老人ホームの契約前に確認すべき10項目|追加費用・通院・退去条件まで経験者が解説
老人ホームがようやく決まった。
見学もした。
本人も家族も納得した。
あとは契約して入居するだけ――。
ここまで来ると、家族としてはホッとすると思います。
でも、最後にもう一度だけ気を引き締めてほしいのが「契約」です。
私は施設ケアマネとして働いていた頃、
「これって何のお金ですか?」
「こんな料金がかかるなんて聞いていません」
「施設に入ったら全部やってくれるんじゃないんですか?」
と、入居後に家族から聞かれることが何度もありました。
契約を担当するのは施設長や生活相談員でしたが、入居後に介護保険や料金について質問され、施設ケアマネだった私が説明することも少なくありませんでした。
もちろん、契約時に施設側が説明していなかったのか。
家族が説明を聞いていたけれど忘れてしまったのか。
私には分からないケースもあります。
ただ、一つだけ現場にいて感じたことがあります。
老人ホームの契約説明は長い。初めて聞く家族が、その場ですべて理解して覚えるのは簡単ではありません。
だからこの記事では、
「契約書を最初から最後まで全部覚えてください」
とは言いません。
その代わり、
「ここだけは契約前に聞き流さないでほしい」
というポイントを、施設ケアマネ・老人ホーム入居相談員としての経験を交えながら解説します。
- 老人ホームの契約前に必ず確認したいポイント
- 月額料金以外にかかる追加費用
- 介護保険自己負担分で確認したいこと
- 通院・付き添い費用で見落としやすいポイント
- 入院や心身状態の変化による退去条件
- 将来、生活保護になった場合に確認したいこと
- 結論|契約書を全部覚えなくていい。でも6つは聞き流さないで
- 老人ホームの契約では「重要事項説明書」を確認する
- 「月額料金」だけではなく、実際の請求額を確認する
- 介護付き有料老人ホームでは「介護保険自己負担分」も忘れない
- 契約前に「総額」で聞く。それだけでも見落としは減らせる
- 通院は無料とは限らない|付き添い・送迎費まで確認する
- 入院しても「必ず同じ老人ホームへ戻れる」とは限らない
- 「この施設で最後までいられると思ったのに」実際にあった家族とのトラブル
- 退去条件は「怖いから見ない」ではなく、入居前だからこそ見る
- 「看取り対応」という言葉だけで安心しない
- 良い契約説明は「メリット」だけではなく、できないことも話してくれる
- 「今は払える」だけで決めない|将来の支払いまで契約前に確認する
- 契約前に確認したいことを10項目に絞る
- 契約当日に初めて重要事項説明書を見るより、事前にもらって確認する
- 「分からないので説明してください」は恥ずかしいことではない
- よくある質問
- まとめ|「聞いてない」を防ぐために、契約前だからこそ聞いてほしい
結論|契約書を全部覚えなくていい。でも6つは聞き流さないで
最初に結論です。
老人ホームの契約では、少なくとも次の6つは確認してください。
- 毎月の支払い総額はいくらになるのか
- 月額料金に含まれない追加費用は何か
- 介護保険の自己負担分はいくらになるのか
- 通院・送迎・付き添いは有料なのか
- 入院や心身状態の変化で退去になる条件は何か
- 将来、支払いが難しくなった場合も住み続けられるのか
パンフレットに大きく、
「月額○万円~」
と書かれていても、それだけで実際の支払額を判断するのはおすすめできません。
老人ホームでは家賃や管理費、食費などのほか、施設や契約内容によってさまざまな費用が発生します。
介護付き有料老人ホームで特定施設入居者生活介護を利用する場合には、介護保険サービスの自己負担もあります。
さらに、
- 医療費
- 薬代
- 理美容代
- 日用品費
- 通院時の付き添い費
- 施設独自の有料サービス
などが別途必要になることもあります。
老人ホームの毎月の費用について先に確認したい方はこちらも参考にしてください。
老人ホームの契約では「重要事項説明書」を確認する
老人ホームの契約前に名前だけでも覚えておいてほしい書類があります。
「重要事項説明書」です。
厚生労働省の「有料老人ホーム設置運営標準指導指針」では、入居希望者が契約内容を十分理解して契約できるよう、契約締結前に十分な時間的余裕をもって重要事項説明書や入居契約書について説明することが示されています。
重要事項説明書には、
- 施設の運営主体
- 建物や居室の概要
- 職員体制
- 提供されるサービス
- 利用料金
- 入居者の状況
- 契約や退去に関する事項
など、老人ホームを選ぶうえで重要な情報が記載されています。
厚生労働省でも、有料老人ホームの重要事項説明書の様式や標準指導指針を公開しています。
施設ケアマネ時代、「聞いてない」は珍しくなかった
ここからは私自身の経験です。
老人ホームの契約は、説明する内容が多く、長時間になることがあります。
施設長や生活相談員が一つずつ説明していても、家族にとっては初めて聞く言葉ばかりです。
入居契約。
重要事項説明書。
介護保険。
加算。
管理費。
共益費。
退去条件。
医療機関との連携。
一度にこれだけ説明されれば、すべてを覚えて帰るのは簡単ではありません。
実際、入居してしばらくしてから、
「請求書に書いてある、この金額は何ですか?」
と問い合わせを受けることは珍しくありませんでした。
特に私が何度も感じたのが、
「パンフレットに書いてある月額料金」と「実際に毎月支払う金額」が、家族の中で同じものになってしまっている
ケースです。
「月額料金」だけではなく、実際の請求額を確認する
私が施設ケアマネをしていた頃、実際にあったのが共益費に水道光熱費まで含まれていると思っていたケースです。
家族としては、
「共益費を払っているんだから、水道や電気もそこに入っていると思っていた」
という感覚だったのでしょう。
ところが、施設によって料金体系は異なります。
共益費。
管理費。
水道光熱費。
食費。
家賃。
それぞれ何が含まれているのかは、名称だけでは判断できません。
だから契約前には、
「この月額料金以外に、毎月ほぼ必ず発生する費用を全部教えてください」
と聞いてしまうのがおすすめです。
さらに可能なら、
「うちの親の要介護度・負担割合なら、1か月の請求総額はだいたいいくらになりますか?」
と具体的に聞いてください。
- 家賃はいくらか
- 管理費・共益費には何が含まれているか
- 水道光熱費は別途必要か
- 食費はいくらか
- 介護保険の自己負担はいくらくらいか
- 医療費・薬代は別途いくらくらい必要か
- 通院や付き添いは有料か
- 日用品・理美容・洗濯などに別料金があるか
- そのほか毎月発生しやすい費用はあるか
介護付き有料老人ホームでは「介護保険自己負担分」も忘れない
もう一つ、私が契約時の説明だけのために同席したことが何度もあったのが、介護保険の自己負担分です。
介護付き有料老人ホームのうち「特定施設入居者生活介護」の指定を受けている施設では、要介護度などに応じた介護保険サービス費が設定されています。
利用者は原則としてその1割、一定以上の所得がある方は2割または3割を負担します。
また、実際の金額は要介護度だけで決まるわけではありません。
- 本人の要介護度
- 介護保険の負担割合
- 施設の所在地による地域区分
- 施設が算定している各種加算
などによって変わります。
厚生労働省の介護サービス情報公表システムでも、特定施設入居者生活介護の利用者負担とは別に、入居費用や日常生活費などが必要になることが示されています。
→厚生労働省|特定施設入居者生活介護のサービス内容・利用者負担
「この加算は何ですか?」と聞かれることもあった
入居後、介護保険自己負担分の請求書を見た家族から、
「この項目は何ですか?」
と質問されることもありました。
介護保険には、施設の体制や提供しているサービスなどに応じて算定される加算があります。
私が施設ケアマネだった頃も、機能訓練に関する加算やサービス提供体制に関する加算などについて、家族から説明を求められることがありました。
もちろん、算定する加算は施設によって異なります。
だからこそ、
「介護保険だから仕方ない」
で終わらせず、
「この施設では、どんな加算が算定される可能性がありますか?」
と契約時に聞いておくと、入居後の請求書を見たときに驚きにくくなります。
契約前に「総額」で聞く。それだけでも見落としは減らせる
老人ホームの料金は、一つひとつ見ていくと複雑です。
だから私は、家族がすべての料金項目を暗記する必要はないと思っています。
それよりも契約前に、
「結局、うちの親なら毎月いくらくらい必要ですか?」
と聞いてみてください。
そのうえで、
「その金額に入っていないものは何ですか?」
ともう一度聞く。
この2つだけでも、かなり違います。
老人ホームの費用が将来的に払えなくなることが心配な方は、こちらも確認してください。
通院は無料とは限らない|付き添い・送迎費まで確認する
老人ホームの契約で、私が意外と見落とされやすいと感じていたのが通院時の送迎・付き添い費用です。
入居する家族からすると、
「施設に入ったんだから、病院へ行くときも施設で対応してもらえる」
と思うかもしれません。
実際、通院対応をしてくれる老人ホームはあります。
ただし、
「対応してくれること」と「月額料金に含まれていること」は別です。
施設によって、
- 協力医療機関への通院は無料
- それ以外の医療機関は有料
- 送迎だけなら対応可能
- 診察終了まで付き添う場合は別料金
- 家族による付き添いを原則としている
など、取り扱いが違います。
だから契約前には、
「病院へ行くことになったら、誰が連れて行くんですか?」
だけではなく、
「それはいくらかかりますか?」
まで聞いてください。
私が勤務していた施設では1時間2,000円・15分単位だった
ここからは、私が施設ケアマネとして勤務していた施設での実例です。
当時の施設では、通院の付き添いについて1時間2,000円という料金設定で、15分単位で計算していました。
基本的には、
施設を出た時間から、施設へ戻った時間まで
で計算します。
たとえば施設職員が、
本人を車に乗せる。
病院まで送迎する。
診察に付き添う。
会計や薬を待つ。
施設へ戻る。
という対応をすれば、その時間が長くなるほど料金も増えます。
一方、家族が病院で待っていて、施設側は送迎のみを担当するといった場合には、その対応時間分の費用になるという扱いでした。
私が勤務していた施設では、協力医療機関への対応と、それ以外の医療機関への対応でも取り扱いが違うことがありました。
だから契約前に聞いてほしいのは、次のようなことです。
- 通院の送迎は施設がしてくれるのか
- 診察中も職員が付き添ってくれるのか
- 家族の付き添いが必要になるのはどんな場合か
- 協力医療機関なら無料なのか
- 協力医療機関以外では料金がかかるのか
- 料金は時間制・回数制のどちらなのか
- 待ち時間も料金に含まれるのか
高齢になると、入居後に一度も病院へ行かないとは限りません。
持病がある。
定期受診が必要。
専門医へ通っている。
急に体調を崩した。
こうしたことを考えると、通院対応は契約前に確認する価値が高い項目だと思います。
入院しても「必ず同じ老人ホームへ戻れる」とは限らない
老人ホームへ入居したあと、病気やけがなどで入院することがあります。
ここで家族が確認しておきたいのは、
「入院したら部屋はどうなるのか」
だけではありません。
もっと重要なのは、
「退院できる状態になったとき、この施設へ戻れる条件は何か」
です。
たとえば、
- 長期入院になった場合の契約はどうなるのか
- 入院中も家賃・管理費等が発生するのか
- 居室をどのくらいの期間確保できるのか
- 退院時に医療的ケアが増えていても戻れるのか
- 認知症や精神状態が変化した場合も対応できるのか
を確認しておく必要があります。
老人ホームによって、設備も職員配置も医療連携体制も異なります。
入居時には対応できていた本人でも、入院をきっかけに必要な支援が大きく変わる場合があります。
そのとき、
「入居したんだから、何があっても一生ここへ戻れる」
とは限りません。
厚生労働省の有料老人ホーム設置運営標準指導指針でも、設置者側の契約解除条件は入居者の権利を不当に狭めないものとし、契約解除の条件や、心身状態の変化によって住み替え・契約解除等を行う場合の手続きを契約書や管理規程で明らかにするよう示されています。
参考:厚生労働省|有料老人ホームの設置運営標準指導指針について
老人ホーム入居中の入院費用や、入院中に施設へ支払う可能性がある費用はこちらで詳しく解説しています。
「この施設で最後までいられると思ったのに」実際にあった家族とのトラブル
ここからは、私が施設ケアマネとして働いていた頃の実話です。
ある入居者の認知症の症状や精神状態が悪化し、精神科へ入院することになったケースがありました。
入院する段階では、家族もその対応に同意していました。
しかし、入院が長期化しました。
そして本人の状態などを踏まえると、以前と同じように施設へ戻って生活することが難しくなってしまいました。
そのことを知った家族は、かなり怒っていました。
「この施設を信じていたのに」
「ここで最後までいられると思っていたのに、退去なんですか?」
という気持ちだったのだと思います。
家族の中では次第に、
「少し状態が悪くなったら、入院させて退去させる施設なんじゃないか」
という不信感にまで変わってしまいました。
そして、その話を周囲にもするようになり、当時の施設長や上司が対応に追われていました。
正直、かなり大変なケースでした。
だからこそ、契約前に、
「看取りまで対応しますか?」
だけを聞くのでは足りません。
看取り対応ができる施設でも、あらゆる病気・精神状態・医療行為に対応できるとは限りません。
次のように聞いた方が具体的です。
- どんな状態になると、この施設では対応が難しくなりますか?
- 長期入院になった場合、契約はどうなりますか?
- 認知症の症状が強くなった場合も住み続けられますか?
- 精神科への入院後でも戻れる可能性はありますか?
- 医療行為が増えた場合、どこまで対応できますか?
- 施設で対応できなくなったとき、次の施設探しを手伝ってもらえますか?
退去条件は「怖いから見ない」ではなく、入居前だからこそ見る
老人ホームを探している段階で、
「退去」
「契約解除」
という文字を見るのは気分の良いものではありません。
せっかく親の住む場所が決まりそうなのに、
「追い出される話なんてしたくない」
と思うかもしれません。
でも、私は逆だと思っています。
元気なときだからこそ確認できる。
本人の状態が悪くなってから、
「契約書のどこに書いてある?」
「そんな話は聞いていない」
となる方が、家族の負担は大きくなります。
老人ホームによって違いますが、契約書や重要事項説明書では、たとえば次のような項目を確認します。
| 確認項目 | 家族が聞きたいこと |
|---|---|
| 長期入院 | 何日・何か月程度で契約上の扱いが変わるのか |
| 医療対応 | どんな医療行為まで施設で対応できるのか |
| 認知症・精神状態 | 状態が変化した場合、どこまで対応できるのか |
| 料金滞納 | 支払いが難しくなった場合、どのような手続きになるのか |
| 共同生活 | 他の入居者への影響が大きい場合、どのような対応になるのか |
| 契約解除 | 施設側から解除する場合の条件・手続きは何か |
厚生労働省の標準指導指針でも、有料老人ホームの契約解除条件は、入居者の権利を不当に狭めないようにすることが示されています。
老人ホームを退去になる主なケースや、退去を求められた場合の対処法はこちらで詳しく解説しています。
「看取り対応」という言葉だけで安心しない
老人ホームのパンフレットを見ると、
「看取り対応」
「終身利用」
などの言葉を見ることがあります。
家族からすれば、
「じゃあ、ここなら最期まで住める」
と思うかもしれません。
でも、本人に必要な医療行為や精神面への対応などが、施設の設備・人員体制では難しくなることがあります。
だから、
「看取りできますか?」
だけではなく、
「逆に、どんな状態になったら対応できなくなりますか?」
と聞いてみてください。
これは少し聞きにくい質問かもしれません。
でも私は、かなり大切な質問だと思っています。
老人ホームでの看取りや、最期まで暮らせる施設を選ぶポイントはこちらも参考にしてください。
良い契約説明は「メリット」だけではなく、できないことも話してくれる
私は老人ホーム入居相談員時代、基本的に施設との契約そのものには同席していませんでした。
ただ、一度だけ契約説明へ付き添ったことがあります。
それは、医療対応を強く打ち出している住宅型有料老人ホームでした。
その施設の契約説明で印象に残ったのは、
料金だけではなく、今後どのような方針で本人を支援するのかまで、かなり丁寧に説明していたことです。
もちろん契約説明なので、やっぱり長時間でした(笑)。
でも、
「これが料金です」
「ここにサインしてください」
だけではない。
本人が今どのような状態なのか。
今後どのようなことが想定されるのか。
施設としてどこまで対応するのか。
そうした話までしていました。
「今は払える」だけで決めない|将来の支払いまで契約前に確認する
老人ホームの契約では、現在の料金だけでなく数年後の支払いについても考えておきたいところです。
入居した時点では十分な預貯金があっても、毎月施設費を支払い続ければ、当然ながら資産は少しずつ減っていきます。
私が老人ホーム入居相談員をしていた頃にも、
「今は貯金があるので自費で払える。でも、このまま減っていったら将来は生活保護を考えています」
という相談はありました。
たとえば預貯金が500万円ほどある。
今すぐ生活保護を申請する状況ではない。
でも、老人ホームで毎月20万円前後を支払っていけば、数年後には状況が変わるかもしれない。
こうしたケースです。
ここで注意してほしいのは、
「生活保護になれば、そのまま今の老人ホームに住み続けられるだろう」と決めつけないことです。
生活保護は、資産や収入などを踏まえて福祉事務所が個別に判断する制度です。
また、生活保護を利用することになった場合に、現在入居している施設でそのまま生活を続けられるかどうかは、施設の料金設定や契約内容なども関係します。
将来的に生活保護の利用を想定しているなら、入居する前に施設へ確認しておくことをおすすめします。
参考:厚生労働省|生活保護制度
特に要支援の方は、私はしつこいくらい確認していた
ここからは制度そのものの話ではなく、私が老人ホーム入居相談員として施設探しをしていたときの経験です。
将来的に生活保護になる可能性がある方の施設を探すとき、私は特に要支援の方について慎重に確認していました。
介護保険のサービス費は、サービスの種類や要介護度、施設の体制、地域区分、各種加算などによって異なります。
そのため、同じ「生活保護を利用する可能性がある方」でも、施設側の受け入れ方針がすべて同じとは限りません。
私が相談員だった頃の感覚としても、
「将来、生活保護になっても大丈夫ですよね?」
という曖昧な確認だけで施設を決めるのは怖いと感じていました。
だから、将来的に生活保護を検討していることが分かっているなら、
- 現在は自費で入居すること
- 預貯金が減ったら生活保護を検討していること
- 現在の要介護・要支援状態
- 生活保護になった後も入居を継続できるのか
まで具体的に伝えて確認した方がいいと思います。
極端に言えば、
「要支援のまま生活保護になった場合でも、こちらで生活を続けられますか?」
くらい具体的に聞いていい。
私はそのくらい重要な確認事項だと思っています。
もちろん、将来の要介護度や生活保護の決定を契約時点で確定することはできません。
だからこそ、現時点で想定している将来像を施設側へ伝え、その場合の施設方針を確認しておくことが大切です。
契約前に確認したいことを10項目に絞る
ここまで読んで、
「結局、契約の日に何を聞けばいいの?」
と思った方もいるでしょう。
契約書や重要事項説明書には多くの情報が書かれています。
すべて大切ではありますが、私が施設ケアマネ・老人ホーム入居相談員としての経験から、家族に特に確認してほしいものを10項目に絞ると次のようになります。
- ① 毎月の支払い総額はいくらくらいになるか
- ② パンフレットの月額料金に含まれていない費用は何か
- ③ 管理費・共益費・水道光熱費はそれぞれどうなっているか
- ④ 介護保険自己負担分と主な加算はいくらくらいか
- ⑤ 通院の送迎・付き添いは誰が行い、いくらかかるか
- ⑥ 協力医療機関以外へ通院するときの対応はどうなるか
- ⑦ 長期入院した場合、居室や契約はどうなるか
- ⑧ どのような心身状態になると施設での対応が難しくなるか
- ⑨ 施設側から契約解除となる条件は何か
- ⑩ 将来支払いが難しくなった場合、どのような選択肢があるか
これを全部暗記して契約へ行く必要はありません。
このページをスマホで見ながら、一つずつ聞いてもいいと思います。
特に、
「結局、毎月いくら?」
「どんな状態になったら住めなくなる?」
「病院へ行ったらいくら?」
この3つは聞いておいてほしいところです。
契約当日に初めて重要事項説明書を見るより、事前にもらって確認する
契約説明が長くなればなるほど、後半になると集中力も落ちてきます。
これは仕方ありません。
だから可能であれば、契約当日に初めて書類を見るのではなく、重要事項説明書や契約書類を事前に確認できないか施設へ聞いてみるのも一つの方法です。
厚生労働省の有料老人ホーム設置運営標準指導指針でも、入居希望者が契約内容を十分理解したうえで契約できるよう、契約締結前に十分な時間的余裕をもって重要事項説明書や契約書について説明することが示されています。
参考:厚生労働省|有料老人ホームの設置運営標準指導指針について
事前に確認できれば、
- 分からないところに印を付ける
- 家族同士で質問を整理する
- パンフレットと料金表を見比べる
- 退去条件を確認する
- 当日聞きたいことをメモしておく
ことができます。
契約前にもう一度施設を確認したい場合は、見学時のチェックポイントも活用してください。
「分からないので説明してください」は恥ずかしいことではない
介護保険。
重要事項説明書。
介護保険の加算。
協力医療機関。
看取り。
契約解除。
初めて老人ホームを契約する家族にとって、聞き慣れない言葉がたくさん出てきます。
分からなくて当然です。
私が施設ケアマネをしていた頃も、入居後の請求書に書かれた介護保険の加算について、
「これは何ですか?」
と聞かれることがありました。
私は介護保険に関する部分であれば、その施設で算定している加算について説明していました。
それ以外の料金については担当部署の範囲になることもありましたが、大切なのは分からないままにしないことです。
数万円、場合によってはそれ以上のお金を毎月支払い、本人がこれから生活する場所を決める契約です。
分からないことを質問するのは、細かい家族だからではありません。
納得して契約するために必要な確認です。
よくある質問
できる限り内容を確認することをおすすめします。
ただ、契約書や重要事項説明書には専門的な内容も多く、一度ですべて覚えるのは簡単ではありません。
特に、
- 毎月の料金
- 追加費用
- 通院対応
- 入院時の扱い
- 退去・契約解除条件
は、分からないところを契約前に質問してください。
必ずしもそうとは限りません。
介護保険自己負担分、医療費、薬代、日用品費、理美容費、通院付き添い費などが別途必要になる場合があります。
「うちの親の場合、全部含めて毎月いくらくらいになりますか?」
と確認しておくことをおすすめします。
施設によって異なります。
施設職員が送迎・付き添いまで行うところもあれば、家族対応を求められる場合もあります。
また、協力医療機関は無料でも、それ以外の医療機関への送迎・付き添いは有料という施設もあります。
対応の有無だけでなく料金まで契約前に確認してください。
入院しただけで必ず退去になるわけではありません。
ただし、入院期間や本人の状態、退院後に必要となる医療・介護、施設の対応体制、契約内容などによっては、それまでの施設での生活継続が難しくなる場合があります。
長期入院時の取り扱いや、施設側から契約解除となる条件を事前に確認しておきましょう。
「看取り対応」と「どのような状態になっても必ず住み続けられる」は同じ意味ではありません。
本人に必要な医療行為や精神面への対応などが施設の体制では難しくなる場合があります。
「何ができますか?」だけでなく、「どんな状態になると対応できませんか?」
まで確認することをおすすめします。
必ず住み続けられるとは限りません。
生活保護の利用可否は福祉事務所が判断します。
また、生活保護を利用することになった場合に現在の施設で生活を継続できるかについては、施設の料金設定や契約内容なども確認する必要があります。
将来的に生活保護を検討する可能性がある場合は、契約前にそのことを施設へ伝えて確認しておくことをおすすめします。
まとめ|「聞いてない」を防ぐために、契約前だからこそ聞いてほしい
老人ホームの契約説明は長時間になることがあります。
初めて聞く介護保険の話。
施設独自の料金。
通院のルール。
入院時の扱い。
退去条件。
これを一度聞いただけで、全部理解して覚えて帰る。
正直、簡単ではないと思います。
私自身、施設ケアマネとして働いていた頃、
「これって何のお金ですか?」
「そんな話、聞いていません」
という問い合わせを何度も経験しました。
だから、全部暗記してくださいとは言いません。
- 毎月、結局いくら払うのか
- 月額料金以外に何がかかるのか
- 通院・送迎・付き添いはいくらなのか
- 入院したら契約や居室はどうなるのか
- どんな状態になると施設では対応できなくなるのか
- 将来、支払いが難しくなった場合はどうなるのか
老人ホームは、本人にとってこれからの生活の場所です。
家族にとっても、決して安くないお金を毎月支払っていくことになります。
だから契約の日は、
「施設が決まったから、あとはサインするだけ」
にしないでください。
契約前だから聞けることがあります。契約前だから確認できることがあります。
分からなければ、
「もう一度説明してください」
でいいんです。
その一言が、入居してからの「こんなはずじゃなかった」を減らしてくれます。
この記事は、介護業界18年/介護福祉士/ケアマネジャー/施設ケアマネ経験/老人ホーム入居相談員経験をもとに、実際の相談事例や現場経験を交えながら執筆しています。
よっしーからひとこと
契約って、本当に長いんです(笑)。
説明する側は毎日のように扱っている内容でも、家族にとっては初めて聞くことばかり。
だから私は、家族が一度の説明ですべて理解できなくても仕方ないと思っています。
でも、分からないまま「はい、はい」と進めてしまうのはおすすめしません。
私が施設ケアマネをしていた頃、契約後になって料金や介護保険について説明することは何度もありました。
そして一番つらいのは、お金の認識違いだけではありません。
「この施設で最後までいられると思っていたのに」
となってしまうことです。
だから、
いくらかかるのか。
何をしてくれるのか。
何ができないのか。
どんなときに住み続けられなくなる可能性があるのか。
ここだけは遠慮せず聞いてください。
契約前に質問する家族を、私は面倒な家族だとは思いません。
むしろ、大切な家族の生活を決める契約なんだから、聞いて当然だと思っています。
老人ホームへ入居するまでの全体的な流れも確認しておきたい方はこちらです。
【監修・執筆】よっしー
介護福祉士/介護支援専門員(ケアマネジャー)
介護業界18年。介護職として10年以上の現場経験を持ち、施設ケアマネジャーとして約5年勤務。老人ホーム入居相談員として、本人・家族の施設探しや入居相談にも携わる。
介護現場・ケアマネ業務・老人ホーム相談の実務経験をもとに、制度だけでは見えにくい介護のリアルを、本人や家族の目線に立って分かりやすく発信しています。


