老人ホームの持ち物リスト完全版|入居時に必要なもの・あると便利なものをケアマネが解説
老人ホームへの入居が決まると、多くのご家族が悩むのが「何を、どこまで持っていけばいいのか」です。
衣類、下着、タオル、薬、保険関係の書類、テレビ、冷蔵庫……。
考え始めると、家一軒分の引っ越しでもするような気持ちになってしまうかもしれません。
私は介護業界で18年働き、施設ケアマネとして約5年勤務したほか、老人ホーム入居相談員として本人・家族の施設探しや入居相談、施設見学・選定にも携わってきました。
その経験から最初に伝えたいのは、老人ホームの持ち物は、入居初日に100点満点を目指さなくていいということです。
最低限必要なものを準備して、実際に暮らしてから足りないものを追加すればいい。
むしろ大切なのは、ネットにある持ち物リストを全部埋めることではありません。
「うちの母ちゃんは、この部屋でこれからどうやって暮らすんだろう?」
そこから考えた方が、本人にとって本当に必要なものが見えてきます。
- 老人ホーム入居時にまず準備したい持ち物
- 衣類・下着は何枚くらい必要なのか
- 薬や保険関係の書類など忘れやすいもの
- テレビ・冷蔵庫・仏壇などを持ち込むときの注意点
- 食品・ライター・刃物など事前に確認したいもの
- 補聴器や衣類など、入居後に実際にトラブルになりやすいもの
- 施設ケアマネとして「家族に先に知っておいてほしい」と感じたこと
- 老人ホームの持ち物は「全部そろえてから入居」じゃなくていい
- 最初に確認するのはネットの持ち物リストではなく「入居する施設の案内」
- 老人ホーム入居時にまず確認したい持ち物一覧
- 衣類は「5~7枚あればOK」ではなく洗濯と本人の状態で考える
- 高い服より「施設で洗いやすい服」の方が助かることがある
- 衣類・タオルには名前を書く|面倒でもやってほしい
- 補聴器・メガネ・入れ歯は「小さいのに重要」だから要注意
- お菓子や食品を段ボールにこっそり入れるのはやめよう
- ライター・刃物・裁縫道具は持ち込む前に確認する
- 薬と必要書類は「あとで持っていけばいい」にしない
- 老人ホームで「あると便利なもの」は親の生活から選ぶ
- 入居前日に慌てないための持ち物チェックリスト
- 老人ホームの持ち物でよくある質問
- まとめ|持ち物リストより「そこで暮らす親」を見よう
老人ホームの持ち物は「全部そろえてから入居」じゃなくていい
入居が決まった家族からすれば、「忘れ物をしたら親が困る」と心配になるのは当然です。
でも、老人ホームでの生活は入居したその日だけで終わるわけではありません。
入居したときは夏でも、数か月後には冬が来ます。
最初は肌着5枚で足りていても、失禁などで着替えが増えれば足りなくなることがあります。
入れ歯を使っていれば、入れ歯洗浄剤だってなくなります。
反対に、たくさん持ってきたけれど、ほとんど使わなかったものも出てきます。
だから私は、「入居準備=一度ですべて終わらせるもの」と考えなくていいと思っています。
テレビや冷蔵庫が後から段ボールで届くこともあった
私が施設ケアマネをしていたころ、入居後になって家族からテレビや冷蔵庫が送られてくることがありました。
段ボールを開けて、テレビを設置したり、届いたものを組み立てたり。
「ケアマネってケアプランを作る仕事じゃないの?」と思うかもしれません。
もちろん、それが本来の仕事の一つです。
でも介護現場って、そんなにきれいに仕事が分かれていないんですよね(笑)。
本人が生活するために必要なら、段ボールを開けることだってありました。
だから、入居初日にテレビが間に合わなかったからといって、それだけで慌てる必要はありません。
ただし、家具や家電を後から持ち込む場合も、勝手に送るのではなく、置ける大きさや持ち込みの可否を先に施設へ確認してください。
持ち物リストより「親がどう過ごすか」を考えてほしい
私が持ち物選びでかなり大事だと思っているのが、その人が居室で何をして過ごすのかです。
たとえばテレビ。
普段からほとんど見ない人なら、無理に用意する必要はありません。
でも自宅では朝からテレビをつけて、ニュースや時代劇、歌番組を見ていた人なら話は別です。
老人ホームに入れば、一日中誰かが話し相手になってくれると思われることがあります。
現実はそうではありません。
食事を終えて居室へ戻る。次の予定まで時間がある。
職員はほかの利用者の介助をしている。
そんな時間は普通にあります。
テレビも本も趣味も何もなければ、本人は結構暇です。
施設に入ったからといって、その人が何十年も続けてきた暮らし方まで全部「施設仕様」にする必要はありません。
よっしーの現場メモ
持ち物を選ぶ前に、一度だけ考えてみてください。
「母ちゃん、家にいるとき何してたっけ?」
テレビを見る人ならテレビ。本を読む人なら本。写真を見るのが好きならアルバム。
老人ホームの居室は、荷物を置いて寝るだけの場所ではありません。これから本人が暮らす部屋です。
認知症のある人なら昔の写真やアルバムを持っていくのも一つ
生活用品とは少し違いますが、認知症のある人なら、昔の写真やアルバムを持っていくのも一つです。
私が介護現場で関わった認知症のある方の中にも、昔の写真やアルバムを眺めて過ごしている方がいました。
写真を見ながら落ち着いている方も少なからずいました。
もちろん、認知症の状態や好みは人それぞれです。写真を持っていけば必ず落ち着くという話ではありませんし、状態が変われば見なくなることもあります。
それでも、新しい場所へ移る本人にとって、昔から見慣れているものや、その人にとって大切なものを居室に置く意味はあると思っています。
歯ブラシやパジャマだけが「必要な持ち物」ではありません。
父ちゃん・母ちゃんが「ここで暮らしていく」ためのものも、一緒に考えてみてください。
認知症のある親の施設選びで迷っている方は、
認知症でも入居できる老人ホームの種類と選び方も参考にしてください。
最初に確認するのはネットの持ち物リストではなく「入居する施設の案内」
ここは大前提として知っておいてほしいところです。
老人ホームの持ち物に、全国どこの施設でもまったく同じという一律のリストはありません。
テレビや冷蔵庫を持ち込めるか、家具をどこまで置けるか、オムツやタオルを誰が用意するのか、洗濯をどうするのか。
こうした部分は、施設の設備やサービス、運用によって違います。
有料老人ホームについては、厚生労働省の「有料老人ホーム設置運営標準指導指針」で、入居者の定員、利用料、サービス内容や費用負担などを明示した管理規程を設けることや、重要事項説明書などによる情報開示について示されています。
だから、ネットで「老人ホームにはこれが必要」と書かれていても、最後に優先するのは実際に入居する施設から受けた説明や持ち物案内です。
持ち物だけでなく、見学・契約・入居準備までの全体像を確認したい方は、
老人ホーム入居までの流れもあわせて確認してみてください。
仏壇を持っていきたいという相談は意外とある
ちょっと意外かもしれませんが、私が現場で経験した中では「仏壇を老人ホームへ持っていきたい」という相談もありました。
小さなものだけではありません。
「おお、結構でかいな……」と思うような仏壇を持ってきた方もいました(笑)。
長年、自宅で手を合わせることが日課だった人にとっては、仏壇もその人の生活の一部です。
だから「老人ホームなんだから持っていくのはおかしい」と最初から決めつける必要はないと思います。
ただし、居室の広さや防火・安全管理、施設ごとのルールがあります。
大きな家具や仏壇などは、運び込んでから「置けません」となるのが一番大変です。
写真を見せたり、サイズを伝えたりして、搬入する前に施設へ相談しておきましょう。
家具や家電などの持ち込みルールだけでなく、入居前に確認しておきたい契約上のポイントは、老人ホームの契約で確認すべきポイントで詳しく解説しています。
老人ホーム入居時にまず確認したい持ち物一覧
施設によって違いはありますが、現行の持ち物リストを土台にすると、まず確認したいのは次のようなものです。
| 種類 | 主な持ち物 | 確認したいこと |
|---|---|---|
| 衣類 | 普段着、下着、肌着、靴下、パジャマ、上着など | 洗濯頻度、収納量、汚れたときの交換分 |
| 履物 | 室内履き、外履き | 本人の歩行状態に合っているか |
| 口腔ケア用品 | 歯ブラシ、歯磨き用品、コップ、入れ歯ケース、入れ歯洗浄剤など | 施設で用意されるものがあるか |
| 日用品 | タオル、バスタオル、ティッシュ、衛生用品など | 持参・レンタル・施設購入のどれか |
| 薬 | 処方薬、お薬手帳、施設から指定された服薬情報など | 持参方法や入居時に必要な日数を施設へ確認 |
| 保険・医療・介護関係 | 施設から指定された資格確認書類や介護保険関係書類など | 必要な書類は施設の案内を優先する |
| 身の回り品 | 眼鏡、補聴器、時計など | 高価・小型のものは管理方法も確認する |
| 福祉用具 | 杖、歩行器など普段使用しているもの | そのまま持ち込むか施設や担当者へ確認する |
| 家具・家電 | テレビ、冷蔵庫、収納家具など | 備え付け設備、サイズ、持ち込みルールを確認する |
| 本人らしいもの | 写真、アルバム、本、趣味のものなど | 本人が居室でどう過ごすかを考えて選ぶ |
この表を見て、いきなり全部買いに行く必要はありません。
施設にあるものを確認する → 家にあるものを確認する → 足りないものだけ準備する。
この順番で十分です。
衣類は「5~7枚あればOK」ではなく洗濯と本人の状態で考える
老人ホームへ持っていく衣類は、普段着・下着・靴下なら5~7日分程度、パジャマなら3~5セット程度を一つの目安にすると準備しやすいでしょう。
ただし、これは「この枚数を持っていけば絶対に足りる」という数字ではありません。
施設ケアマネとして働いてきた経験から言えば、衣類は枚数だけで決めるより、本人の着替えの頻度と施設の洗濯方法をセットで考える方が現実的です。
同じ下着5枚でも、ほとんど汚さない人なら足りるかもしれません。
一方、失禁などで一日に何度も着替える人なら、あっという間に替えがなくなることがあります。
さらに、施設内でこまめに洗濯するところと、外部の洗濯業者へまとめて出すところでは、洗った衣類が本人のところへ戻ってくるまでの日数も違います。
| 持ち物 | 準備の目安 | 現場で考えたいこと |
|---|---|---|
| 普段着 | 5~7セット程度 | 着替えの頻度・洗濯サイクルで調整 |
| 下着・肌着 | 5~7枚程度 | 失禁などで交換が多い人は少し余裕を持たせる |
| 靴下 | 5~7足程度 | 洗濯頻度や紛失も考えて準備する |
| パジャマ | 3~5セット程度 | 汚れや着替えの頻度に合わせる |
| フェイスタオル | 5~10枚程度 | 施設で用意・レンタルされる場合もある |
| バスタオル | 3~5枚程度 | 入浴方法や施設の備品を確認する |
施設ケアマネ時代に後からわかったこと
肌着類は、入居してから「もう少し持ってきてもらえますか」と家族へお願いすることがありました。
汚染などで着替えが続くと、準備していた枚数では足りなくなることがあるからです。
ただ、これは入居して生活してみないとわからない部分でもあります。
最初から大量に持ち込むより、少し余裕を持たせて、本人の生活に合わせて増やす。
私はこのくらいが一番現実的だと思います。
高い服より「施設で洗いやすい服」の方が助かることがある
老人ホームへ入る親のために、少し良い服を持たせてあげたい。
そう考えるご家族もいると思います。
もちろん、おしゃれを楽しむことは大切です。
ただ、施設で何度も洗濯することまで考えると、値段より「洗いやすさ」を優先した方がいい服もあります。
特に気をつけてほしいのが、乾燥機などで縮みやすい素材です。
私は施設で働いていたころ、洗濯後に衣類がものすごく縮んで戻ってきて、ご家族からクレームを受けたことが何度もあります。
本当に「これ、同じ服か?」と思うくらい縮んでしまうこともありました。
ご家族からすれば当然です。
大切な服を預けたのに、着られないサイズになって戻ってきたら怒りたくもなります。
ただ、現場側にも難しいところがあります。
多くの利用者の衣類を扱うなかで、職員が一着ずつ「これは乾燥機NG」「これは普通に洗って大丈夫」と完璧に把握するのは簡単ではありません。
施設によっては、洗濯物を外部の業者へまとめて出すこともあります。
家庭では当たり前に「この服は乾燥機に入れない」とわかっていても、その情報が施設側へ伝わっていなければ、同じように扱われてしまう可能性があります。
よっしーの現場メモ
縮みやすい服や、家庭で特別な洗い方をしていた服を持っていくなら、入居時に職員へ伝えてください。
「この服は縮むので乾燥機に入れないでください」と一言あるだけでも違います。
施設によっては通常の洗濯と分けて対応したり、外部クリーニングなどを利用したりすることもあります。その場合、別料金になることもあるので確認しておきましょう。
施設へ持っていく服は「着やすさ・洗いやすさ」で選ぶ
施設で使う衣類は、見た目だけではなく毎日の着替えと洗濯まで考えて選ぶのがおすすめです。
| 選ぶポイント | 理由 |
|---|---|
| 本人が着慣れている | 新しい服ばかりにせず、これまでの生活を続けやすい |
| 着替えやすい | 本人が着脱しやすく、介助が必要な場合にも対応しやすい |
| 繰り返し洗濯しやすい | 施設生活では洗濯する機会が多いため |
| 縮み・色落ちしにくい | 乾燥や他の衣類との洗濯によるトラブルを減らしやすい |
| 本人の身体に合っている | きつすぎる服や着脱しにくい服は本人の負担になることがある |
高い服が悪いわけではありません。
ただ、「高い服=施設生活に向いている服」でもありません。
思い入れのある服やおしゃれ着は外出や行事の日に使い、普段は洗濯しやすい服を中心にする。
そんな分け方をしてもいいと思います。
衣類・タオルには名前を書く|面倒でもやってほしい
名前書き。
これは地味です。
何枚もの肌着、靴下、ズボン、タオルに名前を書くのは、正直かなり面倒だと思います。
それでも施設で働いてきた立場から言うと、名前書きはぜひやってほしい入居準備の一つです。
老人ホームでは、多くの利用者の衣類やタオルを扱います。
洗濯のときに混ざることもありますし、乾燥後にまとめて仕分けすることもあります。
外部の洗濯業者へ出す施設なら、さらに多くの衣類の中から本人のものを分けることになります。
そこで名前がなければ、職員が見ても誰のものかわかりません。
特に無地の肌着、黒い靴下、似たようなタオル。
これ、本当に見分けがつきません。
「母の服なんだから職員ならわかるでしょ」と思うかもしれません。
でも、何十人もの衣類を扱う現場では難しいです。
| 持ち物 | 名前を付ける場所の例 |
|---|---|
| 上着・シャツ | 首元や裾の内側 |
| ズボン | ウエスト部分の内側 |
| 下着・肌着 | タグや見えにくい内側 |
| 靴下 | 履き口や足裏側 |
| タオル類 | タグや端の部分 |
| 洗濯ネット | 外から確認しやすい場所 |
油性ペンで直接書く方法でもいいですし、アイロンシールや名前タグを使う方法もあります。
ただし、施設によって名前の付け方を指定される場合があります。
何十枚も名前を書いてから「この方法じゃないんです」となると大変なので、先に施設へ確認しておきましょう。
洗濯ネットにも名前を書いておくと地味に助かる
洗濯ネットを使う施設なら、ネット自体にも名前を書いておくとわかりやすくなります。
靴下や下着などの細かい衣類をまとめることで、他の利用者の衣類との混在や紛失を減らしやすくなります。
ただし、これも施設によって洗濯方法が違います。
施設内で洗うところもあれば、外部業者へ委託するところ、家族が持ち帰って洗濯するところもあります。
洗濯ネットを何枚も買う前に、施設の洗濯方法を確認してください。
補聴器・メガネ・入れ歯は「小さいのに重要」だから要注意
衣類とは違う意味で、現場でかなり気を使ったのが補聴器・メガネ・入れ歯などの小さな持ち物です。
本人の生活には欠かせない。
でも、小さいからなくなりやすい。
特に補聴器は高額なものがあります。
私が担当した方の中には、両耳分で「車が買えるんじゃないか」と思うくらい高価な補聴器を使っている方もいました。
そして、なくなる。
職員みんなで探す。
ベッドの周り、布団の中、衣類、床……。
私自身、何度も必死になって探した経験があります。
ご本人やご家族から「高いんだから絶対に見つけてよ」と言われたこともありました。
探している職員側としては「こっちも必死で探してるんだけどな……」と思う。
これも介護現場のきれいごとでは済まないところです。
ただ、ご家族からすれば何十万円もする大切な補聴器です。なくなれば焦るのも当然です。
だからこそ、誰かを責める話で終わらせるのではなく、なくなる前に管理方法を決めておくことが大切だと思っています。
補聴器を本人が自分で管理するのか、就寝時などは職員が預かれるのか。
保管する場合はどこに置くのか。
こうした対応は施設や本人の状態によって違うので、入居時に相談しておきましょう。
メガネや入れ歯も同じです。
名前を付けられるものには名前を付け、ケースも含めて管理方法を確認しておくと安心です。
入れ歯洗浄剤は地味だけど忘れやすい
入れ歯を使っている人なら、入れ歯ケースだけではなく入れ歯洗浄剤も確認しておきましょう。
こういう消耗品は、入居時の大きな荷物に気を取られていると地味に忘れます。
そして使えば当然なくなります。
施設で用意するのか、家族が補充するのかも確認しておくと、後から慌てずに済みます。
お菓子や食品を段ボールにこっそり入れるのはやめよう
ここからは、施設側が違う意味で困りやすかった持ち物です。
家族から届いた段ボールを開ける。
衣類や日用品を取り出していく。
すると奥の方から、お菓子や食べ物が出てくる。
これ、意外とありました(笑)。
家族としては、「母が好きなお菓子だから」「父が部屋で食べられるように」という気持ちだと思います。
その気持ちはよくわかります。
ただ、本人の飲み込みの状態や食事上の配慮、食品の保管方法などによっては、施設側で確認が必要になることがあります。
特に本人が自由に食べられる状態なのかどうかは、その人によって違います。
難しいことではありません。
「母が好きなお菓子なんですが、部屋に置いて大丈夫ですか?」
これだけでいいんです。
本人が安全に食べられるなら、好きなものを楽しむことも生活の一部です。
持ち込みそのものを悪者にするのではなく、施設と相談して本人が楽しめる方法を考える。
私はその方がいいと思います。
ライター・刃物・裁縫道具は持ち込む前に確認する
もう一つ、先に施設へ確認してほしいのが火やケガにつながる可能性のあるものです。
たとえば、ライター、刃物、裁縫道具など。
特に喫煙習慣がある人では、ライターを本人が持っていることがあります。
自宅では何十年も普通に使ってきたものです。
だから本人や家族からすれば、「なんで老人ホームに入った途端にダメなの?」と思うこともあるでしょう。
でも施設では、本人だけではなく他の利用者も一緒に生活しています。
認知症の状態や本人の身体状況、施設の安全管理などによって、本人が自由に所持するのではなく、職員預かりなどの対応になることがあります。
刃物や裁縫道具についても同じです。
ただし、「老人ホームではライター禁止」「裁縫道具は禁止」という全国一律のルールがあるわけではありません。
施設のルールや本人の状態によって対応が異なるため、持ち込む前に確認してください。
ここまで見ると、老人ホームの持ち物は単純な「いる・いらない」だけでは決められないことがわかると思います。
本人に必要か。安全に使えるか。施設ではどう管理するのか。
この3つまで考えると、入居後のトラブルをかなり減らせます。
そして、衣類や生活用品とは別に、入居時に忘れたくないのが薬や保険・医療・介護関係の書類です。
テレビや冬服は後から追加できますが、服薬や入居手続きに必要なものは事前確認が重要です。
薬と必要書類は「あとで持っていけばいい」にしない
衣類やテレビは、足りなければ入居後に追加できます。
でも、薬や入居手続きに必要な書類は少し話が違います。
入居日から必要になる可能性があるものは、事前に施設へ確認して準備しておきましょう。
薬は「何日分必要か」を施設へ確認する
普段飲んでいる薬がある人は、施設から指定された日数分を準備します。
その際、お薬手帳や薬の内容がわかる資料など、施設から求められたものも一緒に準備しましょう。
大切なのは、「いつもの薬だから、とりあえず全部持っていけばいい」と自己判断しないことです。
入居後にどの医療機関を受診するのか、薬を誰がどのように管理するのかなどは、施設や契約内容によって異なります。
入居日が決まったら、「薬は何日分必要ですか?」「お薬手帳も必要ですか?」と施設へ確認しておくと安心です。
保険・医療・介護関係の書類は施設の案内どおりに準備する
必要書類も、ネットの持ち物リストだけを見て準備するより、入居する施設から指定されたものを一つずつ確認する方が確実です。
たとえば、次のようなものを求められることがあります。
| 種類 | 確認するものの例 |
|---|---|
| 医療保険関係 | 施設から指定された資格確認書類など |
| 介護保険関係 | 介護保険被保険者証、負担割合証など |
| 服薬関係 | お薬手帳、薬の内容がわかる資料など |
| 医療情報 | 診療情報提供書など施設から指定された書類 |
| その他 | 施設が入居手続きで指定した書類 |
ここは施設の種類や本人の状況によって必要なものが変わります。
「ネットに書いてあったから持っていく」ではなく、施設から渡された入居案内を正解にするくらいで考えておきましょう。
老人ホームで「あると便利なもの」は親の生活から選ぶ
最低限の持ち物を準備したら、次は本人が暮らしやすくなるものを考えてみましょう。
ここでも、便利グッズを片っ端から買う必要はありません。
自宅で何を使っていたか、居室で何をして過ごすか。
そこから選ぶ方が失敗しにくいです。
| あると便利なもの | 向いている人・使い方 | 注意点 |
|---|---|---|
| テレビ | 自宅でもテレビを見る習慣がある人 | サイズ・設置場所・持ち込みルールを確認 |
| 時計・カレンダー | 日付や時間を確認する習慣がある人 | 本人が見やすいものを選ぶ |
| 写真・アルバム | 家族写真や昔の写真を見るのが好きな人 | 高価な原本を持ち込むかは家族で検討 |
| 本・雑誌 | 読書習慣がある人 | 収納スペースを確認 |
| ひざ掛け | 居室や共有スペースで寒さを感じやすい人 | 名前を付けておく |
| クッション | 普段から使用している人 | 本人の身体状況に合うか確認 |
| 収納用品 | 備え付け収納だけでは足りない場合 | 先に居室の広さを確認 |
「老人ホームに入るんだから新品をそろえよう」と考えなくても大丈夫です。
長年使っている時計や、いつも読んでいる本、家族の写真。
本人にとっては、そういうものの方が新しい便利グッズより大切なことがあります。
よっしーから家族へ
老人ホームへの入居は、本人にとってかなり大きな環境の変化です。
部屋も変わる。周りにいる人も変わる。食事をする場所も変わる。
だから持ち物くらいは、全部を新品にしなくてもいいと思っています。
「これを見ると家を思い出す」「これがあるといつもの感じがする」というものを一つ持っていく。
それも立派な入居準備です。
入居後に衣類や日用品を届けたり、本人の様子を見に行ったりするときのために、老人ホームの面会ルールも入居前に確認しておくと安心です。
入居前日に慌てないための持ち物チェックリスト
最後に、入居前に確認したいポイントをまとめます。
全部にチェックを付けることより、わからない項目をそのままにしないことの方が大切です。
| チェック | 確認すること |
|---|---|
| □ | 施設から渡された持ち物案内を確認した |
| □ | 入居時に必要な衣類・肌着を準備した |
| □ | 衣類やタオルなど必要なものに名前を付けた |
| □ | 施設の洗濯方法・頻度を確認した |
| □ | 縮みやすい服・特別な洗濯が必要な服を施設へ伝えた |
| □ | 季節が変わったときの衣替えを誰がするか考えた |
| □ | 薬の必要日数・持参方法を確認した |
| □ | 保険・医療・介護関係の必要書類を確認した |
| □ | 補聴器・メガネ・入れ歯などの管理方法を確認した |
| □ | テレビ・冷蔵庫・家具などの持ち込み可否とサイズを確認した |
| □ | 食品やお菓子を持ち込めるか確認した |
| □ | ライター・刃物など管理が必要なものを確認した |
| □ | 本人が居室で楽しめるものを一つ考えた |
特に家具や家電は、買ってから「置けません」となると大変です。
写真や商品ページを見せて「これを置きたいのですが大丈夫ですか?」と聞けば、サイズまで含めて相談しやすくなります。
老人ホームの持ち物でよくある質問
いいえ。すべて新品にする必要はありません。
普段から着ている服や使い慣れたものを持っていくことで、これまでの生活を続けやすい場合があります。
ただし、傷みが強いものや施設生活で管理しにくいものは、必要に応じて買い替えを検討しましょう。
普段着や下着、靴下は5~7日分程度、パジャマは3~5セット程度が準備を始める一つの目安です。
ただし、本人の着替えの頻度や失禁の有無、施設の洗濯サイクルによって必要枚数は変わります。
最初から大量に買わず、少し余裕を持って準備し、生活が始まってから調整するのがおすすめです。
施設によって異なります。
持ち込める場合でも、居室の広さやコンセントの位置、サイズ、電気代などの扱いを確認しておきましょう。
購入・搬入する前に施設へ相談するのが確実です。
持ち込み可能な施設もありますが、施設ごとの確認が必要です。
私自身、施設で仏壇を持ち込んだ方を見てきました。かなり大きな仏壇だったこともあります。
居室スペースや安全面などの確認が必要になるため、大きさがわかる写真や寸法を施設へ伝えて、搬入前に相談してください。
本人の状態や施設の管理方法によって対応が異なります。
本人が好きなものを楽しむことは大切ですが、飲み込みの状態や食事上の配慮、保管方法などの確認が必要になる場合があります。
段ボールなどへこっそり入れず、施設へ一言確認しておきましょう。
施設によって管理方法が異なるため、事前確認が必要です。
現金を本人が管理する施設もあれば、施設側で一定額を預かる場合もあります。
高額な現金、通帳、印鑑、アクセサリーなどは自己判断で持ち込まず、施設の管理方法や紛失時の取り扱いを確認してください。
衣類や日用品など、後から追加できるものも多くあります。
忘れ物に気づいたら、まず施設へ相談してください。
一方、入居手続きに必要な書類や薬などは入居日から必要になる場合があるため、事前に施設の案内を確認しておきましょう。
まとめ|持ち物リストより「そこで暮らす親」を見よう
老人ホームへの入居準備では、持ち物を一つずつチェックすることも大切です。
でも、施設ケアマネとして働いてきた私がもっと大事だと思うのは、持ち物リストの向こう側にいる本人を見ることです。
夏に入居したら、冬になったときの服はどうするのか。
テレビが好きだった母ちゃんは、居室で何を見て過ごすのか。
補聴器を使っている父ちゃんは、寝るときどこに置くのか。
昔の写真を見るのが好きだったなら、アルバムを一冊持っていくのもいい。
そうやって「施設に何を持っていくか」ではなく、「親がそこでどう暮らすか」から逆算すると、本当に必要なものが見えてきます。
- まず入居する施設の持ち物案内を確認する
- 衣類は枚数だけでなく洗濯方法・着替え頻度で考える
- 縮みやすい衣類は事前に施設へ伝える
- 衣類やタオルなど必要なものには名前を付ける
- 補聴器など高価な小物は管理方法まで確認する
- 食品・ライター・刃物などは自己判断で持ち込まない
- 家具・家電・仏壇など大きなものは搬入前に確認する
- 全部を初日にそろえず、生活しながら追加してもいい
- 本人が好きだったもの・落ち着けるものも忘れない
老人ホームの入居準備は、持ち物を全部そろえることがゴールではありません。
「うちの母ちゃんは、ここで何をして過ごすかな?」と一度考えてみてください。
その視点があれば、本当に必要な持ち物は自然と見えてくると思います。
老人ホームへの入居は、本人にとって「荷物を運んで終わり」ではありません。
そこから新しい暮らしが始まります。
持ち物も、その暮らしを少しでも本人らしくするために選んであげてください。
【監修・執筆】よっしー
介護福祉士/介護支援専門員(ケアマネジャー)/埼玉県認知症介護実践者研修 修了
介護業界18年。介護職として10年以上の現場経験を持ち、認知症グループホームで約6年勤務(うち計画作成担当者として約3年)。施設ケアマネジャーとして約5年、デイサービス管理者も経験。老人ホーム入居相談員として、本人・家族の施設探しや入居相談にも携わる。
介護現場・認知症ケア・ケアマネ業務・老人ホーム相談の実務経験をもとに、制度だけでは見えにくい介護のリアルを、本人や家族の目線に立って分かりやすく発信しています。



