほかの個別費用。
本人の状態によって必要なサービスが変われば、総額も変わります。
住宅型は「月額○万円」という数字だけで比較せず、本人の状態なら最終的に月いくらになるのかまで確認してください。
老人ホームの費用については、こちらの記事で詳しく解説しています。
→「老人ホームの費用はいくら?月額・前払金・追加費用をわかりやすく解説」
サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)|同じ「サ高住」でもかなり幅がある
サービス付き高齢者向け住宅、いわゆる「サ高住」は、高齢者が安心して暮らせるよう一定の基準を満たした高齢者向け住宅です。
基本となるサービスは、安否確認と生活相談です。
ここは大事なので、先に覚えておきましょう。
「サ高住」という名前だけで、介護サービスが全部ついているとは限りません。
- 高齢者向けの「住宅」という位置づけ
- 安否確認・生活相談サービスが基本
- 介護が必要な場合は外部サービスなどを利用するタイプがある
- 特定施設入居者生活介護の指定を受けたサ高住もある
- 設備・サービス・入居者の自立度などは住宅によって幅がある
特定施設のサ高住を見ると「介護付きと何が違うの?」と思うこともある
サ高住を分かりにくくしている理由の一つが、特定施設入居者生活介護の指定を受けているサ高住もあることです。
こうしたサ高住では、介護付きホームとして介護サービスが提供されます。
私自身、施設を見て回っていた頃、特定施設の指定を受けたサ高住を見ると、
「ここまで来ると、介護付き有料老人ホームと何が違うんだ?」
と思ったことがありました(笑)。
もちろん、建物や契約、制度上の位置づけなどには違いがあります。
ただ、老人ホームを探している家族からすれば、名称だけ見て違いを理解するのは簡単ではありません。
そういうサ高住もあります。
一方で、介護が必要な方が多く暮らしているところや、特定施設として介護サービスを提供しているところもあります。
「サ高住だから自立向け」
「サ高住だから介護は少ない」
と名前だけで決めつけない方がいいでしょう。
ホテルみたいなサ高住も実際にあった
老人ホーム入居相談員として都内の施設を見ていた頃、かなり高級感のあるサ高住を見学したことがあります。
エントランスに入ると、普通の介護施設というよりホテルのような雰囲気。
コンシェルジュのようなスタッフがいて、入居者からの相談などにも対応していました。
初めて見たときは、
「これもサ高住なのか」
と思ったくらいです(笑)。
もちろん、すべてのサ高住にコンシェルジュがいるわけではありませんし、その名称や役割も住宅によって異なります。
逆に、もっとシンプルな設備・サービスで、自分のペースで暮らすことを重視したサ高住もあります。
つまり、
「サ高住」という一つの名前の中に、かなり違う暮らし方がある。
これが、私がいろいろな施設を見て感じたことです。
サ高住は「何が付いていて、何が別なのか」を確認する
サ高住を検討するときは、設備の豪華さだけでなく、サービスの中身を確認しましょう。
- 介護が必要になったら、どのようにサービスを利用するのか
- 夜間はどのような職員体制なのか
- 食事・掃除・洗濯などは料金に含まれるのか
- 医療が必要になった場合はどこまで対応できるのか
- 介護量が増えても住み続けられるのか
特に自立度が高いうちに入居する場合は、「今の生活」だけでなく、介護が必要になった後も暮らせるのかを確認しておくと安心です。
サ高住と住宅型有料老人ホームの違いについては、こちらで詳しく比較しています。
→「サ高住と住宅型有料老人ホームの違い|どっちを選ぶ?特徴・費用・介護サービスを比較」
グループホーム|「アットホーム」という言葉だけでは分からない
グループホーム(認知症対応型共同生活介護)は、認知症のある方が少人数で共同生活を送りながら、必要な介護や日常生活上の支援を受ける地域密着型サービスです。
1つの共同生活住居(ユニット)は少人数で構成され、家庭的な環境の中で生活することを大切にしています。
- 認知症の診断を受けている方が対象
- 原則として要支援2または要介護1以上が対象
- 少人数で共同生活を送る
- 地域密着型サービスのため、原則として施設所在地の市区町村の住民が対象
- 認知症の状態や医療ニーズなどによっては入居が難しい場合もある
グループホームを紹介するパンフレットやホームページでは、
「家庭的な雰囲気」
「入居者と職員が一緒に食事を作る」
「できることは自分で行いながら暮らす」
といった説明を目にすることがあります。
もちろん、実際にそうした支援を大切にしているグループホームもあります。
ただ、私が現場で見てきた経験から言えば、「グループホーム=みんなで仲良く家庭的に暮らしている」とイメージだけで決めつけない方がいいと思っています。
「利用者と一緒に料理」は、すべての施設で同じではない
私が実際に関わったグループホームでも、食事づくりへの利用者の関わり方は施設によって違いました。
利用者と一緒に調理することを積極的に取り入れているところもあれば、実際の調理はほとんど職員が行っているところもありました。
これには、いろいろな理由があります。
- 本人の認知症の状態
- 包丁や火を扱う際の安全面
- 衛生管理
- その日の本人の体調や気分
- 職員体制や業務量
介護現場では、食事づくりだけをしているわけではありません。
排泄介助もする。
入浴介助もする。
認知症の方への対応もする。
その合間に記録を書き、掃除や洗濯をして、食事の準備もする。
私自身、排泄介助などを行った直後に利用者と一緒に調理することについて、衛生面が気になったこともありました。
もちろん、適切な手洗いや衛生管理を行うことが前提です。
それでも、現場で働く人間として抵抗を感じる場面があったのは事実です。
少人数だから必ず人間関係が良いとも限らない
これも、そんな単純ではありません(笑)。
グループホームは少人数で生活するからこそ、利用者同士や職員との距離が近くなります。
人間が一緒に暮らす以上、当然ながら相性もあります。
気が合う人もいれば、合わない人もいる。
認知症の症状によって、ほかの利用者との関係が難しくなることもあります。
職員だって人間です。
だから、私は「アットホーム」という言葉だけでは判断しません。
むしろ見学したときに、
- 利用者がどんな表情で過ごしているか
- 職員が利用者にどんな言葉で話しかけているか
- 本人が一人で過ごす時間も尊重されているか
- 利用者同士の距離感はどうか
- 職員が必要以上に行動を強制していないか
こういう日常の空気を見ます。
「アットホーム」は説明で聞くものではなく、実際の暮らしを見て自分で感じるもの。
私はそのくらいでいいと思っています。
グループホームと介護付き有料老人ホームの違いはこちらで詳しく解説しています。
→「グループホームと介護付き有料老人ホームの違いを徹底比較|費用・医療・向いている人をケアマネが解説【2026年版】」
結局、うちの親ならどの老人ホームを選べばいい?
ここまで読んで、こう思った方もいるでしょう。
それでいいんです。
老人ホームの種類を全部覚えることがこの記事の目的ではありません。
ここからは、本人の状態から候補を考えてみましょう。
要介護3以上で介護量が多いなら特養を候補に
要介護3以上で、食事・排泄・入浴・移動など日常生活全般に介護が必要な場合は、特養が候補になります。
費用面でも民間の有料老人ホームと比較して検討されることが多い施設です。
ただし、地域や施設によって入所状況は異なります。
「特養に申し込んだから、それまで何もしなくていい」ではありません。
現在の介護が限界に近い場合は、有料老人ホームなどほかの選択肢も並行して考えましょう。
退院後すぐ自宅へ戻るのが難しいなら老健も候補に
入院治療は終わったものの、自宅へ戻るにはリハビリや生活の立て直しが必要な場合などは、老健が候補になることがあります。
ただし、老健は長期的な生活の場としての特養とは役割が違います。
入所するときから、退所後の生活まで意識しておきましょう。
施設の介護を受けながら暮らしたいなら介護付き
介護が必要で、ホームの職員による介護を受けながら生活したい場合は、介護付き有料老人ホームが候補になります。
ただし、同じ介護付きでも職員体制・医療・認知症・看取り・料金などには違いがあります。
「介護付きだから全部対応できる」ではありません。
必要な介護サービスを組み合わせたいなら住宅型
住宅型有料老人ホームでは、生活支援を受けながら、必要に応じて訪問介護などの介護保険サービスを利用します。
施設によってサービスや職員体制の違いが大きいため、本人の状態で実際にどのサービスを利用し、総額いくらになるのかまで確認しましょう。
比較的自由な生活を希望するならサ高住も候補に
比較的自立度が高く、自分の生活を続けながら安否確認・生活相談などのサービスを受けたい場合は、サ高住も候補になります。
ただし、第2部で説明したように、サ高住にはかなり幅があります。
介護が必要になったあとも住み続けられるかまで確認してください。
認知症があり少人数の環境が合いそうならグループホーム
認知症があり、少人数の環境で生活することが本人に合っている場合は、グループホームが候補になります。
ただし、入居には認知症の診断や要介護度、住所地など一定の条件があります。
また、医療ニーズや認知症の状態などによって受け入れが難しい場合もあります。
介護量が多く要介護3以上
→ 特養を候補に
在宅復帰に向けたリハビリが必要
→ 老健を候補に
ホームの介護を受けながら暮らしたい
→ 介護付き有料老人ホームを候補に
必要な介護サービスを利用しながら暮らしたい
→ 住宅型有料老人ホームを候補に
比較的自立していて住まいとしての自由度も重視したい
→ サ高住を候補に
認知症があり少人数での生活が合いそう
→ グループホームを候補に
老人ホーム選びで「施設の種類」より見てほしい5つのこと
ここまで6種類を説明してきましたが、私は施設選びで種類以上に見てほしいことがあります。
- 本人に必要な介護を受けられるか
- 必要な医療へ対応できるか
- 認知症が進んでも暮らし続けられるか
- 費用を長期的に払い続けられるか
- 本人らしい生活ができるか
この5つです。
老人ホーム入居相談員をしていた頃、いろいろな施設を見ました。
高級ホテルのようなサ高住もありました。
介護量の多い方が大勢暮らしている特養もありました。
同じ住宅型でも、職員が多いと感じるところもあれば、少なく感じるところもありました。
グループホームも、パンフレットだけ見ればどこも「家庭的」に見えます。
でも、施設の名前やパンフレットだけでは、そこでの暮らしは分かりません。
パンフレットの言葉を一度「具体的な質問」に変えてみる
施設見学では、説明をそのまま聞くだけではなく、少し具体的に質問してみてください。
| よくある説明 | 一歩踏み込んだ質問 |
|---|---|
| 手厚い介護体制です | 夜間は何人の職員で対応していますか? |
| 医療機関と連携しています | 夜間に急変した場合はどう対応しますか? |
| 家庭的な雰囲気です | 普段、入居者さんはどんなふうに過ごしていますか? |
| レクリエーションが充実しています | 参加したくない場合は、自室などで過ごしても大丈夫ですか? |
| 24時間スタッフがいます | 夜間の人数と、介護が必要な場合の対応を教えてください |
この聞き方をするだけでも、かなり見えてくるものがあります。
施設の説明を疑う必要はありません。でも、「それって実際にはどういうこと?」と一歩だけ踏み込んでみてください。
老人ホーム見学で確認したいポイントはこちらの記事で詳しくまとめています。
→「老人ホーム見学チェックリスト15選|後悔しないために見るべきポイント」
老人ホームの種類に関するよくある質問
施設の種類だけで「一番手厚い」とは決められません。
介護付き有料老人ホームや特養などは介護を受けながら生活する施設ですが、実際の職員体制・夜間配置・看護体制・認知症への対応などは施設によって異なります。
種類だけでなく、本人に必要な介護を実際に受けられるか確認しましょう。
要介護3以上であれば特養が候補になりますが、要介護度だけで決める必要はありません。
医療ニーズ、認知症、本人の希望、家族の状況、費用、入所までの期間などによって、有料老人ホームなどを含めて検討することもあります。
必ずしもそうとは限りません。
グループホームは認知症の方を対象とするサービスですが、介護付き有料老人ホームや特養などでも認知症の方が生活しています。
本人の認知症の状態・必要な介護・医療・生活環境などを合わせて考えましょう。
大きな違いの一つは介護サービスの受け方です。
介護付き有料老人ホームは、特定施設入居者生活介護の指定を受け、ホームが介護サービスを提供します。
住宅型有料老人ホームでは、必要に応じて訪問介護などの介護保険サービスを利用します。
ただし、実際のサービス内容や職員体制は施設ごとに確認してください。
サ高住は法律上、一定の基準を満たして登録された高齢者向けの住宅です。
ただし、有料老人ホームに該当するサ高住や、特定施設入居者生活介護の指定を受けて介護付きホームとして運営されているサ高住もあります。
そのため、「サ高住」という名前だけで介護体制を判断せず、サービス内容を確認することが大切です。
決まった数はありません。
時間に余裕があれば2〜3施設程度を比較すると、それぞれの違いを感じやすくなります。
ただし、退院期限が迫っているなど緊急性が高い場合は、多くの施設を見学できないこともあります。
数よりも、本人・家族が重視する条件を決めて見学することをおすすめします。
まとめ|老人ホームは「種類」を選ぶのではなく「暮らし」を選ぶ
この記事は、介護業界18年/介護福祉士/ケアマネジャー/施設ケアマネ経験/老人ホーム入居相談員としての経験をもとに執筆・監修しています。
老人ホームにはさまざまな種類があります。
特別養護老人ホーム(特養)
→ 原則要介護3以上。長期的な介護・生活の場
介護老人保健施設(老健)
→ リハビリなどを行い在宅復帰・在宅療養を支援
介護付き有料老人ホーム
→ ホームの介護サービスを受けながら生活
住宅型有料老人ホーム
→ 必要な介護保険サービスなどを利用しながら生活
サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)
→ 安否確認・生活相談のある高齢者向け住宅
グループホーム
→ 認知症の方が少人数で共同生活
でも、ここまで読んだ方にはもう分かってもらえたと思います。
この6種類を暗記したからといって、良い老人ホームを選べるわけではありません。
私は介護現場で10年以上働き、施設ケアマネや老人ホーム入居相談員として、施設の中からも外からも老人ホームを見てきました。
そこで感じてきたのは、同じ種類の施設でも中身は本当に違うということです。
職員が忙しく走り回っている介護付きもある。
ホテルのようなサ高住もある。
介護量の多い方が大勢暮らしている特養もある。
「アットホーム」と説明されるグループホームにも、それぞれの日常があります。
そして、どんな施設にもそこで働く人がいて、そこで生活する人がいます。
だから私は、老人ホームを「特養」「住宅型」「サ高住」という名前だけで選んでほしくありません。
老人ホーム選びは「施設の種類」を選ぶことではなく、その人がこれから暮らす場所を選ぶことです。
本人に必要な介護が受けられるか。
費用を払い続けられるか。
必要な医療に対応できるか。
そして何より、
そこで本人らしく暮らせそうか。
最後はぜひ、自分の目で施設を見て考えてみてください。
老人ホーム入居相談員をしていた頃、「どの種類の施設が一番いいですか?」と聞かれることがありました。
でも、今でも私の答えは「一番いい種類はない」です。
高級だから幸せとも限らない。
特養だから安心とも限らない。
グループホームだから家庭的とも限らない。
逆に、古い施設でも職員と利用者が冗談を言い合って、本人が楽しそうに暮らしていることもあります。
100点満点の施設を探すより、「この人にとって何が大切なのか」を家族で決める。
それから施設を見てほしいと思います。
監修・執筆:よっしー
介護福祉士/介護支援専門員(ケアマネジャー)
介護業界18年。介護職として10年以上の現場経験を持ち、施設ケアマネジャーとして約5年勤務。老人ホーム入居相談員として施設探しにも携わる。
介護現場・施設ケアマネ・入居相談の経験をもとに、制度だけでは見えにくい「実際の介護現場」を家族目線で分かりやすく発信しています。




