介護認定調査で聞かれることは?家族が当日伝えること・注意点をケアマネが解説
認定調査の日。
普段は歩くとふらつくのに、その日に限って歩ける。
いつも薬を用意してもらっているのに、
「薬?自分でちゃんと飲んでますよ」
体調を聞かれれば、
「どこも悪くないです。元気です」
……いやいや、普段と全然違うじゃん。
家族なら、横で聞きながらそう思うこともあるでしょう。
私は施設ケアマネとして認定調査に何度も立ち会ってきましたが、調査の日になるとなぜか頑張れてしまう人は本当にいました。
もちろん、本人がわざと嘘をついているとは限りません。
知らない人が来たから頑張る。
「まだ自分でできる」と思っている。
人に迷惑をかけていると思われたくない。
たまたまその日の調子がいい。
理由はいろいろです。
ここは心配しすぎなくて大丈夫です。
認定調査は、その日の30分や1時間だけを切り取って「できる・できない」を決めるテストではありません。
厚生労働省の認定調査員テキストでは、実際に確認した状態と普段の状態が違う場合、能力などの項目については調査日より概ね過去1週間のうち、より頻回にみられる状態をもとに選択する考え方が示されています。
さらに、調査当日と普段の状態が違う場合、その具体的な違いや選択した根拠などを「特記事項」へ記載します。
だから家族がやるべきなのは、本人を「できない人」に見せることではありません。
「普段はどうなのか」を具体的に伝えること。
この記事では、施設ケアマネとして認定調査に立ち会ってきた経験を交えながら、実際に何を聞かれるのか、本人が頑張ってしまったらどうするのか、家族は何を伝えればいいのかを中心に解説します。
- 介護認定調査では実際に何を聞かれるのか
- 調査員は何を確認しているのか
- 本人が「できます」と答えたとき家族はどうすればいいのか
- 認定調査に家族は同席した方がいいのか
- 認知症や日によって変わる状態をどう伝えるのか
- 調査前に家族がメモしておきたいこと
- 施設で認定調査を受ける場合はどう進むのか
- 特記事項には何が書かれるのか
- 介護認定調査で聞かれることは?「74項目のテスト」ではない
- 実際にどんなことを聞かれる?「できます」だけでは終わらない
- 本人が「全部できます」と答えたら、家族は訂正していい?
- 調査の日だけ頑張っても、それだけで決まるわけではない
- 認定調査の前に「できないことリスト」は作らなくていい
- 認定調査に家族は同席した方がいい?できれば普段を知る人がいると伝わりやすい
- 認知症のことを本人の前で話しにくい|無理にその場で全部言わなくていい
- 認知症は「ある・ない」より、実際に何が起きているかを伝える
- 「見守っているだけ」も、何もしていないわけではない
- 施設での認定調査は家族がいなくても大丈夫?
- 「介護度を上げたいから大げさに言う」はおすすめしない
- 認定調査は「本人のできないところ探し」ではない
- 認定調査の「特記事項」って何?実はここがかなり大事
- 調査項目にないことでも「介護の手間」は伝えていい
- 認定調査の当日に家族が確認したい7つのこと
- 認定調査でやらなくていいこと
- 調査中に危ない動作を無理にやらせる必要はない
- 介護認定調査に関するよくある質問
- 認定調査が終わったら|その後の流れは「要介護認定」の記事へ
- まとめ|認定調査で一番伝えてほしいのは「普段の生活」
介護認定調査で聞かれることは?「74項目のテスト」ではない
認定調査では、市区町村の職員や委託された認定調査員などが本人のもとを訪れ、心身の状態や普段の生活、実際に行われている介助などを確認します。
認定調査の基本調査は74項目あります。
こう聞くと、
「74個も質問されるの?」
と思うかもしれません。
でも、74問の質問用紙を上から順番に答えるような試験ではありません。
厚生労働省の認定調査員テキストでは、基本調査の項目を大きく、
「能力」
「介助の方法」
「障害や現象(行動)の有無」
という異なる考え方で評価しています。
つまり、全部を同じように「できますか?できませんか?」で判断するわけではありません。
| 主な確認内容 | 具体例 |
|---|---|
| 身体機能・起居動作 | 寝返り、起き上がり、座位、立位、歩行など |
| 生活機能 | 移乗、移動、食事、排泄、着替えなど |
| 認知機能 | 意思の伝達、短期記憶、場所の理解など |
| 精神・行動面 | 普段みられる行動や、その頻度など |
| 社会生活への適応 | 服薬、金銭管理、買い物、簡単な調理など |
| 特別な医療 | 過去14日間に一定の医療が行われているか |
ここを知っておくだけでも、認定調査の見え方はかなり変わります。
歩ける=介護が必要ない。
車いす=介護度が高い。
そんな単純な調査ではありません。
参考:厚生労働省|要介護認定
参考:厚生労働省|認定調査員テキスト2009改訂版(令和6年4月改訂)
実際にどんなことを聞かれる?「できます」だけでは終わらない
認定調査では、本人への質問だけでなく、実際に動作を確認する項目もあります。
たとえば、
「立ってみてください」
「少し歩いてみましょう」
といった形で確認することがあります。
一方で、排泄や入浴、服薬、金銭管理など、その場で実際に全部やってもらうわけにはいかない項目もあります。
そうした部分は、本人や介護者から普段の様子を聞き取りながら確認します。
ここで、認定調査を受ける家族に一番知っておいてほしいことがあります。
「できること」と「普段一人でやっていること」は、同じではありません。
「歩けました」と「普段安全に歩けています」は違う
施設ケアマネをしていた頃、歩行や立位などの確認を本人の居室で行う場面を何度も見てきました。
そこで、よく思っていたことがあります。
「そりゃ、この距離なら歩けることもあるよな」
施設の居室なんて、歩ける距離は限られています。
しかも本人にとっては、毎日暮らしている住み慣れた場所です。
普段は廊下を歩くとふらつく人でも、居室の数メートルなら歩けることがあります。
調査員が来ているから、いつも以上に頑張ることだってあります。
でも、
居室の数メートルをその日に歩けた。
という事実と、
普段の生活で安全に一人で歩けている。
ということは同じではありません。
厚生労働省の認定調査員テキストでも、実際に確認した状況と日頃の状況が違う場合、能力で評価する項目については概ね過去1週間で、より頻回にみられる状態をもとに選択する考え方が示されています。
そして、その違いは特記事項へ具体的に記載します。
本人が「全部できます」と答えたら、家族は訂正していい?
家族が一番困るのは、ここかもしれません。
調査員から、
「薬はご自分で飲んでいますか?」
と聞かれる。
本人は即答。
「はい。全部自分でやっています」
でも実際は、毎日家族が薬を準備している。
こんなとき、横から口を出していいのか迷いますよね。
その気持ちはよく分かります。
でも、普段の状況と違うなら、その事実は調査員へ伝えて大丈夫です。
ただし、
「お父さん、嘘言わないで!」
と本人をその場で追い詰める必要はありません。
たとえば、
「薬は本人も飲めますが、飲み忘れがあるので毎朝私が用意して確認しています」
「家の中は歩けますが、外ではふらつくので必ず付き添っています」
こんなふうに、本人ができる部分を否定せず、実際に家族がしていることを足すと伝わりやすくなります。
これが大事です。
本人の「できます」を潰すのではなく、その後ろに隠れている介助や見守りを伝える。
認定調査で家族がするべきなのは、本人のできないところ探しではありません。
普段、誰が何をしているのかを伝えることです。
調査の日だけ頑張っても、それだけで決まるわけではない
ここまで読んでも、
「でも今日できちゃったら、できるって判定されるんじゃないの?」
と思う人もいるでしょう。
認定調査員テキストでは、能力で評価する項目について、実際に行った結果と日頃の状態が違う場合には、概ね過去1週間でより頻回にみられる状態をもとに選択します。
時間帯や体調によって介助方法が違う場合も、一定期間の中でより頻回にみられる状況などを確認し、必要な内容を特記事項へ記載します。
つまり、
「今日だけ歩けたから、普段も全部歩ける」
とは限りません。
反対に、調査の日だけ体調が悪かった場合も同じです。
重要なのは、普段どうなのか。
だから家族も、
「いつもできません」
だけではなく、
「この1週間では5日くらい付き添っています」
「朝は一人でできますが、夜は毎日介助しています」
「週に3回ほど同じことが起きます」
というように、頻度まで伝えられるとより具体的です。
認定調査の前に「できないことリスト」は作らなくていい
認定調査の前になると、
「介護度が軽く出たら困る」
という気持ちになる家族もいると思います。
施設入居や介護サービスの利用がかかっていれば、なおさらです。
でも、本人を必要以上に悪く見せる必要はありません。
逆に、良く見せる必要もありません。
おすすめしたいのは、「できないことリスト」ではなく「普段やっていることリスト」です。
| 確認すること | メモの例 |
|---|---|
| 移動 | 夜だけトイレまで付き添っている |
| 排泄 | ズボンの上げ下げだけ毎回介助している |
| 服薬 | 朝夕、家族が薬を準備して飲んだか確認している |
| 入浴 | 背中と足を洗うところだけ手伝っている |
| 認知面 | 同じ質問を1日に何度もするため、そのたびに説明している |
| 夜間 | 週3回ほど起きてくるため、寝室まで付き添っている |
この方が、実際の生活が見えます。
家族にとっては毎日やっているから、もう介護だと思っていないこともあります。
薬を出す。
声をかける。
転ばないように後ろを歩く。
同じ説明を何度もする。
着替えを準備する。
夜中にトイレまでついていく。
毎日やっていると「これくらい普通」と思ってしまうんですよね。
でも、その「普通」を家族がやめたら、本人の生活が成り立たないかもしれません。
認定調査で伝えたいのは、本人を悪く見せる材料ではなく、普段の生活を支えている手間です。
18年の現場裏話:調査員が来る前の『手紙(メモ)』が勝負を分ける
認定調査でおおよそ8割以上の高齢者様がやってしまうのが「調査員の前での覚醒(無理して元気ぶること)」です。日頃は一人で起き上がれないのに、調査員の前だけ「できますよ!」と立ち上がってしまう場面を、私は現場で何百回も見てきました。
調査員も人間なので、その場で見せた姿をベースに評価せざるを得ません。
これを防ぐ最強の対策は、調査当日の玄関で、家族から調査員に『日頃の失敗談や困りごとを書いたメモ』をこっそり手渡すことです。
- 「昨日はトイレに間に合わず〇回失敗した」
- 「本当は物忘れが激しいが、本人は絶対認めない」
こうした「本人の前では言えないリアルな介護の手間」をメモで事前に渡しておくだけで、調査員の聞き取りの深さが劇的に変わり、実情に合った正しい判定が出やすくなります。
認定調査に家族は同席した方がいい?できれば普段を知る人がいると伝わりやすい
認定調査の日に、家族が必ず同席しなければならないわけではありません。
ただ、在宅で家族が普段から介護しているなら、私はできるだけ日頃の様子を知っている人がいた方がいいと思っています。
理由は単純です。
本人だけでは伝わらないことがあるから。
たとえば、
調査員から、
「夜は眠れていますか?」
と聞かれて、本人は、
「朝までぐっすりですよ」
と答える。
でも家族からすると、
「いや、昨日も夜中に3回起きて、そのたびに私が対応したけど……」
ということがあります。
薬についてもそう。
お金の管理もそう。
着替えもそう。
トイレもそう。
本人にとっては、家族が少し手を出してくれる生活が当たり前になっていて、「手伝ってもらっている」という感覚そのものが薄くなっていることがあります。
認知症があれば、そもそも介助されていることを覚えていない場合もあります。
だから、本人の話を否定するためではなく、本人からは見えにくい日常を補足する人がいると、普段の生活が伝わりやすくなります。
参考:厚生労働省|認定調査員テキスト2009改訂版(令和6年4月改訂)
同席するなら「全部代わりに答える人」にはならない
ただし、家族が同席するときに一つ注意したいことがあります。
調査員が本人に質問するたびに、
「それはできません」
「昨日も忘れてたでしょ」
「この人、何にも分かってないんです」
と家族が先に答えてしまうことです。
これでは、本人がどこまで理解しているのか、どんな受け答えをするのかを確認しにくくなります。
何より、本人だって嫌ですよね。
自分の目の前で家族から、できないことを次々に並べられる。
認知症があったとしても、傷つかないわけではありません。
まず本人に答えてもらう。普段と違うところだけ家族が補足する。
このくらいの距離感でいいと思います。
全部その場で訂正しなくても大丈夫です。
本人の前で言っても問題ない内容なら、
「一人でできる日もありますが、最近は私が手伝う日の方が多いです」
くらいに補足する。
本人の前では話しにくい内容なら、無理にそこで言わなくても、調査員に別で伝えられないか相談する方法があります。
認知症のことを本人の前で話しにくい|無理にその場で全部言わなくていい
認定調査で家族が困りやすいのが、認知症に関する話です。
たとえば、
同じことを何度も聞く。
夜中に起きて家の中を歩く。
財布を盗られたと言う。
薬を飲んだことを忘れて、また飲もうとする。
外へ出て戻れなくなったことがある。
こうしたことは認定調査で伝えておきたい情報ですが、本人の目の前では言いづらいですよね。
本人は、
「そんなことしてない!」
と怒るかもしれません。
家族としても、本人のプライドを傷つけたくない。
これは当然だと思います。
そんなときは、調査員に、
「本人の前では話しにくいことがあるのですが、あとで少しお時間いただけますか?」
と伝えてみてください。
事前にメモを用意して、渡せるか確認する方法もあります。
認知症は「ある・ない」より、実際に何が起きているかを伝える
認定調査には、認知機能だけでなく精神・行動面について確認する項目があります。
ここで注意したいのは、
「認知症という診断があります」
だけで介護の手間まで伝わるわけではないことです。
同じ認知症でも、生活の状態は人によってまったく違います。
物忘れはあるけれど、一人で落ち着いて生活できる人もいます。
反対に、身体は元気でも、何度も外へ出ようとして家族が一日中気を配っている人もいます。
だから伝えるなら、
「認知症があります」
ではなく、
「夕方になると週3~4回ほど外へ出ようとするので、そのたびに家族が声をかけて一緒に戻っています」
ここまで。
これなら、生活の様子が見えます。
| 伝わりにくい言い方 | 伝わりやすい言い方 |
|---|---|
| 物忘れがひどい | 同じ質問を1時間に3~4回繰り返し、そのたびに家族が説明している |
| 夜寝ない | 週3日ほど午前2時ごろに起き、家族が30分ほど付き添っている |
| 一人で外に出てしまう | この1か月で2回一人で外へ出たため、玄関に気を配り家族が連れ戻した |
| 薬が管理できない | 飲み忘れや重複服薬があるため、家族が毎日1回分ずつ準備して手渡している |
| 怒りっぽい | 入浴を勧めると週2~3回強く拒否し、時間を置いて家族が何度か声をかけている |
厚生労働省の認定調査員テキストでも、精神・行動面については行動の有無だけでなく、介護者が実際にどのような対応をしているのか、その頻度などを特記事項に記載することが重要とされています。
つまり、
困った行動の名前より、その後ろで誰がどれだけ動いているか。
ここが大切です。
参考:厚生労働省|認定調査員テキスト「第4群 精神・行動障害」
「見守っているだけ」も、何もしていないわけではない
介護をしている家族と話していると、
「介助ってほどじゃないんですけど……」
という言葉をよく聞きます。
でも話を聞いてみると、
転ばないように後ろをついて歩いている。
火を消したか毎回確認している。
薬を飲んだか声をかけている。
外へ出ないように気を配っている。
入浴するまで何度も声をかけている。
本人が混乱したら落ち着くまで話をしている。
かなりやっています。
ただ、家族にとっては毎日のことなので、介護として数えていないんですよね。
ここは認定調査で抜けやすいところです。
身体を抱えたり、おむつを交換したりすることだけが介護ではありません。
声かけ、確認、見守り、付き添い、やり直し。
こうした手間が普段どのくらい発生しているのかも、具体的に伝えてください。
施設での認定調査は家族がいなくても大丈夫?
老人ホームなどの施設に入居している場合、在宅とは少し様子が違います。
私が施設ケアマネとして対応していた認定調査では、家族が同席するケースはほとんどありませんでした。
本人。
認定調査員。
そして私のような施設ケアマネや、本人の普段の様子を知っている職員。
この形で進むことが多かったです。
まず本人への聞き取りや動作確認を行う。
そして、それが終わったあと。
調査員から、
「普段はどうですか?」
と聞かれ、こちらから日頃の状態を補足する。
このやり取りはかなり重要でした。
なぜなら施設でも、本人は普通に頑張るからです(笑)。
普段は職員が手を貸しているのに、
「全部自分でやっています」
と言う。
普段は歩行が不安定なのに、その日に限って歩ける。
夜間に何度も起きているのに、
「朝までよく寝ています」
と答える。
本人の話だけ聞いたら、職員が普段見ている姿とまったく違う。
そんなこともありました。
だから本人への調査が終わったあとに、
「実際には夜間3回ほど起きています」
「居室内は歩けますが、廊下は転倒リスクがあるため職員が付き添っています」
「服薬は職員が管理して、毎回手渡しています」
というように、普段の状況を具体的に説明していました。
調査員も「なんとなく違うな」と感じていることはある
施設で何度も認定調査に立ち会っていると、調査員から、
「ご本人はこうおっしゃっていますけど、実際どうですか?」
と聞かれることがありました。
本人の受け答えと、生活状況がどうも噛み合わない。
調査員もそこを確認しているんですよね。
たとえば、
「何でも自分でできます」
と言っているのに、移動は車いす。
薬の名前も飲む時間も分からない。
話をしていると、同じ内容が何度も出てくる。
そうなれば、本人の一言だけですべてを判断するわけにはいきません。
だから施設側も、
「本人の言っていることは違います」
で終わらせるのではなく、
普段どんな介助をしているのか。
どのくらいの頻度なのか。
介助しないと何が起きるのか。
を説明します。
ここは在宅でも同じです。
本人の答えと戦うのではなく、普段の生活を横に並べる。
その方が、ずっと実態が伝わります。
「介護度を上げたいから大げさに言う」はおすすめしない
ここは少し踏み込んで書きます。
家族からすると、介護度はどうでもいい数字ではありません。
利用できる介護保険サービスや支給限度額にも関係します。
施設への入居条件が関係してくる場合もあります。
だから、
「できれば要介護が出てほしい」
「非該当だったら困る」
と思うこと自体は、不自然ではありません。
私自身、家族側の立場になって、「この結果では困るな」と思った経験があります。
でも、だからといって、
できることを「できない」と言う。
起きていないことを「起きている」と言う。
本人を必要以上に悪く見せる。
これは違います。
逆も同じです。
本人が頑張っているからといって、家族が普段している介護を黙ってしまう必要もありません。
必要なのは、介護度を上げるための話し方ではなく、
「普段の生活を、調査の日にも再現できるように伝えること」
です。
認定調査は「本人のできないところ探し」ではない
認定調査が近づくと、どうしても、
「何ができないかを言わなきゃ」
という気持ちになりやすいです。
でも、私は少し違うと思っています。
見るべきなのは、
本人がどうやって今の生活を成り立たせているか。
です。
一人で歩いている。
でも家族が転ばないよう後ろから見ている。
自分で薬を飲んでいる。
でも家族が毎朝薬を並べている。
一人で着替えている。
でも家族がその日の服を準備している。
一人で暮らしている。
でも娘が毎日電話して、週3回家へ行っている。
表面だけ見れば、
「できている」
です。
でも、その後ろには誰かの手がある。
認定調査で伝えてほしいのは、その「見えない手」です。
家族にとって当たり前になっていることほど、調査の日には抜けやすい。
だからこそ、調査前に一度だけ、
「自分は普段、この人のために何をしているだろう?」
と考えてみてください。
それが、認定調査で一番役に立つ準備だと思います。
認定調査の「特記事項」って何?実はここがかなり大事
認定調査について調べていると、「特記事項」という言葉が出てきます。
なんとなく、
「調査員が気になったことを書く備考欄かな?」
くらいに思うかもしれません。
でも、そんな軽いものではありません。
厚生労働省の認定調査員テキストでは、特記事項は介護認定審査会で、
「基本調査の選択根拠を確認する」
そして、
「実際にどのくらい介護の手間がかかっているのかを見る」
ために活用されるとされています。
しかも国は、特記事項を書くときに、
①選択根拠
②介護の手間
③頻度
の3点を意識するよう示しています。
これ、家族が認定調査で話すときにも、そのまま使えます。
| ポイント | 家族が伝える内容 |
|---|---|
| 選択根拠 | 実際にどんな状態なのか |
| 介護の手間 | 家族や職員が何をしているのか |
| 頻度 | 1日・1週間・1か月にどのくらい起きるのか |
たとえば、
「夜になると大変です」
だけでは、生活の様子がよく分かりません。
でも、
「週4日くらい夜中に2~3回起きてトイレへ行こうとするので、そのたびに転ばないよう家族が付き添っています」
なら、かなり具体的になります。
何が起きているのか。
誰が何をしているのか。
それがどのくらいあるのか。
認定調査では「大変なんです」より、「何を・どのくらいやっているか」の方が伝わります。
「たまに」「よくある」より回数で伝える
もう一つ、かなり大事なのが頻度です。
家族はつい、
「最近よくあります」
「たまに夜起きます」
「しょっちゅう同じことを聞きます」
と言ってしまいます。
気持ちは分かります。
毎日の介護で、いちいち回数なんて数えていませんからね。
ただ、
「よく」って何回?
という話になります。
週1回なのか。
毎日なのか。
1日10回なのか。
これでは介護の手間がまったく違います。
厚生労働省の手引きでも、「ときどき」「頻繁に」のような人によって受け取り方が変わる表現ではなく、週2~3回など具体的な頻度を記載する考え方が示されています。
だから完璧に数えていなくても、
「だいたい週3回くらいです」
「ほぼ毎晩です」
「この1か月で2回ありました」
くらいまで思い出しておくと、かなり伝えやすくなります。
調査項目にないことでも「介護の手間」は伝えていい
家族が、
「こんなことまで話していいのかな?」
と迷うこともあると思います。
たとえば、認定調査の質問にピッタリ当てはまるものが見つからない。
でも、家では明らかに手がかかっている。
そんなこともあります。
厚生労働省の手引きでは、基本調査の選択基準に含まれていない内容でも、介護の手間に関係する内容であれば特記事項に記載できるとされています。
だから、
「質問されなかったから言わなくていいか」
と自己判断で切り捨てなくて大丈夫です。
日常生活で実際に困っていて、家族が対応していることなら、調査員へ伝えてみてください。
認定調査の当日に家族が確認したい7つのこと
ここまで読むと、
「結局、当日は何を準備しておけばいい?」
と思いますよね。
難しく考えなくて大丈夫です。
最低限、次の7つを思い出しておけば十分です。
| 確認すること | 具体的に思い出しておくこと |
|---|---|
| ①歩行・移動 | 一人で安全に移動できるか、付き添いや見守りをしているか |
| ②トイレ | 一連の動作のどこを手伝っているか、夜間はどうしているか |
| ③入浴・着替え | 声かけだけか、一部を手伝うのか、全部介助するのか |
| ④服薬 | 本人だけで管理できるか、家族が準備・確認しているか |
| ⑤認知症の症状 | どんなことが、どのくらいの頻度で起きているか |
| ⑥夜間の様子 | 起きる回数、トイレ、見守り、付き添いなどがあるか |
| ⑦家族がしていること | 声かけ、確認、付き添い、準備、見守りなど普段の介護 |
これを紙にびっしり書く必要はありません。
スマホのメモでもいい。
紙切れでもいい。
「夜トイレ3回・付き添い」
「薬は朝夕こちらでセット」
「同じ質問1日10回くらい」
このくらいで十分です。
調査が始まると、意外と忘れます。
そして終わってから、
「あっ!あれ言うの忘れた!」
となります。
だからメモしておく。
それだけでも違います。
認定調査でやらなくていいこと
反対に、やらなくていいこともあります。
認定調査が近づくと、
「介護度を軽くされたら困る」
という気持ちから、いろいろ考えてしまうかもしれません。
でも、次のような準備は必要ありません。
| やらなくていいこと | 理由 |
|---|---|
| 本人に「できないと言って」と頼む | 普段の状態を正確に伝えることが大切 |
| できることまで「できない」と伝える | 介護度を上げるための調査ではない |
| 本人の前でできないことを責める | 本人の尊厳を傷つける必要はない |
| 74項目を全部暗記する | 項目を判断するのは認定調査員 |
| 調査員に「要介護○にしてください」と頼む | 調査員一人が希望する介護度を決める仕組みではない |
特に、
「要介護3にしてください」
のように希望する介護度を伝えれば、その通りになるわけではありません。
家族が考えるべきなのは、
「どうしたら高い介護度が出るか」
ではなく、
「普段の生活をどうしたら正確に伝えられるか」
です。
認定調査に攻略法はいりません。必要なのは、普段の生活の説明です。
調査中に危ない動作を無理にやらせる必要はない
もう一つ覚えておいてほしいことがあります。
歩行や立ち上がりなどを確認するとき、
「調査なんだから、何が何でもやらなきゃ」
と思わなくて大丈夫です。
厚生労働省の手引きでも、本人に実際の動作を行ってもらう場合は安全に配慮し、危険が伴うと考えられる場合は決して無理に試みないこととされています。
普段から一人で立つと転倒する。
今日は体調が悪い。
痛みが強い。
そんな場合には、そのことを調査員へ伝えてください。
実際に動作を確認できなかった場合も、その理由や普段の状況を聞き取り、特記事項へ記載する仕組みがあります。
介護認定調査に関するよくある質問
必ず家族が同席しなければならないわけではありません。
ただし、在宅で家族が普段から介護している場合は、本人だけでは伝わりにくい日頃の状態や実際の介護を補足できるメリットがあります。
同席が難しい場合は、市区町村や調査担当者へ、普段の状況をどのように伝えればよいか事前に相談してみてください。
調査当日の状態だけですべてを判断するわけではありません。
能力などの項目では、調査当日と普段の状態が異なる場合、概ね過去1週間のうち、より頻回にみられる状態をもとに選択する考え方が厚生労働省の手引きで示されています。
家族は、
「今日はできていますが、普段は週5日くらい付き添っています」
など、日頃の状態を具体的に伝えましょう。
無理に本人の前ですべて話す必要はありません。
「本人の前では話しにくいことがあるので、別でお話しできますか?」
と調査員へ相談してみましょう。
伝えるときは「認知症がひどい」だけではなく、何が起きているのか、頻度、そのとき家族がどう対応しているのかまで具体的に説明すると伝わりやすくなります。
基本調査は74項目ありますが、74問の質問を順番に読み上げる試験のようなものではありません。
本人への質問、実際の動作確認、家族や介護者からの聞き取りなどを組み合わせて確認します。
家族が74項目を覚える必要はありません。
「何が起きるか」「どのくらいの頻度か」「そのとき家族が何をしているか」を中心にメモしておくと伝えやすくなります。
特に、夜間の対応、排泄、入浴、服薬、移動、認知症による行動、見守りや声かけなど、普段家族がしていることを思い出しておきましょう。
施設では、本人の普段の状態を把握しているケアマネジャーや職員などから情報を確認しながら調査することがあります。
私が施設ケアマネとして対応していたケースでも、家族が立ち会わず、本人・調査員・施設側で進めることが多くありました。
施設によって対応方法は異なるため、心配な場合は事前に施設へ確認してください。
希望を話すこと自体よりも、なぜそのように考えているのか、現在どんな介護が必要なのかを具体的に伝えることが大切です。
認定調査員一人が希望する介護度を決める仕組みではありません。
要介護認定の判定方法については、要介護認定の記事で詳しく解説しています。
認定調査が終わったら|その後の流れは「要介護認定」の記事へ
認定調査が終わると、主治医意見書や一次判定、介護認定審査会による二次判定などを経て、要介護・要支援などの認定結果が決まります。
ただし、ここから先を詳しく説明すると、この記事は「要介護認定とは?」の記事と同じ内容になってしまいます。
この記事で覚えておいてほしいのは、認定調査が終わった時点で介護度が決定するわけではない、というところまでで十分です。
申請から認定結果までの流れ、一次判定・二次判定、認定結果が出たあとの対応、区分変更などについてはこちらで詳しく解説しています。
まとめ|認定調査で一番伝えてほしいのは「普段の生活」
この記事は、介護業界18年/介護福祉士/介護支援専門員(ケアマネジャー)としての経験をもとに、厚生労働省の認定調査員テキストなど公的資料を確認しながら執筆・監修しています。
- 認定調査は「できる・できない」の試験ではない
- 調査の日だけ本人が頑張ってしまうことは珍しくない
- 当日と普段の状態が違う場合は、日頃の状況も確認される
- 本人の「できます」を家族が無理に否定する必要はない
- 普段誰が何を手伝っているのかを具体的に伝える
- 認知症は症状名だけでなく、介護の手間と頻度を伝える
- 特記事項では「選択根拠・手間・頻度」が重要
- 調査前に「何が・何回・どう対応」をメモしておく
- 介護度を上げるために大げさに伝える必要はない
認定調査の日って、不思議なんです。
普段できないことが、その日に限ってできる。
普段は職員や家族に手伝ってもらっているのに、
「自分でやっています」
と答える。
家族からすれば、
「お願いだから今日だけ頑張らないで……」
と思うかもしれません。
でも、本人をわざとできないように見せる必要はありません。
逆に、本人が頑張ったからといって、家族が普段していることを黙る必要もありません。
今日歩けた。
それはそれで事実。
普段は付き添っている。
それも事実です。
どちらかを消すのではなく、両方を伝える。
それが認定調査では大切だと思います。
施設ケアマネとして認定調査に立ち会っていると、
「今日はやけに元気だな(笑)」
と思うことが本当にありました。
普段は歩くのがおぼつかないのに歩ける。
夜は何度も起きているのに、
「朝までよく寝ています」
と答える。
職員に薬を管理してもらっているのに、
「自分でやっています」
と言う。
でも私は、これを「本人が嘘をついている」とはあまり思っていませんでした。
本人なりに、
「まだ自分はできる」
と思っているのかもしれない。
知らない調査員が来たから、ちょっと頑張ったのかもしれない。
人間ですから、そういうこともあると思います。
だから認定調査では、本人の言葉を否定することより、
その人が普段どうやって暮らしているのかを補足すること
の方が大事です。
家族が毎日やっている声かけ。
薬の準備。
夜中の付き添い。
転ばないように見ていること。
何度も同じ説明をしていること。
毎日やっていると、それが介護だという感覚すらなくなってきます。
でも、その手を全部外したら生活が成り立たないのであれば、
それもその人の「普段の生活」の一部です。
認定調査の日は、本人のできないところを探さなくて大丈夫。
いつもの生活を、そのまま調査員に見せる。
私はそれでいいと思います。
【監修・執筆】よっしー
介護福祉士/介護支援専門員(ケアマネジャー)
介護業界18年。介護職として10年以上の現場経験を持ち、施設ケアマネジャーとして約5年勤務。老人ホーム入居相談員として、本人・家族の施設探しや入居相談にも携わる。
介護現場・ケアマネ業務・老人ホーム相談の実務経験をもとに、制度だけでは見えにくい介護のリアルを、本人や家族の目線に立って分かりやすく発信しています。

