老人ホーム入居後に家族がやることは?施設に任せられること・家族の役割を経験者が解説
老人ホームへの入居が決まると、
「これで介護は施設に任せられる」
と、少し肩の荷が下りる家族もいると思います。
もちろん、自宅で介護していたときと比べれば、家族の負担が大きく減ることはあります。
でも、老人ホームに入居したら家族が何もしなくてよくなるとは限りません。
衣類の入れ替え。
足りない日用品の購入。
通院。
本人に合った福祉用具の準備。
必要な書類への対応。
施設によって違いはありますが、入居後も家族へお願いされることはあります。
反対に、
「そこまで施設にお願いできるの?」
というところまで対応してくれる施設もあります。
大切なのは、家族の役割は施設によって違うと知っておくことです。
「老人ホームなんだから、ここまでは当然やってくれるだろう」
と家族側だけで判断せず、入居前にその施設ではどこまで対応してくれるのか確認しておきましょう。
- 老人ホーム入居後に家族がやること
- 施設に任せられることと家族対応になること
- 衣類や日用品などで家族に頼まれやすいこと
- 家族はどのくらい面会や連絡に関わればいいのか
- 入居前に施設へ伝えておきたい家族の本音
- 老人ホーム入居後も家族がやることはある
- 福祉用具が必要になれば家族に相談することもある
- 書類への対応を家族にお願いされることもある
- 本人のお金は誰が管理する?
- 施設から家族へ連絡が来るのは普通のこと
- 家族はどのくらい面会に行けばいい?
- キーパーソン以外の家族が関わるときに気をつけたいこと
- 職員への差し入れは無理に持っていかなくていい
- 「施設に預けたんだから任せたい」は悪いことではない
- 施設から電話が多いと家族も疲れてしまうことがある
- 「こんなこと言ったら失礼かな」と遠慮しなくていい
- 結局、老人ホーム入居後に家族はどこまでやればいい?
- 入居前に「家族がやること」を確認しておこう
- 通院は特に入居前に確認してほしい
- 家族があまり面会に行けなくても続けられる施設を選ぶ
- 「何でもやります」と約束しなくていい
- 老人ホーム入居後の家族の役割でよくある質問
- まとめ|家族の役割は「入居してから」ではなく「入居前」に確認しよう
老人ホーム入居後も家族がやることはある
まず知っておいてほしいのは、老人ホームに入居しても家族の役割が完全になくなるわけではないということです。
ただし、
「家族はこれとこれを必ずやらなければならない」
という全国共通の一覧があるわけでもありません。
施設の種類や契約内容、本人の状態によって、施設に任せられる範囲や家族へお願いされることは変わります。
国の有料老人ホーム設置運営標準指導指針でも、施設と家族がまったく関わらなくなることを前提にはしていません。
つまり、
「施設に入居した=家族はもう関係ない」
ではありません。
一方で、家族が今までと同じように何でも介護し続けなければならないわけでもありません。
私が施設で働いていたとき、家族との話題によく上がったものの一つが衣類でした。
特に季節の変わり目です。
春や夏になれば薄手の服を持ってきてもらう。
秋や冬になれば厚手の服を持ってきてもらう。
逆に、使わなくなった季節の服を家族に持ち帰ってもらう。
こうした衣替えを家族へお願いすることはありました。
施設の居室には収納できる量にも限りがあります。
一年分の衣類を全部置いておけるとは限らないので、季節に合わせて家族に協力してもらうことがあるんですね。
入居直後は細かい物が足りなくなりやすい
入居時に持ち物を一通り準備していても、実際に生活が始まると、
「これも必要だった」
「この枚数では足りない」
という物が出てきます。
私が勤務していた施設でも、入居直後は不足している物を家族に伝えて、追加で購入してもらうことがありました。
これは施設が意地悪をしているわけではありません。
実際に生活してみないと分からないこともあります。
例えば衣類でも、着替える回数や洗濯の頻度によって必要な枚数は変わります。
本人の状態が変われば、それまで必要なかった物が必要になることもあります。
だから入居時に持ち物を完璧にそろえようとして、
「何を何枚買えばいいんだ」
と神経質になりすぎなくてもいいと思います。
まず施設から指定された物を準備して、生活が始まってから足りない物を追加する。
そのくらいに考えておいたほうが家族も楽です。
老人ホームへ持っていく物については、こちらの記事で詳しくまとめています。
老人ホームの持ち物リスト完全版|入居時に必要なもの・あると便利なものをケアマネが解説
福祉用具が必要になれば家族に相談することもある
老人ホームで生活しているうちに、本人の身体状態が変わることもあります。
今まで歩けていた人が歩行器を使うようになる。
車いすが必要になる。
今使っている物では身体に合わなくなる。
そんなこともあります。
私が勤務していた施設では、車いすや歩行器などが必要になった場合、施設のリハビリ担当者やケアマネジャーなどで本人の状態を見ながら検討していました。
施設にある物で対応できる場合もあります。
一方で、本人の身体状況に合う物が施設になければ、家族へ購入を相談することもありました。
ここで注意したいのは、老人ホームの種類によって介護保険サービスの使い方が違うことです。
「車いすが必要なら介護保険で借りればいい」
と家族だけで判断せず、まず施設へ相談してください。
書類への対応を家族にお願いされることもある
老人ホームへ入居すると、家族が対応する書類も出てきます。
介護保険に関係する書類。
施設との契約に関する書類。
本人の生活や介護サービスに関係する確認。
必要な手続きは本人の状態や施設によってさまざまです。
私が施設ケアマネとして働いていたときは、本人がケアプランの内容を確認して署名することが難しい場合などに、家族へ書類を郵送して確認してもらうこともありました。
ただし、ここで一つ注意があります。
家族が何でも本人の代わりに決める、という意味ではありません。
介護では本人の意向を確認しながら支援していくことが基本です。
本人の状態などによって、家族への確認や協力が必要になることがあると考えてください。
本人のお金は誰が管理する?
入居後の家族の役割を考えるうえで、お金の管理も確認しておきたいところです。
「老人ホームに入ったんだから、お金も施設が全部管理してくれる」
とは限りません。
国の有料老人ホーム設置運営標準指導指針では、金銭や預金の管理について原則が示されています。
施設が金銭を管理する場合についても、本人や身元引受人等への定期的な報告などを管理規程等で定めることが示されています。
つまり、お金についても、
「施設に入ったら全部お任せ」ではなく、誰がどこまで管理するのかを確認する
必要があります。
本人が管理するのか。
家族が管理するのか。
施設へ預ける仕組みがあるのか。
日用品などを購入した場合はどのように精算するのか。
こうした部分も施設によって違うので、契約時に確認しておくと安心です。
施設から家族へ連絡が来るのは普通のこと
老人ホームへ入居すると、施設から家族へ電話が来ることがあります。
事故。
受診。
入院。
本人の状態の変化。
契約や費用に関係すること。
こうした重要な場面では、家族への連絡が必要になることがあります。
国の標準指導指針でも、要介護者等については家族等への定期的な報告が示されています。
だから施設から連絡が来ること自体は、不自然なことではありません。
ただ、実際に家族の立場になると、
「どのくらいのことまで電話してほしいか」
は家庭によってかなり違うと思います。
私自身も施設で働いてきましたが、家族側の立場になると、この感覚はよく分かります。
義母が施設へ入居して間もないころ、身体にあった小さなイボについて施設から妻へ連絡が来たことがありました。
施設側としては初めて確認した身体の変化で、診療情報にも載っていなかったため、往診医や看護師としても確認しておきたかったのだと思います。
一方、義母本人は、
「昔からある」
と話していました。
家族側からすると、
「昔からある小さなイボなら、そこまで急いで電話しなくても……」
という気持ちにもなります。
ここは、
「施設が細かすぎる」
「家族がわがまま」
という話ではありません。
施設には施設の責任があります。
家族には家族の生活があります。
だからこそ、どの程度の情報共有を希望するのか、入居後にすり合わせていくことが大切です。
例えば、
「受診が必要なら連絡してください」
「入院の可能性がある場合は必ず連絡してください」
「急ぎではない日常の変化は、定期報告のときでも大丈夫です」
など、家族側の希望を伝えてみてもいいでしょう。
ただし、家族が「細かい連絡はいりません」と伝えれば、施設が必要な連絡までしなくてよくなるわけではありません。
特に事故については、国の標準指導指針でも家族等への速やかな連絡が示されています。
つまり、
家族が希望する日常的な情報共有と、施設として必要な連絡は分けて考える
ということです。
老人ホームで起こり得る事故や、事故が起きたときに家族が知っておきたいことはこちらでも詳しく解説しています。
老人ホームではどんな事故が起こる?転倒だけじゃない介護施設の事故と家族が知っておきたいこと
家族はどのくらい面会に行けばいい?
老人ホームへ親が入居すると、
「どのくらい面会に行ったほうがいいんだろう」
と悩む家族もいると思います。
毎週行ったほうがいいのか。
月に1回でもいいのか。
ほとんど行けなくても大丈夫なのか。
結論から言えば、「家族は月○回面会しなければならない」という一律の正解はありません。
仕事や子育てをしている家族もいます。
遠方に住んでいる家族もいます。
自分自身が高齢で、頻繁に施設まで行くのが難しい家族もいます。
本人と家族の関係だって、それぞれ違います。
だから、
「親を施設へ入れたんだから毎週行かなきゃ」
と、必要以上に自分を追い込まなくてもいいと私は思います。
国の有料老人ホーム設置運営標準指導指針でも、家族との関係について施設側に次のような考え方が示されています。
厚生労働省の「有料老人ホーム設置運営標準指導指針」で示されている内容です。
これは、家族に対して、
「必ず○日に1回面会に来なさい」
と求めているものではありません。
施設側にも、本人と家族とのつながりを大切にしながら生活を支えることが求められているということです。
ほとんど面会に来ない家族も珍しくない
私が施設で働いていたときも、家族との関わり方は本当にさまざまでした。
頻繁に面会へ来る家族もいれば、ほとんど来ない家族もいます。
キーパーソンになっている長男が、必要な連絡には対応するものの、普段はほとんど施設へ来ない。
一方で、キーパーソンではない長女や次女が頻繁に面会へ来る。
そんな家庭もありました。
だから、
「キーパーソンだから一番面会に来る」
とも限りません。
施設として大切なのは、必要なときに連絡が取れて、本人の生活について相談しなければならない場面で話ができることです。
毎週面会へ来ることだけが、家族としての役割ではありません。
老人ホームの面会時間や差し入れ、外出・外泊などについてはこちらでも詳しく解説しています。
老人ホームの面会ルール|時間・差し入れ・外出外泊で家族が知っておきたいこと
キーパーソン以外の家族が関わるときに気をつけたいこと
老人ホームでは、家族の中から主な連絡先となる人を決めていることがあります。
一般的に「キーパーソン」と呼ばれることがあります。
ただ、キーパーソンだけが本人を心配しているわけではありません。
兄弟姉妹それぞれに、
「母ちゃんにはこうしてあげたい」
「俺はこう思う」
という考えがあります。
それ自体は当然です。
問題になることがあるのは、家族それぞれが施設へ違う希望を伝えてしまう場合です。
例えば、
長男は「このままで大丈夫です」と言っている。
長女は「もっとこうしてください」と言っている。
次女からはまた別の希望が来る。
こうなると、施設側も誰と話を進めればいいのか分からなくなることがあります。
私が施設で働いていたときも、キーパーソンより頻繁に面会へ来て、本人のことをとても心配している兄弟姉妹はいました。
「兄に任せておくと何もしないから」
というような家族も、実際には珍しくありませんでした。
本人を思ってのことなので、悪いことではありません。
ただ、家族の意見がバラバラのまま施設へ伝わると、本人の支援にも影響することがあります。
だから重要なことを決めるときは、
できる範囲で家族の中でも話を共有しておく
ことをおすすめします。
特に、
受診。
入院。
介護方針。
看取り。
退去や転居。
費用に関すること。
こうした大きな判断が必要になる場面では、家族の意見が大きく違っていると話が進みにくくなることがあります。
職員への差し入れは無理に持っていかなくていい
面会へ行くとき、
「いつも母がお世話になっているから」
と職員へお菓子などを持ってきてくれる家族もいます。
私が施設で働いていたときもありました。
本人へ食べ物などを持ってきたついでに、
「これは職員さんで食べてください」
と差し入れをいただくこともあります。
正直に言えば、気持ちはうれしいです。
でも、職員としては受け取りにくいというのも本音です。
施設や会社によっては、利用者や家族からの贈り物を受け取らないルールを設けている場合もあります。
だから、
「いつもお世話になっているから何か持っていかなきゃ」
と考える必要はありません。
家族が差し入れを持ってくるかどうかで、本人への介護が変わるようなことがあってはいけません。
職員への感謝を伝えたいなら、
「いつもありがとうございます」
その一言だけでも十分です。
本人へ食べ物を差し入れる場合についても、施設のルールを確認してください。
糖尿病などで食事制限がある。
嚥下機能が低下している。
他の入居者との食べ物のやり取りを防ぐ必要がある。
こうした理由から、持ち込みできる物を決めている施設もあります。
「施設に預けたんだから任せたい」は悪いことではない
ここは少し本音で書きます。
老人ホームへ親を入居させた家族の中には、
「施設にお願いしたんだから、ある程度は任せたい」
と思っている人もいるでしょう。
私は、その考え自体は悪いことだと思いません。
むしろ、そのために老人ホームを選んだ家族だっていると思います。
在宅介護が限界になった。
仕事との両立ができなくなった。
夜間の介護で眠れなくなった。
認知症への対応が家族だけでは難しくなった。
さまざまな事情があって施設へ入居します。
それなのに入居後も、
「これをしてください」
「今度はこれをお願いします」
「また来てください」
と頻繁に家族の対応が必要になれば、
「何のために施設へお願いしたんだろう」
と思ってしまうこともあるでしょう。
もちろん、
「お金を払っているんだから家族は何もしない」
という意味ではありません。
家族にしか決められないこともあります。
施設だけでは対応できないこともあります。
契約上、家族対応になっていることもあります。
だから大切なのは、
「施設へ任せたい」と思うことではなく、どこまで任せられる施設なのかを確認せずに入居してしまうこと
だと思います。
施設から電話が多いと家族も疲れてしまうことがある
施設から電話が来ると、
「あれ?施設からだ。何かあった?」
とドキッとする家族も多いと思います。
事故なのか。
転倒したのか。
熱が出たのか。
病院へ行くのか。
入院なのか。
私自身も家族側の立場になって、この感覚はよく分かりました。
重要なことなら、もちろん連絡してほしい。
でも細かなことまで頻繁に電話が来るようになると、家族側も少しずつ疲れてしまうことがあります。
さらに、本人の行動について何度も連絡を受ければ、
「それも含めてお願いしたくて入居したんだけどな……」
と思う家族がいても不思議ではありません。
場合によっては、
「もしかして退去してほしいのかな?」
と不安になることだってあると思います。
ただし、ここでも施設側の事情を忘れてはいけません。
施設からすれば、
「なぜ家族へ知らせなかったのか」
というトラブルを避けなければならない場面があります。
国の標準指導指針でも、入居者の生活で必要な場合には身元引受人等へ連絡することが示されています。
これは厚生労働省の「有料老人ホーム設置運営標準指導指針」に示されている内容です。
だから、
施設が連絡すること自体を悪いと考えるのではなく、家族がどの程度の連絡を希望しているのかを伝えておく
ことが大切だと思います。
「こんなこと言ったら失礼かな」と遠慮しなくていい
そして、私が一番伝えたいのがここです。
老人ホームを見学したり契約したりするとき、本音を言えない家族は意外と多いと思います。
「これから親がお世話になるんだから」
「こんなこと聞いたら失礼かな」
「面倒な家族だと思われたくない」
「できるだけ協力しますと言っておいたほうがいいかな」
そんな気持ちになるのかもしれません。
でも、そこで遠慮してしまうと、入居してから、
「こんなに家族が呼ばれるとは思わなかった」
「通院も家族が行くの?」
「衣替えまで必要だったの?」
「こんなに頻繁に電話が来るとは思わなかった」
となることがあります。
そして、
「あのとき確認しておけばよかった」
となる。
私は、そちらのほうがもったいないと思います。
むしろ契約前だからこそ、
「平日の通院には行けません」
「頻繁な面会は難しいです」
「衣替えくらいならできます」
「仕事中は電話に出られないことがあります」
「日常の細かな変化は急ぎでなければまとめて教えてください」
と、家族ができること・できないことを正直に伝えていいんです。
有料老人ホームについては、国も入居契約書や重要事項説明書などについて、契約前に十分な説明を行うことを求めています。提供できるサービス、できないサービス、別料金になるサービスについて誤解が生じないよう説明することの重要性も、厚生労働省の検討資料で指摘されています。
厚生労働省では、有料老人ホームの重要事項説明書や標準指導指針を公開しています。
「これからお世話になるから言いにくい」
ではなく、
これから長くお世話になるかもしれないからこそ、最初に本音を伝える。
私はそのほうが、本人にとっても家族にとっても、施設にとってもいいと思います。
老人ホームの契約前に確認しておきたいことはこちらでもまとめています。
老人ホームの契約前に確認すべき10項目|追加費用・通院・退去条件まで経験者が解説
結局、老人ホーム入居後に家族はどこまでやればいい?
ここまで読んで、
「じゃあ結局、家族はどこまでやればいいの?」
と思った方もいるでしょう。
私の答えはシンプルです。
家族にしかできないことは対応する。でも、施設に任せられることまで無理して家族が抱え込まなくていい。
これでいいと思います。
例えば、
本人や家族でなければ判断できないこと。
契約や費用に関係すること。
入院などで家族の対応が必要になること。
施設から重要な説明を受けて判断すること。
こうした場面では、家族の関わりが必要になることがあります。
一方で、
日常の介護。
食事。
排泄。
入浴。
日々の見守り。
施設が提供すると契約したサービス。
こうした部分まで、
「家族なんだから自分もやらなきゃ」
と抱え込む必要はありません。
そもそも、老人ホームへ入居する理由は家庭によって違います。
在宅介護が限界だった家族もいます。
遠方で介護できない家族もいます。
仕事や子育てがある家族もいます。
家族自身が高齢ということもあります。
だから、
「毎週面会に行く家族が正解」でもなければ、「全部施設に任せる家族が正解」でもありません。
本人が安心して生活できて、家族も無理なく関わり続けられる。
その形を探せばいいと思います。
入居前に「家族がやること」を確認しておこう
家族の負担を減らすために一番大切なのは、入居してから確認するのではなく、入居前に確認しておくことです。
有料老人ホームでは、サービス内容や費用などについて重要事項説明書などで確認できます。
国の標準指導指針でも、契約前の説明についてルールが示されています。
厚生労働省では、有料老人ホームの標準指導指針と重要事項説明書の様式を公開しています。
でも、重要事項説明書を渡されたからといって、
書いてあることを眺めて終わりではもったいないです。
自分たちの生活に置き換えて聞いてください。
私ならこの7つを確認する
- 衣替えや衣類の補充は誰がする?
- 日用品が足りなくなったら誰が買う?
- 通院の付き添いは家族?施設?
- 施設職員に頼む場合は追加料金がかかる?
- 家族へ電話するのはどんな場合?
- 家族が対応しなければならない手続きは?
- 家族が遠方でも生活を続けられる?
特に最後は大事です。
施設見学へ行った日は、
「これくらいならできます」
と思うかもしれません。
でも老人ホームでの生活は、数か月で終わるとは限りません。
数年続くことだってあります。
その間に家族の仕事や生活が変わることもあります。
だから、
「今できるか」ではなく、「これが何年続いても無理なくできるか」
で考えてみてください。
通院は特に入居前に確認してほしい
家族の負担という意味で、特に確認してほしいのが病院への通院です。
老人ホームへ入居すれば、病院も全部施設が連れて行ってくれる。
そう思っていると、入居後に困ることがあります。
家族が付き添う施設。
施設職員が付き添ってくれる施設。
追加料金を払えば対応してくれる施設。
協力医療機関とそれ以外で対応が変わる施設。
さまざまです。
例えば家族が車で10分の場所に住んでいるなら、
「病院くらいなら自分が行こう」
という選択もできます。
でも家族が遠方なら、通院のたびに仕事を休んで施設まで行くのは大変です。
だから通院についても、
「家族が行けない場合はどうなりますか?」
まで聞いておきましょう。
老人ホームの通院付き添いについては、施設での実際の対応や費用も含めてこちらで詳しく解説しています。
老人ホームの通院は家族が付き添う?施設対応・費用・行けない場合を経験者が解説
家族があまり面会に行けなくても続けられる施設を選ぶ
私自身が親の老人ホームを選ぶなら、ここもかなり重視します。
家族が頻繁に面会へ行かなくても、本人の生活を安心して任せられるか。
もちろん親に会いたければ面会へ行けばいい。
一緒に外出したければ外出すればいい。
家族だからこそできることもあります。
でも、
「家族が頻繁に来ること」
を前提にしないと生活が成り立たない施設では、遠方の家族や仕事をしている家族には負担が大きくなります。
私なら見学や契約時に、
「仕事があるので頻繁には来られません」
「通院も毎回は対応できません」
「日用品の補充はどのようになりますか?」
と最初から伝えます。
これを言ったら施設に失礼かな。
入居を断られたらどうしよう。
そう思う家族もいるかもしれません。
でも、入居してから家族が無理を続けるほうが大変です。
できないことを隠して契約する必要はありません。
むしろ、
「うちの家族はここまでしかできません。それでも大丈夫ですか?」
と聞いてください。
それに対して施設が具体的に説明してくれれば、入居後の生活もイメージしやすくなります。
「何でもやります」と約束しなくていい
施設を探しているときの家族は、どうしても立場が弱いように感じてしまうことがあります。
「親を入れてもらうんだから」
「これからお世話になるんだから」
そう思って、
「何でも協力します」
と言いたくなるかもしれません。
でも、できないことまで約束する必要はありません。
家族が仕事をしているなら、
「平日は難しいです」
でいい。
遠方なら、
「すぐには行けません」
でいい。
頻繁な面会が難しければ、
「月に何度も来るのは難しいです」
でいい。
それを伝えたうえで、本人の生活を支えられる施設なのかを一緒に考えてもらう。
そのほうが、入居後にお互い困らないと思います。
老人ホームの契約前に確認したい項目についてはこちらでも詳しくまとめています。
老人ホームの契約前に確認すべき10項目|追加費用・通院・退去条件まで経験者が解説
老人ホーム入居後の家族の役割でよくある質問
何もしなくてよいとは限りません。衣類の入れ替えや日用品の準備、必要な書類への対応、通院などを家族へお願いする施設もあります。施設によって対応範囲が違うため、契約前に確認しておきましょう。
一律に決められた回数はありません。本人の希望や家族の生活、施設の面会ルールなどに合わせて考えて構いません。頻繁に行けない事情がある場合は、施設へあらかじめ伝えておくとよいでしょう。
施設によって異なります。私が勤務していた施設では、季節に合わせた衣類の持ち込みや不要になった衣類の持ち帰りを家族へお願いすることがありました。入居時に衣類の管理方法も確認しておくと安心です。
本人の状態や施設の方針によっては連絡が増えることがあります。事故や受診など必要な連絡もありますが、日常的な情報共有について希望がある場合は施設へ相談してみましょう。
家族が遠方だから一律に入居できないわけではありません。ただし、通院や衣類・日用品の補充など、家族対応になることが多い施設では負担が大きくなる可能性があります。「家族は頻繁に来られない」と施設探しの段階から伝えて確認しておきましょう。
相談すること自体に問題はありません。ただし、家族それぞれが違う希望を施設へ伝えると調整が難しくなる場合があります。重要な判断については、できる範囲で家族間でも情報や考えを共有しておくとよいでしょう。
まとめ|家族の役割は「入居してから」ではなく「入居前」に確認しよう
老人ホームへ入居したからといって、家族の役割がすべてなくなるわけではありません。
一方で、
入居後も家族が何でもやらなければならないわけでもありません。
施設によって、
衣類の入れ替え。
日用品の補充。
通院。
福祉用具。
書類への対応。
家族への連絡。
こうした対応は変わります。
だから施設を選ぶときは、料金や部屋だけを見るのではなく、
- 家族がやることは何か
- 施設へ任せられることは何か
- 追加料金で頼めることは何か
- どんなときに家族へ連絡が来るか
- 家族が遠方でも生活を続けられるか
ここまで確認してほしいと思います。
特に、
「これからお世話になるから、あまり細かいことを言わないほうがいいかな」
と遠慮する必要はありません。
むしろ逆です。
これから長くお世話になるかもしれないからこそ、本音を伝えてください。
「これはできます」
「これはできません」
それを最初に伝えておけば、施設側も家族の事情を踏まえて話ができます。
そして本人にとっても家族にとっても、無理なく続けられる施設を選びましょう。
老人ホームに親を入れたからといって、家族として冷たいわけではありません。
毎週面会に行けなくてもいいし、施設にお願いできることまで家族が全部背負わなくてもいいと私は思います。
大切なのは、本人が安心して暮らせること。そして家族も無理なく関わり続けられることです。
だから見学や契約のときこそ遠慮せず、「うちの家族はここまでしかできません」と本音で話してください。
あとになって「あのとき聞いておけばよかった」とならないためにも、それが施設選びでは大切だと思います。
【監修・執筆】よっしー
介護福祉士/介護支援専門員(ケアマネジャー)
介護業界18年。介護職として10年以上の現場経験を持ち、施設ケアマネジャーとして約5年勤務。老人ホーム入居相談員として、本人・家族の施設探しや入居相談にも携わる。
介護現場・ケアマネ業務・老人ホーム相談の実務経験をもとに、制度だけでは見えにくい介護のリアルを、本人や家族の目線に立って分かりやすく発信しています。



