老人ホームで看取りはできる?最期まで暮らせる施設の選び方
老人ホームを探しているご家族から、
「ここに入居したら、最期までいられますか?」
と聞かれることがあります。
私も老人ホームの入居相談員をしていた頃、施設探しの相談で何度も聞かれました。
そして施設ケアマネとして働いてからは、実際にその「最期まで」を支える側にもなりました。
結論からいうと、老人ホームでも看取りに対応している施設はあります。
ただし、すべての老人ホームで看取りができるわけではありません。
さらに難しいのが、同じ「看取り対応」という言葉を使っていても、医師との連携、看護師の配置、夜間の対応、家族の付き添いなどは施設によって違うことです。
だから老人ホームを選ぶときは、
「看取りできますか?」
だけで終わらせないでほしい。
この記事では、老人ホームでの看取りの基本だけでなく、家族との話し合い、食事が摂れなくなってきたときのこと、夜間の看取り、亡くなったあとの対応など、私が実際に経験してきたことも交えながらお伝えします。
- 老人ホームでも看取りはできるのか
- 看取り対応の施設とそうでない施設の違い
- 看取り期になると施設では何をするのか
- 家族はどんなことを決めておく必要があるのか
- 夜間や亡くなったあとの施設の対応
- 看取りまで考えた老人ホームの選び方
- 老人ホームでも看取りはできる。でも「どこでも」ではない
- そもそも「看取り」って何をするの?
- 看取り期になると、家族を呼んで話し合っていた
- 食事が摂れなくなってくると、家族も不安になる
- 看取りが近づくと、葬儀社のことも家族に話していた
- 看取りの方がいる夜勤は、正直気が気じゃなかった
- 看取りだから「何があっても救急搬送しない」ではない
- 家族が居室で付き添っていたこともある
- 「息を引き取ったかな」と思ってからも、やることがある
- 日中なら、看護師がエンゼルケアをしていた
- だから葬儀社は、できれば事前に決めておいてほしい
- 「看取り対応」の一言だけでは、施設の中身までは分からない
- 看取りまで考えるなら「実際にどこまで対応したことがあるか」を聞いてみる
- 医師・看護師・介護職がどうつながっているかも大事
- 「最期までいられますか?」は遠慮せず聞いていい
- 看取り対応だけで「良い老人ホーム」とは決められない
- 途中で病院へ入院することもある
- 老人ホームでの看取りについてよくある質問
- まとめ|看取りは「亡くなる瞬間」だけの話ではない
老人ホームでも看取りはできる。でも「どこでも」ではない
老人ホームの中には、病院へ移るのではなく、本人が暮らしてきた居室で最期まで過ごせるよう看取りを行っている施設があります。
ただ、
「老人ホームに入居した=最期まで必ずそこで暮らせる」
ではありません。
施設によって医療・介護体制が違います。
本人の状態によっては、施設での対応が難しくなり、入院など別の対応が必要になることもあります。
だからこそ、入居するときに確認してほしいのは、
「看取りをやっていますか?」
という○×だけではありません。
- どのような状態まで施設で対応できるのか
- 主治医とはどのように連携するのか
- 看護師がいない時間帯はどう対応するのか
- 夜間に状態が変化したらどうするのか
- 家族は付き添うことができるのか
ここまで聞いて、初めてその施設の「看取り」が少し見えてきます。
同じ有料老人ホームでも対応は違います。
特養だから必ず看取りまで対応できる、とも一概には言えません。
施設の種類だけで決めず、その施設が実際にどう対応しているのかを確認する。
これはかなり大事です。
→「老人ホームの種類と違いを徹底解説|6種類の特徴・費用・選び方を比較」
そもそも「看取り」って何をするの?
看取りという言葉だけを聞くと、
「治療をやめて、亡くなるのを待つこと」
のように感じる方もいるかもしれません。
でも、私が施設で経験してきた看取りは、そんな単純なものではありませんでした。
本人の状態を見ながら医師や看護師と連携する。
介護職が日々の変化を確認する。
家族と話をする。
ケアの方針を職員で共有する。
本人ができるだけ苦痛なく過ごせるようにする。
最期まで、その人の生活を支える。
私は、看取りをそんなふうに捉えています。
厚生労働省の「人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドライン」でも、本人の意思決定を基本として、医療・ケアチームと十分に話し合いながら方針を決めていくことが重視されています。
そして、本人の意思はずっと同じとは限りません。
身体の状態が変われば、本人や家族の気持ちが変わることもあります。
一度決めたら終わりではなく、その都度確認しながら進めていく。
施設での看取りでも、この「話し合うこと」はとても大切でした。
看取り期になると、家族を呼んで話し合っていた
私が施設ケアマネをしていた頃、本人の状態が変化して看取り期に入ると、ご家族に来てもらい、主治医や看護師などと一緒に今後について話し合っていました。
主治医から現在の状態や、これから起こり得る変化について説明してもらう。
そのうえで、本人や家族がこれからの時間をどう過ごしたいのか、施設としてどのように支えていくのかを一緒に考えていきます。
話す内容は、
「看取りを希望しますか?」
そんな一言で終わるものではありません。
今はどんな状態なのか。
これから食事や水分が摂れなくなっていく可能性はあるのか。
急に状態が変わったときはどうするのか。
救急搬送についてはどう考えるのか。
家族はできるだけそばにいたいのか。
一つずつ話しながら、本人にとってどうするのがいいのかを考えていく時間でした。
ただ、家族にとっては簡単に答えを出せる話ではありません。
大切な人が最期に近づいている。
頭では分かっていても、気持ちが追いつかないこともあります。
「できれば病院には行かず、ここで穏やかに過ごしてほしい」
そう思っていても、実際に食事が摂れなくなったり、呼びかけへの反応が少なくなったりすれば、不安になるのは当然です。
だから、一度話し合ったからといって、
「これで全部決まりです」
というものでもありませんでした。
本人の状態が変われば、また話す。
家族の気持ちが変われば、もう一度確認する。
医師や看護師とも状況を共有する。
看取りは、最初に決めたことをそのまま最後まで押し通すのではなく、その時々の本人の状態や意向を大切にしながら、家族や医療・介護職が話し合いを重ねていくもの。
施設ケアマネとして看取りに関わる中で、私はそこをとても大切にしていました。
そして、こうした考え方は施設だけのものではありません。
人生の最終段階における医療・ケアについても、本人の意思を基本にしながら、家族等や医療・ケアチームで繰り返し話し合っていくことが大切とされています。
元気なうちは、
「まだそんな話をしなくてもいいよ」
と思うかもしれません。
でも、いざというときには本人が自分の希望を伝えられないこともあります。
どこで過ごしたいのか。どんな最期を望んでいるのか。
答えを決めておく必要まではなくても、元気なうちに家族で少し話しておく。
それだけでも、いざというときに家族が本人の気持ちを考える手がかりになると思います。
食事が摂れなくなってくると、家族も不安になる
看取り期が近づいてくると、それまで普通に食べていた方が、少しずつ食事を摂れなくなることがあります。
施設で関わった方の中にも、食事がほとんど摂れなくなり、居室で過ごしながら、飲める範囲で水分を口にしていた方がいました。
こういう姿を見ると、家族はやっぱり心配します。
「何か食べさせた方がいいんじゃないですか?」
そう思うのは当然だと思います。
昨日まで食べていた人が食べなくなる。
好きだったものにも手を伸ばさなくなる。
家族からすれば、
「このままでいいの?」
と思いますよね。
でも、看取り期のケアで大切なのは、何が何でも食べてもらうことではありません。
本人の状態を医師や看護師などと確認しながら、苦痛や負担にも配慮して、そのときにできるケアを考えていきます。
介護職も、
「今日は水分をどのくらい摂れた」
「昨日より反応が少ない」
「呼びかけにはまだ反応がある」
そんな小さな変化を見ています。
看取りという大きな言葉を使っていますが、現場でやっていることは、こうした日々の小さな確認の積み重ねでもありました。
看取りのケアプランも作っていた
施設ケアマネとして、看取り期のケアプランを作成したこともあります。
これは今でも覚えています。
看取りになったからといって、
「あとは医師と看護師に任せる」
ではありません。
介護職にもできることがあります。
本人がどんなふうに過ごすのか。
どんなことに気をつけてケアするのか。
家族との時間をどう支えるのか。
職員みんなが同じ方向を向けるよう、ケアプランにも反映していました。
看取りの方の居室に入るのは、医師や看護師だけではありません。
食事や水分を持っていく人。
排泄や清潔を支える人。
夜中に様子を見に行く人。
いつものように声をかける人。
結局、最期まで日常を支えているのは、いろいろな職種の人たちです。
私はそこに、老人ホームで看取りをする意味の一つがあると思っています。
看取りが近づくと、葬儀社のことも家族に話していた
ここは少し現実的な話をします。
看取り期になったご家族には、葬儀社についても事前に考えておいてもらうよう話していました。
まだ本人が生きているうちに、亡くなったあとの話をする。
決して話しやすいことではありません。
できれば触れたくないという家族もいると思います。
でも、そのときはいつ来るか分かりません。
特に夜間だったら、家族も動揺しています。
その状態になってから、
「葬儀社はどうしますか?」
「どこに連絡しますか?」
と一から考えるのは大変です。
だから、
「いざというとき、どこへ連絡するかだけでも決めておいてくださいね」
とお伝えしていました。
これは亡くなることを急ぐための準備ではありません。
むしろ逆です。
そのときが来たとき、家族が慌てて手続きに追われるのではなく、できるだけ本人との時間を持てるようにする。
看取りの準備には、亡くなるまでのケアだけでなく、亡くなったあとのことも含まれていました。
そして実際に看取りをしていると、昼と夜でも施設の中の様子はかなり違います。
特に夜。
看取りの方がいる日の夜勤は、普段の夜勤とは少し空気が違いました。
「今夜かもしれない」
そう思いながら巡視する夜もあります。
看取り対応の老人ホームを選ぶなら、私はこの「夜をどう支えている施設なのか」も知っておいてほしいと思っています。
看取りの方がいる夜勤は、正直気が気じゃなかった
看取り対応の老人ホームについて調べると、
「24時間安心」
「最期まで穏やかに過ごせます」
といった言葉を目にすることがあります。
もちろん、施設側もできるだけ穏やかに過ごしてもらえるように支えます。
でも、そこで働く職員まで、いつも穏やかな気持ちでいられるかというと――
そんなことはありませんでした。
介護職として夜勤をしていた頃、看取り期の方がいる夜はやっぱり気になります。
私が経験した現場では、看取りの方について1時間ごとに居室へ行き、状態を確認していました。
居室へ入る。
呼吸を確認する。
表情を見る。
いつもと変わった様子がないか確認する。
そして、また1時間後に見に行く。
特に、
「そろそろかもしれない」
という状態の方がいる夜は、普段の夜勤とは緊張感が違いました。
ほかの入居者さんの排泄介助もあります。
ナースコールも鳴ります。
認知症の方が起きてくることもあります。
それらに対応しながらも、
「あの方、大丈夫かな」
と気になる。
また居室を見に行く。
老人ホームの夜勤って、看取りの方だけを見ていればいいわけではないんです。
看取りが苦手な職員もいた
これは、あまりきれいに書かなくてもいいと思っています。
看取りを苦手にしている職員もいました。
人が亡くなるかもしれない夜です。
しかも夜間は、日中より職員の人数が少なくなります。
「自分の夜勤中だったらどうしよう」
そう思う職員がいても、私は不思議ではないと思います。
何度か経験すれば、連絡の手順や何をすればいいのかは分かってきます。
でも、
手順が分かることと、人の最期を何とも思わなくなることは別です。
私自身も、
「今夜かもしれないな」
と思いながら夜勤をする日は、やっぱり気が気じゃありませんでした。
老人ホームでの看取りは、マニュアルだけで行われているものではありません。
その夜も職員が居室へ行き、呼吸を確認し、いつもと違うところがないか見ながら、その方の最期の時間を支えています。
看取りだから「何があっても救急搬送しない」ではない
ここは誤解されやすいところです。
私が関わってきた看取りでは、本人や家族の意向、主治医との話し合いなどを踏まえて、施設で最期まで過ごす方針が共有されていました。
そのため、看取りの方については、状態が変化したからといって反射的に救急車を呼ぶという対応ではありませんでした。
でも、
「看取り=絶対に救急搬送しない」
と単純に覚えてしまうのは違います。
大切なのは、そのときになって初めて考えるのではなく、
- 本人はどのように過ごしたいのか
- 家族はどう考えているのか
- どこまで施設で対応するのか
- 状態が変化したとき、誰へ連絡するのか
- どのような場合に医療機関への搬送を検討するのか
こうしたことを事前に話し合っておくことです。
だから施設ケアマネをしていた頃も、看取り期になると家族に来てもらい、主治医や看護師などと今後について話をしていました。
夜勤者にとっても、この方針が共有されていることは重要です。
夜中に状態が変わってから、
「この方、救急車を呼ぶんだっけ?」
となってはいけません。
本人や家族が望んでいること。
医師から説明されていること。
施設としての対応。
それを職員間でも共有しておく。
看取りは、家族との話し合いだけではなく、その内容を実際にケアする職員までつなげることが大切だと感じていました。
家族が居室で付き添っていたこともある
看取りが近づいてくると、家族の面会について柔軟に対応していたこともありました。
家族が長い時間、居室で一緒に過ごす。
夜も付き添う。
何人かの家族が交代で来る。
そんな光景も見てきました。
普段の面会とは少し違います。
施設側も、
「できるだけ家族と一緒に過ごしてもらおう」
という空気になります。
ずっと話をしている家族もいれば、ただベッドのそばに座っている家族もいます。
本人から反応がほとんどなくなっていても、声をかけている家族もいました。
介護職はその間も居室へ入ります。
状態を確認する。
必要なケアをする。
水分が摂れそうなら様子を見る。
家族とも少し話をする。
そして、また居室を出る。
看取り期の居室は、介護をする場所であると同時に、家族がお別れの時間を過ごす場所にもなっていました。
だからこそ、老人ホームを選ぶときには、
「看取りできますか?」
だけではなく、
「最期が近づいたとき、家族はどのくらい付き添えますか?」
と聞いておいてもいいと思います。
施設によって面会や宿泊、夜間の出入りなどの対応は違います。
本人だけではなく、家族がどのように最期の時間を過ごせるのか。
これも看取りまで考えて施設を選ぶなら、大切なポイントです。
→「老人ホームの面会ルールは?時間・頻度・差し入れの注意点を解説」
「息を引き取ったかな」と思ってからも、やることがある
夜勤中に居室へ行き、
「息を引き取られたかな」
と思うこともありました。
ここで介護職が死亡を判断するわけではありません。
決められていた連絡手順に沿って、主治医などへ連絡します。
家族がその場にいなければ、家族への連絡も必要になります。
看取りの方がいる夜勤で気が気じゃなかったのは、この場面がいつ来るか分からないからでもありました。
さっき見に行ったときには呼吸していた。
次の巡視で状態が変わっている。
そういう可能性があります。
そして、実際にそのときが来れば、
「亡くなった」
で仕事が終わるわけではありません。
医師による死亡確認など必要な対応があります。
家族への対応もあります。
その方を送り出す準備もあります。
老人ホームでの看取りは、息を引き取った瞬間で終わるものではありませんでした。
日中なら、看護師がエンゼルケアをしていた
日中に亡くなられた場合、私が経験してきた現場では、必要な確認を終えたあと、看護師が中心になってエンゼルケアをしていました。
身体をきれいにする。
身だしなみを整える。
その方を、ご家族が見送れる状態に整えていく。
そのあと、事前に家族が決めていた葬儀社へ連絡し、お迎えを待つことになります。
ここまで来ると、施設の中の空気も少し変わります。
さっきまでその方が生活していた居室です。
いつも介助に入っていた部屋です。
毎日のように、
「おはようございます」
と声をかけていた場所でもあります。
そこから、その方がいなくなる。
何度経験しても、普段の退去とはまったく違います。
看取りについて説明すると、
「医師との連携」
「24時間の介護体制」
「終末期ケア」
といった言葉がどうしても多くなります。
もちろん、全部大切です。
でも実際の施設では、その言葉だけでは見えない時間が流れています。
最期まで居室で過ごす。
家族がそばにいる。
職員が何度も様子を見に行く。
亡くなったあとも身体を整える。
そして家族と一緒に送り出す。
私は、そこまで含めて施設での看取りだったと思っています。
だから葬儀社は、できれば事前に決めておいてほしい
看取り期の家族に葬儀社について話していたのは、このためです。
実際にそのときが来ると、家族は落ち着いているように見えても、頭の中はいろいろなことでいっぱいです。
そんなときに、
「これから葬儀社を探してください」
となると大変です。
まだ本人が生きている段階で葬儀社の話をすることに、抵抗を感じる人もいるでしょう。
その気持ちはよく分かります。
でも、
準備することと、死を待つことはまったく違います。
そのときが来たあと、家族が慌てなくて済むようにする。
どこへ電話するかだけでも決まっていれば、その分、本人のそばにいられる。
だから私は、
「いざというときのために、葬儀社も考えておいてくださいね」
とお伝えしていました。
「看取り対応」の一言だけでは、施設の中身までは分からない
老人ホームのパンフレットに、
「看取り対応可」
と書いてあったとします。
でも、この数文字だけでは分からないことがたくさんあります。
- 看取り期になったとき、誰から家族へ説明があるのか
- 主治医や看護師とはどのように連携しているのか
- 夜間はどのような体制で見守るのか
- 急変時や救急搬送についてどう考えているのか
- 家族は夜間も付き添えるのか
- 亡くなったあとはどのような流れになるのか
施設見学では、設備や居室の広さ、食事、費用などに目が向きやすいと思います。
それは当然です。
入居した直後から看取りのことばかり考えたくない家族もいるでしょう。
でも、
「できれば、ここで最期まで暮らしてほしい」
と思って施設を探しているなら、看取りについて聞くことを避けないでほしい。
私が施設で看取りに関わってきて思うのは、
大切なのは「看取りをやっているか」より、「どんな看取りをしているか」だということです。
ホームページの○印だけでは、夜の居室の様子までは見えません。
だからこそ見学したときに、少し踏み込んで聞いてみてください。
看取りの体制は、施設を比較する大切な材料になります。
ただ、体制が整っている施設を選べば、それだけで十分かというと、私はそうとも思いません。
実際に最期まで暮らす場所だからこそ、数字や設備とは別に見てほしいものがあります。
そこで働いている人たちが、本人と家族にどう向き合っているか。
看取りまで考えて老人ホームを選ぶなら、私はそこもかなり大事だと思っています。
看取りまで考えるなら「実際にどこまで対応したことがあるか」を聞いてみる
老人ホームを見学するとき、
「看取りには対応していますか?」
と聞くこと自体は大切です。
でも、できればそこで終わらせないでください。
私ならもう一つ、
「これまで実際に施設で看取ったことはありますか?」
と聞きます。
「看取り対応可」とパンフレットに書いてあることと、実際に何人もの方を施設で見送ってきたことは、同じではありません。
看取りを経験している施設なら、
本人の状態が変わってきたときにどうするのか。
家族へどのタイミングで連絡するのか。
主治医や看護師とどう連携するのか。
夜間はどう対応するのか。
亡くなったあとはどうするのか。
こうした質問にも、比較的具体的な話が出てくるはずです。
逆に、
「看取りはできます」
と言われても、その先の説明がほとんど出てこないなら、もう少し聞いてみてもいいと思います。
大切なのは「看取り可」という○印ではなく、その施設で実際にどんな看取りが行われているのか。
そこを知ることです。
医師・看護師・介護職がどうつながっているかも大事
老人ホームで看取りをするなら、介護職だけでは対応できません。
医師との連携が必要です。
看護師の役割も大きいです。
そして、日常生活を一番近くで見ている介護職もいます。
施設ケアマネをしていた頃、看取り期になった方については、主治医や看護師、ご家族などと今後の方針を確認していました。
そこで決まったことを、実際にケアする職員までつなげる必要があります。
たとえば、
「食事がほとんど摂れなくなっている」
「今日は水分がこのくらいだった」
「呼びかけへの反応が昨日より少ない」
こういう日々の変化を見ているのは、介護職であることも多いです。
その情報を看護師へ伝える。
必要に応じて医師へつながる。
家族にも状況を伝える。
看取りは、誰か一人の職種だけで完結するものではありません。
だから施設を選ぶときも、
「24時間看護師がいますか?」
という確認だけで終わらず、
「夜間に看護師がいない場合、状態が変わったらどうするんですか?」
と聞いてみる。
この方が、実際の体制が分かります。
24時間看護師が常駐していない施設でも、オンコールなどで連絡体制を整えている場合があります。
逆に、看護師が配置されている時間が長くても、施設で対応できる医療行為や状態には限界があります。
職員が「いる・いない」だけではなく、必要なときにどう連携するのか。
私はそちらも確認してほしいと思っています。
「最期までいられますか?」は遠慮せず聞いていい
老人ホームの見学で、看取りについて聞くことに抵抗を感じる家族もいます。
まだ本人は元気なのに、
「亡くなるときのことを聞くなんて縁起でもない」
と思うかもしれません。
でも、私は施設ケアマネとして看取りに関わってきたからこそ、
聞けるときに聞いておいた方がいい
と思っています。
老人ホームは、一時的に泊まるホテルではありません。
数年、場合によってはもっと長く生活する場所になります。
入居時は元気だった方でも、年齢を重ねれば身体の状態は変わります。
認知症が進むこともあります。
食事が摂れなくなることもあります。
医療的な対応が必要になることもあります。
そのときになって初めて、
「この施設では看取りができません」
と分かったら、本人も家族も新しい生活場所を考えなければならない可能性があります。
だから、
「できればここで最期まで暮らしてほしい」
という希望があるなら、入居前に聞いていいんです。
むしろ聞いてください。
私なら、このあたりまで聞く
施設見学で看取りについて確認するなら、難しい専門用語を使う必要はありません。
普通に聞けば大丈夫です。
- 「こちらで最期まで過ごすことはできますか?」
- 「実際に施設で看取ったことはありますか?」
- 「看取り期になったら、家族にはどのような説明がありますか?」
- 「主治医や看護師とはどう連携していますか?」
- 「夜間に状態が変わったら、どう対応しますか?」
- 「家族は夜も付き添えますか?」
- 「亡くなったあとは、どのような流れになりますか?」
全部を一気に質問する必要はありません。
施設の説明を聞きながら、
「それって夜はどうなるんですか?」
「家族もいられますか?」
と自然に聞けば十分です。
そして、できれば回答の中身だけでなく、質問したときの職員の反応も見てみてください。
看取りについて聞いた途端に嫌そうな顔をするとか、説明が曖昧だとか。
反対に、
「うちではこうしています」
「ご家族にはこのタイミングで来ていただいています」
と具体的に説明してくれる。
こういう違いも、私は施設選びの材料になると思います。
看取り対応だけで「良い老人ホーム」とは決められない
ここまで看取りについてかなり詳しく書いてきました。
でも、もう一つ伝えておきたいことがあります。
看取りに対応している=良い老人ホーム、ではありません。
老人ホームで過ごす時間のほとんどは、看取り期ではないからです。
毎日の食事があります。
お風呂があります。
排泄があります。
レクリエーションがあります。
職員との会話があります。
ほかの入居者さんとの生活があります。
だから施設を選ぶときは、看取り体制だけではなく、
- 普段の介護は丁寧か
- 職員は入居者にどう声をかけているか
- 本人が落ち着いて生活できそうか
- 家族が相談しやすい雰囲気か
- 費用を無理なく払い続けられるか
こうした普段の生活も見てください。
私が思うのは、
「最期まで暮らせる施設」を探す前に、「今日から暮らせる施設」であることが大事
ということです。
そのうえで、
「身体の状態が変わっても、この施設で暮らし続けられそうか」
まで考える。
その順番でいいと思います。
→「良い老人ホームの特徴7選|後悔しない施設選びのポイント」
途中で病院へ入院することもある
「看取り対応の老人ホームを選べば、もう病院へ行くことはない」
というわけでもありません。
老人ホームで生活していても、肺炎や骨折などで治療が必要になることはあります。
本人の状態や治療の必要性によっては、医療機関への受診や入院が必要になります。
また、
「できるだけ施設で過ごしたい」
と思っていても、途中で本人や家族の気持ちが変わることもあります。
それもおかしなことではありません。
看取りについて一度話し合ったからといって、その後の選択を変えてはいけないわけではありません。
本人の状態も変わります。
家族の気持ちも変わります。
だから、その都度話し合う。
私はそれでいいと思っています。
老人ホームでの看取りについてよくある質問
看取りに対応している老人ホームであれば、本人の状態や施設の体制などによって、施設で最期まで過ごせる場合があります。
ただし、すべての老人ホームが看取りに対応しているわけではなく、「看取り対応」としていても具体的な体制は施設によって異なります。
入居前に、医師との連携や夜間対応、家族の付き添いなども確認しておきましょう。
「看取り=絶対に救急搬送しない」と一律に決まるものではありません。
本人の意向や状態、家族との話し合い、医師の判断、施設の体制などを踏まえて対応します。
急変時にどうするのかは、看取りについて話し合う際に事前に確認しておくことが大切です。
施設によって対応が異なります。
看取り期には面会時間を柔軟にしたり、家族が長時間付き添えるようにしたりする施設もあります。
夜間の付き添いや宿泊を希望する場合は、入居前に確認しておくと安心です。
看取り期には、身体の状態によって食事や水分を摂ることが難しくなる場合があります。
無理に食べてもらうのではなく、本人の状態や苦痛などを踏まえ、医師・看護師などと相談しながらケアを考えていきます。
具体的な対応は本人の状態によって異なるため、主治医や施設の看護師などへ確認してください。
まず医師による死亡確認など必要な対応が行われます。
その後のケアや家族への対応、葬儀社のお迎えまでの流れは施設によって異なります。
看取り期になったら、葬儀社を含めて亡くなったあとの流れも施設へ確認しておくと、いざというときに慌てにくくなります。
「看取り対応」の表示だけで決めず、実際の看取り経験、医師との連携、看護師の配置、夜間の対応、家族の付き添い、亡くなったあとの流れなどを確認しましょう。
また、看取り体制だけではなく、普段の介護や職員の雰囲気、費用なども含めて比較することが大切です。
まとめ|看取りは「亡くなる瞬間」だけの話ではない
老人ホームでの看取りについて、施設ケアマネ・介護職として関わってきた経験も交えながらお伝えしました。
- 看取りに対応している老人ホームなら施設で最期まで過ごせる場合がある
- 「看取り対応」でも医療連携や夜間対応などは施設によって異なる
- 看取り期には本人・家族・医療・介護職などで方針を話し合うことが大切
- 家族の付き添いや亡くなったあとの対応も事前に確認しておく
- 施設見学では「看取りできますか?」より「どのように看取っていますか?」まで聞く
- 看取り体制だけでなく、普段の生活や介護も含めて施設を選ぶ
看取りという言葉を聞くと、どうしても「亡くなる瞬間」を想像すると思います。
でも、施設で何人もの方の看取りに関わってきた私にとっては、そこだけではありませんでした。
食事が少しずつ摂れなくなっていく時間があります。
家族に来てもらい、主治医や看護師と話す時間があります。
家族が居室で付き添う時間があります。
夜勤者が、
「大丈夫かな」
と何度も居室を見に行く夜があります。
そして、亡くなったあともあります。
身体を整える。
家族がお別れをする。
葬儀社のお迎えが来る。
その方が施設を出ていく。
そこで一区切りです。
でも、私の中では、それで完全に終わりでもありませんでした。
葬儀などが一段落したあと、ご家族が改めて施設へ来られることがありました。
そのとき、
「この度はありがとうございました」
と声をかけてもらうことも何度もありました。
あの言葉を聞くと、こちらもいろいろ思います。
もっとできたことがあったんじゃないか。
あの対応でよかったのかな。
本人はどう感じていたのかな。
看取りには、正解が見えにくいところがあります。
だからこそ、ご家族からそう言ってもらえると、
「ここで最期まで過ごしてもらえて、よかったのかな」
と、こちらも少し救われるような気持ちになったものです。
看取り対応の老人ホームを探すとき、設備や職員配置を確認することはもちろん大切です。
でも私は、それと同じくらい、
「この人たちなら、本人の最期の時間を任せられそうか」
という感覚も大事にしてほしいと思っています。
最期の数日だけではありません。
元気なときから暮らして。
職員と顔なじみになって。
少しずつできないことが増えて。
食べられなくなって。
家族がそばに来て。
そして、その人が暮らしてきた居室から送り出す。
老人ホームでの看取りは、その人がそこで暮らしてきた生活の続きにあります。
私は施設で働いて、そう感じてきました。
看取りに何度か関わっても、人の最期に慣れるわけではありません。
夜勤で看取りの方がいれば気になりますし、ご家族へ亡くなったあとの話をするのも簡単ではありませんでした。
それでも、本人が暮らしてきた場所で、家族や職員に見守られながら最期の時間を過ごす。
老人ホームだからこそできる看取りもあると、私は思っています。
施設を選ぶときは「看取り対応」の○印だけではなく、その施設が本人と家族にどう向き合っているのかまで見てみてください。
監修・執筆:よっしー
介護福祉士・介護支援専門員
介護現場、施設ケアマネ、老人ホーム入居相談員としての経験をもとに執筆しています。


