ケアマネは自分の親を担当できる?家族を担当する注意点をケアマネが解説
ケアマネジャー(介護支援専門員)として働いている人にとって、
「自分の親に介護が必要になったら、自分で担当できるのか?」
は意外と気になる問題ではないでしょうか。
私自身、介護業界で18年働き、施設ケアマネとして約5年間勤務してきました。
ただし、自分の親をケアマネとして担当した経験はありません。
そのうえで先に結論を言うと、2026年10月時点で厚生労働省の居宅介護支援の運営基準を確認した限りでは、親子などの親族だからという理由だけで、ケアマネが担当することを一律に禁止する規定は確認できません。
とはいえ、
制度上できるかどうかと、実際に担当したほうがいいかどうかは別の話です。
私は現場で、介護職や医療職の家族ともたくさん関わってきました。
また、同じ施設で働く職員の親が入居しているケースや、施設ケアマネ自身の母親が同じ施設へ入居していたケースも見てきました。
そうした経験から思うのは、
家族だから分かることがある一方で、家族だからこそ客観的に見られなくなることもある
ということです。
この記事では制度だけではなく、私が現場で見てきた経験も交えながら、「ケアマネは自分の親を担当できるのか」を考えていきます。
- ケアマネは自分の親を担当できるのか
- 親を担当するメリット
- 家族だから難しくなること
- 同じ施設で親を見る難しさ
- 私なら自分の親を担当するのか
ケアマネは自分の親を担当できる?
厚生労働省の「指定居宅介護支援等の事業の人員及び運営に関する基準」では、ケアマネが利用者の状況を把握し、本人や家族へ面接したうえで、適切なケアプランを作成することなどが定められています。
厚生労働省「指定居宅介護支援等の事業の人員及び運営に関する基準」
私が確認した限りでは、
「親族だから担当してはいけない」
という一律の禁止規定は確認できません。
そのため、勤務する居宅介護支援事業所で親を利用者として受け入れ、自分が担当ケアマネになること自体は考えられます。
ただし、実際に担当する場合は、
- 勤務する事業所の方針
- 管理者の判断
- 保険者の運用
- 親本人の希望
- 他のサービス事業所との関係
なども確認しておいたほうがいいでしょう。
制度上できるからといって、自分だけで「じゃあ俺が担当する」と決める話ではありません。
私はこの違いが一番大切だと思っています。
自分の親を担当するメリットはある
自分の親を担当することには、もちろんメリットもあります。
一番大きいのは、
これまでの生活をよく知っていること
でしょう。
ケアマネはアセスメントを行い、本人がどのような生活をしてきたのか、何を大切にしているのか、現在何に困っているのかを確認します。
でも、何十年もの生活歴を短時間の面談だけですべて知ることはできません。
家族なら、
- 昔から好きだった食べ物
- 嫌いなこと
- どんな生活をしてきたか
- どんな性格なのか
- 何を言えば安心するのか
- 調子が悪いときに普段と何が違うのか
など、専門職には分からない情報を持っています。
例えば、認知症などで落ち着かない状態になったとしても、
「この話をすると安心する」
「この食べ物なら食べてくれる」
「こう声をかけると落ち着きやすい」
といったことは、長く一緒に生活してきた家族だから分かる場合があります。
- 生活歴を知っている
- 本人の好みを知っている
- 普段との違いに気づきやすい
- 本人の本音を知っていることがある
ただし、ここで注意したいことがあります。
本人のことをよく知っていることと、ケアマネとして客観的に判断できることは同じではありません。
ケアマネでも家族になると客観的に見るのは難しい
これは、自分だったらどうなるかを考えるとよく分かります。
私自身、自分の親を担当したら、
絶対に多少はひいき目で見ると思います。
介護の仕事をしていると、本人と家族の希望が食い違う場面は珍しくありません。
例えば、
「まだ自宅で暮らしたい」
という本人に対して、
「もう施設へ入ってほしい」
という家族。
逆に、本人の介護量が増えていても、
「まだ家で大丈夫」
と考える家族もいます。
家族には、それまで何十年と続いてきた関係があります。
親子関係が良かった人もいれば、そうではなかった人もいる。
介護が始まって急に関係が変わるわけではありません。
私がこれまで家族を見てきて感じるのは、極端に言えば、
心配するあまり関わりすぎる方向か、専門職へ任せきりになる方向へ振れることがある
ということです。
もちろん、すべての家族がそうだという意味ではありません。
ただ、自分の親だからこそ冷静になれなくなる場面はあると思います。
資格を持っているからといって、家族関係までなくなるわけではありません。
介護を知っている家族ほど細かくなることもある
私は施設で、家族が医師というケースを意外と多く経験しました。
ただ、私が関わった医師のご家族の場合、
「医師だから施設のやり方に細かく口を出してくる」
ということは、それほどありませんでした。
一方で印象に残っているのが、介護経験の長い娘さんや保健師など、介護や福祉に近い仕事をしている家族です。
細かいところまでよく分かっている分、
「これはどうなっていますか?」
「この対応はどうなんですか?」
と指摘を受けることもありました。
もちろん、職種だけで家族をひとくくりにはできません。
あくまで私が実際に関わったケースの話です。
ただ、介護の知識があるほど、
「自分ならこうする」
という考えを持ちやすいことはあると思います。
老人ホームの入居相談員をしていたときにも、介護職の家族から相談を受けることがありました。
最初は知識をかなり細かく話されて、
「なかなか詳しい人だな」
と思ったこともあります。
でも、介護現場の「あるある」を話しているうちに距離が縮まり、そこから信頼関係ができたこともありました。
中には、自分でかなり調べてから相談に来る同業者もいました。
その人たちは何も知らないわけではありません。
むしろ、
「自分が調べたことが合っているのか、誰かに答え合わせしてほしい」
という感じでした。
調べすぎて、逆に何を選べばいいのか分からなくなっていた介護福祉士の家族もいました。
これは自分の親を担当するケアマネにも似ていると思います。
知識があることは強みです。
でも、知識があるからこそ、自分一人で抱え込む必要はありません。
同じ施設で親を担当するのは職員側もやりにくい
私が特に難しいと思うのが、
施設ケアマネとして、自分が働く施設へ親を入居させるケース
です。
昔働いていた特定施設で、ケアマネの母親が同じ施設に入居していたことがありました。
ケアマネ本人は当然、母親のことが気になります。
一方で、介護する職員側からすると、
同僚でありケアマネでもある人の親を介助する
ことになります。
これは結構やりづらいです。
ちょっとした対応でも、
「これで大丈夫かな」
「見られているかな」
と意識してしまう。
その母親は最終的に、同じ法人の別施設へ転居しました。
後になって、そのケアマネ本人も、
「施設ケアマネとして同じ施設で親を見るもんじゃないな」
というようなことを話していました。
別の職場では、介護職ではなく清掃などを担当する職員の母親が入居していたケースもあります。
その場合でも、やはり職員側は多少気を使います。
まして担当ケアマネが実の子どもとなれば、介護職員はさらに意識するでしょう。
ここは制度だけ見ていても分かりにくい部分だと思います。
現場から情報をもらうこともケアマネの大切な仕事
ケアマネだからといって、一人ですべて分かるわけではありません。
私は施設ケアマネをしていた頃も、できるだけ現場へ顔を出すようにしていました。
ある利用者さんは、入居した当初は排泄も自立していて、失敗もほとんどありませんでした。
見た目には大きな変化がない。
ところが、しばらくすると失禁が少しずつ増えてきました。
現場職員から、
「リハビリパンツだけでも家族に購入をお願いしてもらえませんか?」
と相談されたことがあります。
現場に入っている職員だから気づける変化です。
ケアマネが机の上でケアプランだけ見ていても分からないことはたくさんあります。
だから私は、
分からなければ現場に聞けばいいし、自分で確認できることなら本人を見に行けばいい
と思っています。
自分の親を担当する場合も同じです。
家族だから何でも知っていると思わず、
「デイサービスではどうですか?」
「訪問介護のときはどうですか?」
「最近何か変わりましたか?」
と、他の専門職から情報をもらうことが大切です。
私なら居宅では担当してみたい。でも施設ではやらない
では、もし私の親に介護が必要になったらどうするか。
これはかなりはっきりしています。
居宅ケアマネなら、一度は自分で担当してみたいです。
親が自宅で生活していて、デイサービスや訪問介護、福祉用具などを利用するのであれば、自分でケアマネジメントしてみたいと思います。
ただし、その場合はサービス事業所へ、
「俺が息子だからって忖度しなくていいからね」
と最初に伝えると思います。
良くないことは良くない。
できていないことはできていない。
普段と違うことがあれば、そのまま教えてほしい。
それくらいの距離感で関わりたいです。
一方で、
施設ケアマネとして、自分が働く施設へ親を入居させて担当するのは私はやりたくありません。
現場兼務なら、なおさら嫌です。
親の入浴介助や排泄介助を自分でしたいとも思いません。
そして何より、
自分の親のことで他の職員を困らせたくありません。
- 居宅なら担当してみたい
- 他事業所には忖度しないよう伝える
- 同じ施設では担当したくない
- 家族とケアマネの役割を分けたい
これは制度上の正解ではありません。
あくまで、介護現場と施設ケアマネを経験してきた私自身の考えです。
自分で担当しないのも立派な選択肢
ケアマネ資格を持っているからといって、
「自分の親くらい自分で担当しなければ」
と考える必要はありません。
別のケアマネへ任せて、自分は家族として関わる方法もあります。
むしろそのほうが、
- 第三者の目で親を見てもらえる
- 家族として本人の希望を伝えられる
- サービス事業所が意見を言いやすい
- 自分がケアマネ役と家族役を両方背負わなくて済む
というメリットがあります。
介護の専門職ほど、
「自分で何とかできる」
と思いがちかもしれません。
でも私は、老人ホーム入居相談員として同業者の相談を受けて、
知識がある人でも第三者へ相談したいときはある
ということを実際に見てきました。
自分で調べて、自分で考えて、それでも最後に誰かへ、
「これで合ってますか?」
と聞きたい。
それは全然おかしいことではありません。
ケアマネを選ぶときに何を見ればいいのかはこちらで詳しく解説しています。
ケアマネの選び方|探し方・良いケアマネジャーを見極める7つのポイント
自分でケアプランを作る「自己作成」とは別の話
ここで混同しやすいのが、
ケアプランの自己作成(セルフケアプラン)
です。
ケアマネと契約せず、本人や家族自身がケアプランを作成する方法もあります。
埼玉県も、ケアプランを自分自身で作成し、市町村へ提出して確認を受ける方法を案内しています。
ただし、
「ケアマネとして勤務している子どもが、勤務先の利用者として親を担当すること」
と、
「本人や家族がケアプランを自己作成すること」
は別の話です。
自己作成では、サービス事業所との調整や毎月の手続きなども必要になります。
さいたま市も、自己作成は可能としながら、連絡調整など作成者の負担が大きいと案内しています。
「資格があるから自分でケアプランを書けばいい」というほど単純なものではありません。
後輩ケアマネから相談されたらどう答える?
もし後輩のケアマネから、
「自分の親を自分で担当しようと思うんですけど、どう思います?」
と相談されたら、私はこう答えると思います。
居宅なら、やってみてもいいんじゃない。
ただし、
「自分の親だから」とサービス事業所へ無理を言わない。
周囲が気を使いすぎないようにする。
家族としての気持ちと、ケアマネとしての判断が混ざっていないか、ときどき振り返る。
そのくらいは意識したほうがいいと思います。
逆に、施設ケアマネとして同じ施設で親を担当すると言われたら、
私はあまり勧めません。
現場職員が気を使うことを知っているからです。
ただし、親本人が、
「息子や娘が働いている施設だから、そこへ入りたい」
と希望しているなら話は別です。
そのときは、
「親を心配させないように、しっかり面倒見てあげな」
と言うと思います。
とはいえ、自分自身が逆の立場になったら……
私はやっぱり同じ施設は嫌ですね(笑)
ケアマネと家族の関係で迷ったときは
自分で親を担当する場合でも、別のケアマネへお願いする場合でも、大切なのは、
本人の生活を中心に考えること
だと思います。
「自分がケアマネだから」
「親だから」
ではなく、
誰が担当したほうが本人にとって一番いいのか。
そこから考えたほうが分かりやすいでしょう。
要介護から要支援になったときに、担当ケアマネがどう変わるのかはこちらで解説しています。
ケアマネにどこまで相談してよいのか迷ったときはこちらも参考にしてください。
ケアマネにどこまで相談できる?何でも屋ではない|家族が知っておきたい上手な頼り方
ケアマネが自分の親を担当するときによくある質問
厚生労働省の居宅介護支援の運営基準を確認した限りでは、親族だからという理由だけで担当を一律禁止する規定は確認できません。
ただし、実際に担当する場合は勤務する事業所の管理者や保険者へ確認しておくと安心です。
同居していることだけを理由に一律禁止する規定は確認できませんが、家族関係と専門職としての立場が重なるため、客観的にケアマネジメントできるかを考える必要があります。
勤務先の方針についても確認してください。
施設側が受け入れ可能であれば選択肢にはなります。
ただし、担当する職員が気を使うことや、自分自身も家族と職員の立場を切り分けにくくなる可能性があります。
私は施設ケアマネとしての経験から、自分の親を同じ施設で担当することは避けたいと考えています。
もちろん構いません。
第三者に任せることで客観的な視点を入れられ、自分は家族として本人を支えることに集中できます。
資格を持っているからといって、自分ですべて担当する必要はありません。
本人や家族がケアプランを自己作成する仕組みはあります。
ただし、サービス事業所との連絡調整や行政への手続きなども必要になるため、担当ケアマネをつける場合とは仕組みが異なります。希望する場合は住んでいる市区町村の介護保険担当窓口へ確認してください。
まとめ|「担当できるか」より本人にとってどうかで考える
ケアマネが自分の親を担当することについて、国の基準を確認した限りでは、親族だから一律に禁止されているわけではありません。
ただし、
できるから、自分が担当する。
それだけで決める必要もないと思います。
- 親族という理由だけで一律禁止する規定は確認できない
- 実際に担当するなら勤務先や保険者へ確認する
- 家族だから生活歴や好みをよく知っている
- 一方で客観的に見づらくなることもある
- 他のサービス事業所や職員が気を使う可能性もある
- 第三者のケアマネへ任せる方法もある
家族だからこそ分かることがあります。
でも、家族だからこそ見えなくなることもあります。
介護の専門職であっても、自分の親の前では一人の息子や娘です。
だから私は、
「ケアマネだから自分で担当する」ではなく、「誰が担当するのが親にとって一番いいか」で考えればいい
と思っています。
私は自分の親をケアマネとして担当した経験はありません。
もし居宅ケアマネだったら、一度は担当してみたいと思います。その代わり、デイサービスなどには「俺の親だからって忖度しなくていいからね」と言うでしょうね。
でも、自分が働く施設へ親を入れて、施設ケアマネとして担当するのは私は嫌です。
親のことが気になるのは当然ですし、職員も私の目を気にすると思います。
資格を持っていても、親の前では家族です。
自分で見るのも一つ。他のケアマネに任せるのも一つ。
親にとって一番いい方法を選べば、それでいいと思います。
【監修・執筆】よっしー
介護福祉士/介護支援専門員(ケアマネジャー)
介護業界18年。介護職として10年以上の現場経験を持ち、施設ケアマネジャーとして約5年勤務。老人ホーム入居相談員として、本人・家族の施設探しや入居相談にも携わる。
介護現場・ケアマネ業務・老人ホーム相談の実務経験をもとに、制度だけでは見えにくい介護のリアルを、本人や家族の目線に立って分かりやすく発信しています。



