認知症の進行段階とは?初期・中期・後期の変化と家族が知っておきたい対応方法
認知症について調べると、
「初期→中期→後期」
という進行段階を目にすることがあります。
もちろん、認知症の状態を理解するための一つの目安にはなります。
でも私は、施設ケアマネやグループホームの計画作成担当者などとして認知症の方と関わってきて、
「実際の認知症は、そんなにきれいに初期・中期・後期へ分けられない」
と感じています。
同じことを何度も聞くけれど、排せつは一人でできる人。
意思疎通が難しくなっているのに、入浴すると自分で身体を洗える人。
最近の出来事は忘れていても、昔の仕事や家族のことは鮮明に覚えている人。
一方で、それまで歩けていたのに、短期間で身体状態まで大きく変化した人もいました。
認知症の現れ方や経過は、一人ひとり違います。
だからこの記事では、「初期だからこの症状」「後期だからこうなる」と決めつけるのではなく、進行段階を一つの目安として紹介しながら、私が実際の介護現場で見てきた認知症の方の姿も交えて解説します。
- 認知症の初期・中期・後期で見られる変化の目安
- なぜ進行段階だけでは判断しにくいのか
- 本人が感じている不安や混乱
- 家族しか気づけない小さな変化の重要性
- 早めに相談した方がいい理由
- 認知症が進んだときの相談先
- 結論|「初期・中期・後期」より、今何に困っているかを見る
- 認知症の進行は「3段階できれいに進む」とは限らない
- 初期に見られる変化|「忘れる」より先に不安が強くなる人もいる
- 認知症は「困り切ってから」相談しなくていい
- 認知症が進むと「忘れる」だけではなく生活そのものに変化が出てくる
- 「ご飯を食べていない」は嘘をついているとは限らない
- 「帰らなくていいの?」には本人なりの理由があるかもしれない
- 怒る・歩き回る・拒否する|行動だけを見て「問題」と決めつけない
- 認知症が進んでも、昔の記憶や身についた動作が残ることがある
- 家族にとっての「重い」と専門職から見た状態は同じとは限らない
- 短期間で大きく状態が変わった方もいた|「認知症が進んだだけ」と決めつけない
- 「何期になったら相談する?」ではなく、家族が違和感を覚えたら相談していい
- 老人ホームを考えるタイミングも「中期になったら」ではない
- 認知症の人を「できなくなったこと」だけで見ない
- よくある質問
- まとめ|「何期?」より「今、何に困っている?」を見てほしい
結論|「初期・中期・後期」より、今何に困っているかを見る
最初に、この記事で一番伝えたいことからお話しします。
認知症について、
「うちの親は、もう中期でしょうか?」
「失禁するようになったから重度ですか?」
「まだ会話できるから初期ですよね?」
と、進行段階が気になるご家族もいると思います。
でも、認知症の症状や生活への影響には個人差があります。
原因となる病気によっても経過は異なりますし、同じ診断名だからといって全員が同じように変化するわけではありません。
だから、
- 何を忘れるようになったのか
- 一人でできなくなったことは何か
- 本人が何に不安を感じているのか
- 安全に生活できているのか
- 家族の介護負担がどこまで増えているのか
こうした実際の生活の変化を見ることが大切です。
私自身、介護現場で認知症の方と長く関わってきましたが、
「これは初期」
「ここから中期」
と、一本の線を引けるようなものではないと感じています。
認知症の進行は「3段階できれいに進む」とは限らない
分かりやすく説明するために、認知症の状態を「初期・中期・後期」などに分けて考えることがあります。
しかし、これはすべての認知症の方が同じ順番・同じ速度で進むという意味ではありません。
たとえば、記憶の面ではかなり難しくなっていても、長年続けてきた動作ができる方がいます。
反対に、会話はある程度できていても、排せつや服薬、金銭管理など生活の一部分で大きな支援が必要になる方もいます。
私が現場で関わった方でも、
意思疎通はかなり難しくなっているのに、入浴すると自分で身体を洗える。
そんな方がいました。
では、この人は初期なのか、中期なのか、後期なのか。
私は、そこだけを決めることにあまり意味はないと思っています。
大事なのは、その人に何が残っていて、何が難しくなっていて、どんな支援があれば生活できるのかを見ることです。
初期に見られる変化|「忘れる」より先に不安が強くなる人もいる
認知症の初期というと、
「同じことを何度も聞く」
「物を置いた場所を忘れる」
といった物忘れを想像する方が多いと思います。
もちろん、そうした変化が見られることもあります。
ただ、私が介護現場で関わった方の中では、もっと言葉にしにくい変化が見られることもありました。
それが、
「自分が分からなくなってきたような不安」
です。
本人自身も、
「何かがおかしい」
「ここにいていいのかな」
「自分は何をしていたんだろう」
とうまく説明できない。
でも、なんとなく落ち着かない。
施設内の廊下を何度も歩く。
座っても、また立ち上がる。
同じ場所を行ったり来たりする。
そんな姿を何度も見てきました。
- 同じ話や質問を繰り返すようになった
- 約束や予定を忘れることが増えた
- 物を探している時間が増えた
- 以前できていた家事や金銭管理で失敗が増えた
- なんとなく落ち着かない様子が増えた
- 本人が「最近おかしい」「分からなくなってきた」と不安を口にする
ただし、こうした変化があるからといって、それだけで認知症と判断することはできません。
別の病気や体調、薬、精神的な状態などが影響している可能性もあります。
「認知症だ」と家族だけで決めつけるのではなく、変化が続いたり日常生活に影響が出たりしているなら、医療機関や地域の相談窓口につなげることが大切です。
家族にしか分からない「いつもと違う」は軽く見ないでほしい
認知症の相談では、検査の点数や診断名ももちろん大切です。
でも私は、毎日一緒にいる家族だからこそ分かる違和感も、とても大切だと思っています。
「前はこんなこと言わなかった」
「最近、同じ質問が明らかに増えた」
「なんとなく様子がおかしい」
「今まで任せていたお金の管理が怪しくなってきた」
一つひとつを見ると、小さな変化かもしれません。
だから、
「年だから仕方ないかな」
と様子を見たくなる気持ちも分かります。
でも、相談した結果、認知症ではなかったならそれでもいい。
私は「家族しか分からない違和感」が出てきた段階で、一度誰かに相談してほしいと思っています。
厚生労働省も、本人や家族などが「もしかして認知症では」と感じたときの相談先として、地域包括支援センターなどを案内しています。
地域包括支援センターでは、保健・医療・介護に関する相談を受け、必要に応じて認知症疾患医療センターや認知症初期集中支援チームなどと連携して支援につなげています。
認知症は「困り切ってから」相談しなくていい
「まだ一人で生活できているから」
「本人が病院へ行きたがらないから」
「もう少し様子を見てから」
そう考えるご家族もいると思います。
でも、相談することと、すぐに施設へ入れることは別です。
厚生労働省では、認知症が疑われる人や認知症の人、その家族に早期に関わり、必要な医療・介護の導入や家族支援などを行う「認知症初期集中支援チーム」の仕組みも設けています。
つまり、
「もう家では無理です」
となってから初めて相談する必要はありません。
むしろ、
「最近ちょっとおかしいんだけど、どうしたらいい?」
くらいの段階から相談していいんです。
認知症が疑われる初期症状について、もう少し具体的に確認したい方はこちらも参考にしてください。
ケアマネとして伝えたいこと
私がこの記事で、
「早めに相談してください」
と書くのには理由があります。
認知症が何期なのかを決めるためではありません。
本人と家族が困り切る前に、使える選択肢を増やしておくためです。
医療につなぐ。
介護保険について相談する。
デイサービスなどを検討する。
家族以外に本人を見てくれる人を増やす。
今すぐ入居しなくても老人ホームの情報を集めておく。
できることはいくつもあります。
私自身、介護の現場では、
「もう少し早く誰かにつながっていれば、家族もここまで大変にならなかったかもしれない」
と感じるケースを見てきました。
だから、
初期なのか。
中期なのか。
後期なのか。
そこだけで悩まなくていい。
「前と何か違う」。家族がそう感じた時点で、それは相談する理由になります。
認知症が進むと「忘れる」だけではなく生活そのものに変化が出てくる
認知症が進んでくると、単純な物忘れだけでは説明できない変化が見られることがあります。
私が介護現場で関わってきた方でも、
- 失禁が増えてくる
- 食事をしたこと自体を忘れる
- トイレへ行ったことを覚えていない
- 自分が今いる場所や状況が分からなくなる
- 「帰らなくていいの?」と何度も確認する
といった変化が見られることがありました。
ここまで来ると、ご家族からすれば、
「物忘れが増えた」
という話ではなくなってきます。
食事。
排せつ。
服薬。
外出。
夜間の見守り。
一つひとつの日常生活に、少しずつ支援が必要になってきます。
「ご飯を食べていない」は嘘をついているとは限らない
認知症の方との生活で、ご家族が戸惑いやすいことの一つが食事に関する変化です。
たとえば、
「さっきご飯食べたでしょ」
と言っても、
本人は、
「食べてないよ」
と言う。
家族からすると、
「ちゃんと食べたじゃない」
「なんでそんなことを言うの?」
と思ってしまうかもしれません。
でも、本人にとっては食べたという出来事そのものが記憶に残っていないことがあります。
私が介護現場で関わった方でも、食事をしたことが分からなくなっている方はいました。
夜中にせんべいを全部食べて「無くなっている」と言った方もいた
今でも覚えている方がいます。
その方は、自分でせんべいを持っていました。
夜間、そのせんべいを全部開けて食べてしまったことがありました。
ところが、その後、
「せんべいが無くなっているんだけど……」
という話になった。
本人は、自分で食べたことを覚えていなかったんです。
こういう場面だけを見ると、
「また食べようとしている」
「食べ過ぎだ」
と思ってしまうかもしれません。
でも、本人の中では、
「自分が全部食べた」
という記憶そのものが抜けている可能性があります。
食事量や食べ方の変化には、認知症だけでなく体調や薬、ほかの病気などが関係することもあります。
そのため、
「認知症だから食べる量が増えた」
「満腹感が分からなくなったからだ」
と家族だけで原因を決めつけるのではなく、急な変化や健康面の心配があれば医療職へ相談してください。
「帰らなくていいの?」には本人なりの理由があるかもしれない
介護施設で認知症の方と関わっていると、
「私、帰らなくていいの?」
「そろそろ帰らないと」
という言葉を聞くことがあります。
家族や職員からすれば、
「ここが今の家ですよ」
となります。
でも、本人が思い浮かべている「家」が、現在の自宅とは限りません。
昔住んでいた家。
子育てをしていた頃の家。
両親と暮らしていた家。
本人の記憶の中では、もっと昔の時間を生きていることもあります。
だから私は、
「帰る必要ないですよ」
と事実だけを伝えれば、それですべて解決するとは思っていません。
現在の国の認知症施策でも、認知症の人を「何も分からない人」として扱うのではなく、本人の意思を尊重し、その人が持っている能力を生かしながら生活できるよう支える考え方が重視されています。
参考:厚生労働省|認知症の人の日常生活・社会生活における意思決定支援ガイドライン
怒る・歩き回る・拒否する|行動だけを見て「問題」と決めつけない
認知症では、記憶障害などの認知機能の低下だけではなく、
- 落ち着かず歩き回る
- 怒りっぽくなる
- 介護を嫌がる
- 不安が強くなる
- 昼夜が逆転する
- 「物を盗られた」などと訴える
といった行動や心理面の変化が見られることがあります。
こうした症状は行動・心理症状(BPSD)と呼ばれます。
ただし、すべての認知症の方に同じ症状が現れるわけではありません。
また、目の前に見えている「行動」だけでは、その理由までは分かりません。
たとえば廊下を何度も歩いている方を見れば、
「徘徊している」
と表現することはできます。
でも本人は、
「家へ帰らないと」
「仕事へ行かないと」
「何かしなければいけない」
と考えて歩いているのかもしれません。
あるいは、本人自身もうまく説明できない不安や落ち着かなさがあるのかもしれません。
行動には、その人なりの理由や背景が隠れていることがあります。
「最近怒りっぽくなった=性格が変わった」とも限らない
私が施設ケアマネとして働いていた頃、
「最近、すごく怒りっぽくなった」
という家族からの相談もありました。
認知症になると、
「性格まで変わってしまった」
と思うご家族もいます。
でも、
自分が今どこにいるのか分からない。
何をしようとしていたのか分からない。
知らない人から突然身体を触られる。
「お風呂に入りましょう」と言われても、なぜ入らなければいけないのか理解できない。
もし自分がそんな状況になったら、不安になったり怒ったりすることもあると思います。
- 本人は何をしようとしているのか
- 怖い・痛い・不快と感じていないか
- 眠れているか
- 体調に変化はないか
- 周囲の環境が急に変わっていないか
- 本人の生活歴や習慣と関係していないか
もちろん、暴力や外へ出てしまうなど、本人や周囲の安全に関わる場合には、家族だけで対応し続ける必要はありません。
ケアマネジャーや医療機関などへ相談し、対応方法を一緒に考えてください。
認知症が進んでも、昔の記憶や身についた動作が残ることがある
認知症について、
「最後には全部忘れてしまう」
というイメージを持っている方もいるかもしれません。
でも、私が実際に認知症の方と関わってきた中では、最近の出来事は分からなくなっていても、昔の記憶が残っている方はいました。
たとえば私を見て、
「あなた、私のいとこの○○ちゃんでしょ?」
と言う。
もちろん私は、その方のいとこではありません(笑)。
でも本人の中には、昔の大切な人の記憶が残っている。
また別の方では、
「早く帰って現場に行かないと」
と話すこともありました。
その方にとって「仕事へ行く」という記憶は、それだけ長く人生の中に残っていたのかもしれません。
会話が難しくても、自分で身体を洗える人もいた
これも、私が「初期・中期・後期だけでは分けにくい」と感じる理由です。
意思疎通がかなり難しくなっている。
質問をしても、うまく答えられない。
だから一見すると、
「かなり認知症が進んでいる」
ように見えます。
ところが入浴すると、自分で身体を洗うことができる。
長年繰り返してきた動作が残っているんです。
だから、
「会話ができないから、何もできない」
ではありません。
反対に、
「会話ができるから、まだ何でも一人でできる」
とも限りません。
2024年に施行された「共生社会の実現を推進するための認知症基本法」でも、認知症の人が尊厳を保持しながら希望を持って暮らし、自らの意思によって日常生活・社会生活を営めるようにすることが基本理念として示されています。
家族にとっての「重い」と専門職から見た状態は同じとは限らない
私は、ここもすごく大切だと思っています。
認知症の進行について調べて、
「うちはまだ初期だから大丈夫」
「まだ重度ではないから家で見なければ」
と考える必要はありません。
たとえば、失禁が始まったとします。
介護職から見れば、
「まだできることはたくさんある」
と感じる状態かもしれません。
でも、自宅で毎日のように失禁への対応をしている家族からすればどうでしょう。
着替え。
洗濯。
掃除。
寝具交換。
夜間の対応。
それだけでも大きな介護負担になります。
反対に、意思疎通が難しくなっている人でも、自分で身体を洗えることがある。
だから、
「初期・中期・後期のどこに当てはまるか」だけで、家族が介護を続けられるかどうかは判断できません。
見るべきなのは、
- 本人が安全に生活できているか
- 本人が困っていることは何か
- どこまで一人でできるのか
- どんな支援があれば生活できるのか
- 家族の負担がどこまで増えているのか
だと私は思います。
認知症の方が入居できる老人ホームや、施設ごとの違いを知りたい方はこちらも参考にしてください。
短期間で大きく状態が変わった方もいた|「認知症が進んだだけ」と決めつけない
認知症は、一人ひとり経過が違います。
私自身、介護現場で、
「こんなに短期間で状態が変わるのか」
と驚いたことがあります。
これは、私が介護付き有料老人ホームで関わった方の実例です。
その方は、もともと高い場所で作業をする仕事をしていたそうです。
あるとき、自宅を昔の職場と勘違いしたのか、自宅の2階から外へ出ようとして転落してしまいました。
幸い大きなけがには至らず、打撲で済んだと聞いています。
その後、介護付き有料老人ホームへ入居されました。
入居した頃は廊下を歩いていたのに、約1か月後には歩けなくなった
入居当初、その方は車いすでの対応になっていました。
ところが、車いすから立ち上がって廊下を歩いてしまうことがあり、職員としては転倒にも注意しながら見守る必要がありました。
それが、私の記憶では約1か月後。
今度は自分で歩くことが難しくなっていきました。
さらに言葉も聞き取りにくくなり、最終的には寝たきりに近い状態になりました。
その施設では看取りまで対応するケースではなかったため、ご家族とも話し合い、最終的には入院となりました。
私は当時、
「認知症って、こんなに早く状態が変わることもあるのか」
と感じました。
ただ、今この記事を書くうえで強調しておきたいことがあります。
急激な状態変化を、すべて「認知症が進行したから」と決めつけないでください。
認知症の方では、せん妄が重なったり、身体疾患や薬、体調、環境の変化などが影響したりすることがあります。
特に、
- 急に会話がかみ合わなくなった
- 急に歩けなくなった
- 急に食べなくなった
- 急にぼんやりするようになった
- 突然、落ち着きがなくなった
など、これまでと明らかに違う変化が現れた場合は、
「認知症だから仕方ない」
で終わらせず、医療職へ相談することが大切です。
厚生労働省の資料でも、認知症の症状が急速に悪化した場合には、せん妄の有無を見分けることが重要とされています。
「何期になったら相談する?」ではなく、家族が違和感を覚えたら相談していい
ここまで初期・中期・後期の目安や、私が実際に関わった方の話をしてきました。
では、
「結局、いつ相談すればいいの?」
という話です。
私の答えはシンプルです。
家族が「以前と何か違う」と感じたら、その段階で相談していいと思います。
認知症の状態がどこまで進んだら相談する、という線引きをする必要はありません。
たとえば、
- 同じ質問を何度もするようになった
- 食事をしたことを忘れるようになった
- 薬の管理が難しくなってきた
- 失禁が増えてきた
- 外出すると帰れなくなる心配が出てきた
- 以前より怒ったり不安になったりすることが増えた
- 一人で生活させることに家族が不安を感じ始めた
- 介護する家族が疲れてきた
この時点で、
「まだ軽いから相談するほどじゃない」
と考えなくて大丈夫です。
厚生労働省も、本人や家族などが「もしかして認知症では」と感じたときや、介護に悩んだときの相談先として、地域包括支援センター、かかりつけ医、認知症疾患医療センターなどを案内しています。
ケアマネだけじゃなく、最初は誰かにつながればいい
私としては、
「最初から完璧な相談先を探さなくてもいい」
と思っています。
かかりつけ医でもいい。
地域包括支援センターでもいい。
すでに介護保険を利用しているなら担当ケアマネでもいい。
大切なのは、家族だけで抱え込まないことです。
地域包括支援センターでは、保健・医療・介護に関する相談を受け、必要に応じて認知症疾患医療センターや認知症初期集中支援チームなどの関係機関と連携しながら、必要な支援につなげています。
老人ホームを考えるタイミングも「中期になったら」ではない
認知症が進んでくると、
「そろそろ老人ホームを考えた方がいいでしょうか?」
という問題も出てきます。
ここも私は、
「中期になったら施設」
「失禁が始まったら施設」
と症状だけで決めるものではないと思っています。
同じ失禁でも、
家族が無理なく対応できている家庭。
一人暮らしで誰も対応できない家庭。
老老介護で、介護する側にも持病がある家庭。
状況はまったく違います。
だから見るべきなのは、
- 本人が自宅で安全に暮らせているか
- 一人になる時間に大きな危険がないか
- 夜間も家族の対応が続いていないか
- 食事・服薬・排せつなどの管理が難しくなっていないか
- 外へ出たときに帰れなくなる危険がないか
- 在宅サービスを利用しても生活の維持が難しくなっていないか
- 介護する家族の身体や心が限界に近づいていないか
だと思います。
老人ホームへ入ることは、
「家族が介護を諦めた」
という意味ではありません。
自宅での生活を続ける。
介護サービスを増やす。
ショートステイを利用する。
グループホームなどを検討する。
介護付き有料老人ホームを探す。
その家庭によって選択肢は違います。
施設を探し始めるのは、入居すると決めてからじゃなくていい
私が老人ホーム入居相談員をしていた頃にも、
「もう自宅では無理です。すぐ入れるところを探してください」
という相談はありました。
もちろん、そこから探すこともできます。
でも急げば急ぐほど、
「空いている施設の中から選ぶ」
ことになりやすい。
本人に合う施設。
家族が通いやすい施設。
予算に合う施設。
認知症への対応体制が合う施設。
こうした条件を比較する時間が取れなくなることがあります。
だから、
「まだ自宅で暮らせる。でも、この先は少し心配」くらいから情報収集を始めても早すぎるとは思いません。
見学したから入居しなければならないわけでもありません。
資料を取り寄せたから契約する必要もありません。
本人や家族が選べるうちに、
「こういう場所もあるんだ」
と知っておくだけでも違います。
認知症の人を「できなくなったこと」だけで見ない
認知症が進むと、確かにできないことは増えていくことがあります。
食べたことを忘れる。
トイレへ行ったことを忘れる。
家族の名前が出てこない。
自分がいる場所が分からなくなる。
歩くことや会話が難しくなる方もいます。
でも、先の項目でもお伝えしたように、
最近の出来事は忘れていても、昔の仕事を覚えている。
意思疎通が難しくても、自分で身体を洗える。
そんな方も実際にいました。
現在の認知症施策でも、認知症の人を単に「支えられる側」として見るのではなく、本人の意思や個性、能力を尊重しながら共に暮らしていく考え方が重視されています。
「共生社会の実現を推進するための認知症基本法」では、認知症の人が尊厳を保持しながら希望を持って暮らし、本人の意向を尊重しながら必要な保健医療・福祉サービスを切れ目なく提供することなどが基本理念として示されています。
参考:厚生労働省|共生社会の実現を推進するための認知症基本法
よくある質問
必ずしも、すべての方が同じ症状・同じ速度で進むわけではありません。
原因となる病気や身体状態、生活環境などによっても経過は異なります。
この記事で紹介した初期・中期・後期は、あくまで状態を理解するための目安として考えてください。
「今どの段階か」だけでなく、本人と家族が今何に困っているのかを見ることが大切です。
急な状態変化を、認知症の進行だけが原因だと決めつけないでください。
認知症の方では、せん妄が重なったり、身体疾患や薬、体調などが影響したりすることがあります。
「昨日までと明らかに違う」など急激な変化がある場合は、医療職へ相談してください。
同じ質問を繰り返すことは認知症で見られることがありますが、それだけで認知症と診断することはできません。
以前と比べて明らかな変化が続いていたり、生活に支障が出たりしている場合は、かかりつけ医や地域包括支援センターなどへ相談しましょう。
食事をしたという出来事そのものを覚えていない場合があります。
本人が本当に覚えていなければ、強く否定しても納得できず、かえって不安や言い争いにつながることがあります。
ただし、食事量や食行動が急に変わった場合には、体調や薬、ほかの病気などが関係している可能性もあるため、必要に応じて医療職へ相談してください。
必ずしもすぐに入居する必要はありません。
介護保険サービスなどを利用しながら、自宅で生活を続ける方もいます。
一方で、本人の安全確保が難しくなったり、在宅サービスを利用しても生活の維持が難しくなったり、家族の介護負担が大きくなった場合には、施設入居も選択肢になります。
「中期になったら」ではなく、本人と家族の生活状況を見ながら考えてください。
かかりつけ医や地域包括支援センターなどへ相談できます。
すでに介護保険サービスを利用している場合は、担当ケアマネジャーへ相談する方法もあります。
地域包括支援センターでは、相談内容に応じて医療・介護などの必要な支援につなげています。
まとめ|「何期?」より「今、何に困っている?」を見てほしい
認知症について調べると、
初期。
中期。
後期。
という言葉がたくさん出てきます。
もちろん、認知症の状態を理解するための目安にはなります。
でも、私が介護現場で多くの認知症の方と関わってきて感じるのは、
現実の認知症は、教科書のようにきれいに3段階へ分けられるものではないということです。
失禁が始まっても会話はできる人。
会話が難しくても、自分で身体を洗える人。
最近の出来事は忘れていても、何十年も前の仕事を覚えている人。
同じ認知症でも、その姿は一人ひとり違います。
だから、
- 初期・中期・後期は一つの目安として考える
- できないことだけで本人を見ない
- 急激な変化をすべて認知症の進行だと決めつけない
- 家族しか分からない「いつもと違う」を大切にする
- 本人だけでなく家族が困っていることも相談していい
- 老人ホームは家族が限界になる前から情報収集していい
「まだ大丈夫かな?」
そう思っている段階でも相談して構いません。
厚生労働省も、認知症が疑われる症状に気づいたときや介護に悩んだときの相談先として、地域包括支援センターや医療機関などを案内しています。
相談したから、すぐ老人ホームへ入るわけではありません。
相談する目的は、
本人と家族がこれからも生活していくための選択肢を増やすこと。
私はそう考えています。
認知症の方と長く関わってきましたが、この記事を書いていて改めて思うのは、
「初期・中期・後期って、実際の現場ではそんなにきれいに分けられないよな」
ということです。
失禁が始まったら「重い」と感じる家族もいる。
職員から見れば、まだ自分でできることがたくさんあると感じることもある。
意思疎通が難しいのに、お風呂へ入れば自分で身体を洗える人もいました。
だから私は、
「うちの親は何期ですか?」
だけで悩んでほしくありません。
それより、
「最近、何ができなくなった?」
「本人は何に困っている?」
「家族はどこが大変?」
を見てほしい。
そして、家族にしか分からない小さな違和感があったら、誰かに話してみてください。
相談するのに「まだ早い」はありません。
困り切ってから一人で全部背負うより、早いうちから誰かと一緒に考えた方が、本人にも家族にも選択肢を残せると思っています。
【監修・執筆】よっしー
介護福祉士/介護支援専門員(ケアマネジャー)
介護業界18年。介護職として10年以上の現場経験を持ち、施設ケアマネジャーとして約5年勤務。老人ホーム入居相談員として、本人・家族の施設探しや入居相談にも携わる。
介護現場・ケアマネ業務・老人ホーム相談の実務経験をもとに、制度だけでは見えにくい介護のリアルを、本人や家族の目線に立って分かりやすく発信しています。


