老人ホームの入居条件とは?入れる人・入れない人をケアマネがわかりやすく解説
老人ホームを探していると、
「要介護○以上なら入れる」
「認知症でも入居可能」
といった説明をよく見かけます。
でも、実際の老人ホーム探しはそれほど単純ではありません。
結論からいうと、制度上・施設類型上の入居条件を満たしていても、その老人ホームに必ず入居できるとは限りません。
老人ホームの入居では、年齢や介護度だけでなく、
現在どんな病気があるのか。
どんな医療ケアが必要なのか。
認知症の状態はどうなのか。
夜間は眠れているのか。
普段の生活でどのような支援が必要なのか。
こうした情報も確認しながら、その施設で生活を支えられるかを個別に判断することがあります。
私自身、施設ケアマネや老人ホームの入居相談に携わってきましたが、書類上は条件を満たしていても受け入れが難しくなるケースもあれば、逆に「これは難しいかもしれない」と思った方が入居できたケースも何度も経験しました。
この記事では、老人ホームの入居条件について、国の制度だけでなく、実際の施設では入居前に何を確認しているのかまで、現場経験を交えてわかりやすく解説します。
- 老人ホームの基本的な入居条件
- 施設の種類による入居条件の違い
- 条件を満たしていても入居できないことがある理由
- 病気や医療ケアがある人の入居判断
- 認知症や精神疾患がある場合の考え方
- 入居前の書類や本人面談で確認されること
- 希望する施設に断られたときの対処法
- 老人ホームの入居条件は「年齢と介護度」だけではない
- 「入居条件を満たす」と「その施設に入れる」は別の話
- 老人ホームは入居前に何を確認している?
- 書類に書いてあることと実際の本人が違うこともある
- 認知症があると老人ホームに入れない?
- 精神疾患があると老人ホームへの入居は難しい?
- 医療ケアが必要でも入居できる老人ホームはある
- 老人ホーム探しでは「入れるか」より「生活を続けられるか」まで考える
- 老人ホームの種類によって入居条件はどう違う?
- 介護付き有料老人ホームは要介護じゃないと入れない?
- 住宅型有料老人ホームは施設による違いがかなり大きい
- 特養は原則要介護3以上。でも要介護1・2の特例入所もある
- グループホームは「認知症がある」だけでは入れない
- サ高住は「老人ホーム」とは少し考え方が違う
- 施設の種類だけで「入れる・入れない」を決めない
- 希望した老人ホームに断られたらどうする?
- 入居前の情報は隠さない方がいい
- 書類だけで入居判定が決まるとは限らない
- 入居できる施設より「暮らし続けられる施設」を選ぶ
- 入居条件を調べるときは公的な情報も使える
- 老人ホームの入居条件に関するよくある質問
- まとめ|老人ホームの入居条件は「○か×か」だけでは決まらない
老人ホームの入居条件は「年齢と介護度」だけではない
老人ホームの入居条件というと、まず年齢や要介護度を思い浮かべる人が多いと思います。
もちろん、それらは重要です。
ただし老人ホームには、介護付き有料老人ホーム、住宅型有料老人ホーム、グループホーム、特別養護老人ホーム、サービス付き高齢者向け住宅など、さまざまな種類があります。
そして、施設の種類によって制度上の対象者が違います。
さらに同じ種類の施設でも、実際にどこまで受け入れられるかは施設によって違うことがあります。
ここが、老人ホームの入居条件を分かりにくくしているポイントです。
参考:厚生労働省|有料老人ホームの設置運営標準指導指針について
「入居条件を満たす」と「その施設に入れる」は別の話
ここは、私がこの記事で一番伝えたいところです。
老人ホーム探しでは、
① 制度上・施設類型上の入居条件
と、
② 実際にその施設が受け入れられる状態
を分けて考えた方がわかりやすいです。
| 見るポイント | 主な内容 |
|---|---|
| 制度・施設類型上の条件 | 年齢、要介護度、認知症の有無など、そのサービスや施設を利用するための基本条件 |
| 施設ごとの受け入れ判断 | 病気、医療ケア、認知症の状態、生活状況、施設の看護・介護・医療連携体制などを踏まえて個別に確認 |
たとえば、年齢や介護度では入居対象になっていたとしても、現在必要な医療ケアに施設が対応できなければ、受け入れが難しくなることがあります。
逆に、医療ケアが必要だからといって、すべての老人ホームに断られるわけでもありません。
同じ人でも、A施設では受け入れが難しく、B施設では受け入れ可能ということは実際にあります。
老人ホームは入居前に何を確認している?
では、施設側は実際に何を見ているのでしょうか。
私が施設側や入居相談で関わっていたときは、本人の情報を確認する際、特に気にしていたのが、
「何の病気があるのか」
「夜間は眠れているのか」
「認知症の状態はどうなのか」
という部分でした。
さらに、
大きな声を繰り返し出すことがある。
他の人への暴力がある。
施設の外へ出てしまうことがある。
夜間ほとんど眠らず活動する。
介助を強く拒否する。
こうした生活上の様子について確認することもありました。
これは本人を、
「問題のある人」
と決めつけるためではありません。
その施設の人員・設備・医療連携などで、安全に生活を支えられるかを考えるための情報です。
特に夜間の様子は施設側にとって重要な情報
ご家族からすると、
「夜に寝るかどうかまで入居条件に関係するの?」
と思うかもしれません。
でも施設では、昼と夜で職員体制が同じとは限りません。
夜間にどのくらい介助が必要なのか。
眠れずに歩き回ることがあるのか。
大きな声を出すことがあるのか。
転倒の危険が高いのか。
こうした情報は、夜間も安全に生活を支えられるかを考える材料になります。
書類に書いてあることと実際の本人が違うこともある
老人ホームへの入居を検討するときには、本人の身体状況や病気、生活状況などについて、施設へ情報を伝えることがあります。
病院からの医療情報や、介護・生活状況についての情報をもとに、施設側が受け入れを検討することもあります。
でも、書類だけですべてが分かるわけではありません。
これが、そうでもないんです。
私自身、何度も、
「書いてあることと、実際に会った印象が全然違うな」
という経験をしています。
書類を読んで、
「かなり対応が難しそうだな」
と身構えて本人に会いに行ったら、実際にはとても穏やかだった。
そんなこともありました。
もちろん逆もあります。
短時間の面談では穏やかでも、実際に生活を始めてみなければ分からないこともあります。
認知症があると老人ホームに入れない?
認知症があるからといって、老人ホームに入れないわけではありません。
むしろ、認知症の人を対象とした施設もあります。
代表的なのが認知症対応型共同生活介護(グループホーム)です。
厚生労働省の介護サービス情報公表システムでは、グループホームは認知症の利用者を対象に、少人数で共同生活を送りながら日常生活上の支援などを受けるサービスとされています。
介護保険上は、要支援2および要介護1~5の人が対象となり、要支援1の人は利用できません。
また地域密着型サービスのため、原則としてその市区町村の住民が利用します。
参考:厚生労働省|認知症対応型共同生活介護(グループホーム)
ただし、ここでも、
「認知症だからグループホームなら必ず入れる」
というわけではありません。
本人の状態や施設の支援体制などを確認したうえで、受け入れを判断することになります。
精神疾患があると老人ホームへの入居は難しい?
ここも慎重に考えたいところです。
統合失調症やうつ病などの精神疾患があるからという理由だけで、一律に「老人ホームへ入れない」と考えるべきではありません。
実際には、
現在の症状は安定しているのか。
服薬を継続できているのか。
どのような支援が必要なのか。
精神科などの医療機関とどのように連携できるのか。
施設側に対応できる体制があるのか。
といったことを個別に確認していくことになります。
医療ケアが必要でも入居できる老人ホームはある
在宅酸素や尿道カテーテル、胃ろうなど、継続的な医療ケアが必要な人でも、受け入れ可能な老人ホームはあります。
ただし、ここも施設によって対応範囲は大きく異なります。
看護職員がいつ勤務しているのか。
夜間の医療対応はどうするのか。
協力医療機関との連携はどうなっているのか。
必要な処置に対応できるのか。
こうした体制を確認する必要があります。
有料老人ホームには主に介護付きと住宅型があり、介護保険サービスの利用方法も異なります。
| 種類 | 介護保険サービスの基本的な仕組み |
|---|---|
| 介護付き有料老人ホーム | ホームが特定施設入居者生活介護として包括的に介護保険サービスを提供 |
| 住宅型有料老人ホーム | 入居者が必要に応じて外部の訪問介護などと契約して介護保険サービスを利用 |
ただし、「介護付きならこの医療処置は必ず対応できる」「住宅型なら医療に強い」と施設類型だけで判断することはできません。
同じ住宅型でも、比較的自立した人を中心に受け入れる施設もあれば、医療・介護ニーズの高い人を主な対象としている施設もあります。
老人ホーム探しでは「入れるか」より「生活を続けられるか」まで考える
入居を急いでいると、どうしても、
「とにかく入れる老人ホームを探さなきゃ」
となりがちです。
でも、本当に大切なのは入居できることだけではありません。
現在の医療ケアに対応できるか。
認知症が進んでも生活を続けられそうか。
夜間の状態にも対応できるか。
必要な医療機関との連携が取れるか。
費用を継続して支払えるか。
「今入れるか」だけでなく、「この先も暮らし続けられそうか」まで確認することが、老人ホーム選びでは重要です。
実際に施設を見学するときに確認したいポイントはこちらの記事で詳しく解説しています。
→「老人ホーム見学チェックリスト|入居前に確認したいポイント」
老人ホームの種類によって入居条件はどう違う?
ここまで、老人ホームでは年齢や介護度だけでなく、本人の病気や医療ケア、認知症の状態、生活の様子なども確認されることを説明してきました。
もう一つ重要なのが、そもそも施設の種類によって入居対象者が違うということです。
実は、そうとも限りません。
自立している人から入れる施設もあれば、原則として要介護3以上が対象になる施設もあります。
さらに、認知症の診断が必要な施設もあります。
まずは代表的な施設を整理してみましょう。
| 施設・住まい | 基本的な入居条件・特徴 |
|---|---|
| 介護付き有料老人ホーム | 施設ごとに入居時の要件が異なり、自立・要支援から入居できるホームもあれば、要介護者を対象とするホームもある |
| 住宅型有料老人ホーム | 施設ごとに入居条件が異なる。必要な介護は訪問介護など外部の介護保険サービスを利用するのが基本 |
| サービス付き高齢者向け住宅 | 高齢者向けの住まい。安否確認・生活相談が基本サービスで、介護サービスの提供方法は住宅によって異なる |
| グループホーム | 認知症があり、要支援2または要介護1~5の人が対象。地域密着型サービスのため住所地にも条件がある |
| 特別養護老人ホーム | 新規入所は原則要介護3以上。一定の事情がある要介護1・2には特例入所がある |
介護付き有料老人ホームは要介護じゃないと入れない?
介護付き有料老人ホームという名前から、
「要介護の人だけが入る施設」
と思われることがあります。
でも、これも一律ではありません。
厚生労働省が示している有料老人ホームの表示事項では、入居時の要件として、
「入居時自立」
「入居時要介護」
「入居時要支援・要介護」
「入居時自立・要支援・要介護」
などが示されています。
つまり、「介護付き有料老人ホーム=要介護○以上」という全国一律の入居条件ではありません。
希望するホームが、どの状態の人を対象としているのかを確認する必要があります。
介護付きでも対応できる医療ケアは施設によって違う
そして、介護付き有料老人ホームで特に確認したいのが医療対応です。
介護付きだからといって、すべての医療ケアに対応できるわけではありません。
看護職員の配置。
夜間の看護体制。
協力医療機関との連携。
本人に必要な処置。
こうした条件によって受け入れ判断は変わります。
住宅型有料老人ホームは施設による違いがかなり大きい
住宅型有料老人ホームは、特に施設ごとの違いを確認したいタイプです。
住宅型有料老人ホームでは、必要に応じて訪問介護などの外部サービスを利用しながら生活するのが基本です。
でも実際には、同じ「住宅型」という名前でも施設の特徴はかなり違います。
比較的自立した人が暮らしているホーム。
介護が必要な人を多く受け入れているホーム。
看護・医療との連携を強みにしているホーム。
医療・介護ニーズの高い人を中心に受け入れているホーム。
さまざまです。
実際、厚生労働省が公表した令和5年度の調査では、住宅型有料老人ホームの入居者のうち、要介護3~5の中重度者が約54%となっています。
「住宅型」という名前だけを見て、元気な高齢者向けの住宅だと考えるのは実態と合わない場合があります。
参考:厚生労働省|有料老人ホーム・サービス付き高齢者向け住宅の入居者の状況
そうなんです。
むしろ住宅型は、施設名や類型だけで判断せず、中身を見ることが大切だと思います。
「24時間看護師がいる」だけで決めない
医療ケアが必要な方の施設探しでは、
「24時間看護師配置」
を大きな安心材料として見るご家族もいると思います。
もちろん重要な確認ポイントです。
ただ、それだけで判断するのはおすすめしません。
どの医療処置に対応できるのか。
訪問診療はどの医療機関が担当するのか。
緊急時はどうするのか。
現在通っている病院へそのまま通院できるのか。
通院介助には別途費用がかかるのか。
こうしたところまで確認した方が安心です。
特養は原則要介護3以上。でも要介護1・2の特例入所もある
特別養護老人ホーム(特養)は、入居条件が比較的はっきりしています。
現在、新たに特養へ入所する人は原則として要介護3以上です。
ただし、
「要介護1・2なら絶対に入れない」
というわけではありません。
厚生労働省の入所指針では、要介護1・2であっても、居宅で日常生活を送ることが困難なやむを得ない事情がある場合には、特例的な入所が認められています。
特例入所を検討する際には、たとえば、
認知症による症状・行動や意思疎通の難しさが頻繁にある。
知的障害や精神障害などを伴い、在宅生活が難しい。
深刻な虐待が疑われ、安全を確保することが難しい。
家族による支援が期待できず、地域の介護サービスなどだけでは生活を支えることが難しい。
こうした事情が考慮されます。
要介護3ならすぐ特養に入れるわけではない
そして、ここも勘違いされやすいところです。
要介護3になった=特養へすぐ入れる
という意味ではありません。
厚生労働省の指針でも、特養は入所の必要性が高い人を優先することが求められています。
そのため、申し込み後の待機状況や本人・家族の状況などによって、実際の入所時期は変わります。
グループホームは「認知症がある」だけでは入れない
グループホームは、正式には認知症対応型共同生活介護といいます。
名前の通り、認知症の人を対象とした介護保険サービスです。
基本的には、
認知症があること。
要支援2または要介護1~5であること。
原則として、そのグループホームがある市区町村の住民であること。
などが利用の前提になります。
また、介護サービス情報公表制度では、グループホームごとに「利用に当たっての条件」を公表する仕組みもあります。
つまり、制度上の条件を満たしていても、実際の受け入れについては施設への確認が必要です。
参考:厚生労働省|認知症対応型共同生活介護(グループホーム)
サ高住は「老人ホーム」とは少し考え方が違う
サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)は、その名前の通り高齢者向けの「住まい」です。
国の資料では、サ高住で必ず提供される基本的なサービスは、
安否確認
生活相談
とされています。
食事や介護、生活支援などがどこまで提供されるかは、住宅によって異なります。
また、必要な介護については、外部の介護保険サービスを個別に契約して利用するタイプもあります。
一方で、特定施設入居者生活介護の指定を受け、介護付き有料老人ホームと同じ仕組みで介護サービスを提供しているサ高住もあります。
「サ高住」という名前だけでは、どこまで介護してもらえるのか判断できません。
参考:厚生労働省|サービス付き高齢者向け住宅におけるサービスについて
施設の種類だけで「入れる・入れない」を決めない
ここまで見てきたように、老人ホームの入居条件はかなり複雑です。
特養のように制度上の条件が比較的はっきりしている施設もあります。
一方、介護付き・住宅型・サ高住などでは、同じ類型でも入居対象や医療・介護体制に違いがあります。
だから老人ホーム探しでは、
「要介護3だから特養」
「医療が必要だから住宅型」
「認知症だからグループホーム」
と最初から一つに決めてしまわない方がいいです。
制度上の入居条件を確認したうえで、「本人の状態に実際に対応できる施設」を探すことが重要です。
その考え方で大丈夫です。
そして、ここからさらに重要になるのが、施設へ本人の情報をどこまで正確に伝えるかです。
入居を断られるのが怖くて、認知症の状態や夜間の様子、医療ケアなどを軽く伝えてしまうと、入居後に、
「聞いていた話と違う」
となる可能性があります。
老人ホームの種類そのものの違いについては、こちらの記事でも詳しく解説しています。
→「介護施設の種類一覧|全施設類型・高齢者向け住まいの違いをケアマネが徹底解説」
希望した老人ホームに断られたらどうする?
施設へ相談した結果、
「今回は受け入れが難しいです」
と言われることがあります。
そんなことはありません。
一つの施設に断られたことと、「老人ホームへ入れない人」と判断されたことは別です。
大切なのは、まずなぜその施設では受け入れが難しかったのかを確認することです。
医療ケアなのか。
認知症への対応なのか。
夜間の状態なのか。
現在の介護量なのか。
施設の入居条件そのものなのか。
理由が分かれば、次に探す施設の条件が見えてきます。
老人ホームを断られる主な理由については、こちらの記事で詳しく解説しています。
→「老人ホームを断られる理由とは?入居できない7つのケースと対処法」
入居前の情報は隠さない方がいい
施設探しをしているご家族からすると、認知症や夜間の様子などを詳しく伝えることに不安を感じるかもしれません。
「こんなことまで言ったら断られるんじゃないか」
と思いますよね。
でも私は、入居後の生活に関わる情報はできるだけ正確に伝えた方がいいと思っています。
たとえば、
| 伝え方 | より分かりやすい伝え方 |
|---|---|
| 認知症があります | 夕方になると「家に帰る」と話し、玄関へ行くことがあります |
| 夜眠れません | 週に数回、夜中の2時ごろから起きて廊下を歩くことがあります |
| 介護拒否があります | 入浴を強く勧めると怒ることがありますが、時間を変えると入れることがあります |
| 大きな声を出します | 不安が強くなると大声になることがありますが、1対1で話すと落ち着くことがあります |
| 医療ケアがあります | 現在必要な処置の内容・時間帯・頻度まで伝える |
このくらい具体的な方が、施設側も実際の生活をイメージできます。
そして重要なのは、困っていることだけを伝えないことです。
どんなときに落ち着くのか。
どんな声かけなら受け入れやすいのか。
本人が好きなことは何か。
うまくいっている介助方法はあるか。
こうした情報も一緒に伝えます。
書類だけで入居判定が決まるとは限らない
老人ホームへの入居を検討するときには、病院や介護事業所などから本人の状態について情報提供を受けることがあります。
ただ、書類を読めばその人のすべてが分かるわけではありません。
私自身、入居相談や本人確認に関わる中で、
「いや、書類に書いてあるより全然穏やかじゃん(笑)」
と思ったことは何度もあります。
逆もありました。
本人と実際に会ったときは穏やかだった。
受け答えもしっかりしていた。
「これなら施設生活も大丈夫そうだな」
と思った。
ところが入居してみると、夜になるとほとんど眠らず、大きな声を出すことが続いた。
そんなケースもありました。
その通りです。
書類にも限界があるし、30分や1時間程度本人に会っただけでも、24時間の生活すべては分かりません。
だから施設側は、本人との面談だけでなく、家族・病院・ケアマネジャー・現在利用している介護サービスなどからの情報も参考にしながら受け入れを考えます。
「実態調査」は試験ではない
老人ホームへの入居前に、施設職員が本人へ会いに行き、現在の状態を確認することがあります。
介護現場では「実態調査」「実調」などと呼ばれることがあります。
ただし、ご家族からすると、
「合格・不合格を決められる面接」
のように感じるかもしれません。
私はそう考えなくていいと思っています。
確認するのは、
本人にどんな介助が必要なのか。
普段どんな生活をしているのか。
認知症の状態はどうなのか。
どんな医療ケアが必要なのか。
施設で生活するうえで何が必要なのか。
といったことです。
入居できる施設より「暮らし続けられる施設」を選ぶ
老人ホーム探しでは、最初はどうしても、
「入れるか、入れないか」
に目が向きます。
でも入居は生活のスタートです。
その後、本人の状態が変わる可能性があります。
介護量が増える。
認知症が進む。
医療ケアが必要になる。
要介護度が変わる。
だから施設へは、現在の入居条件だけでなく、将来についても聞いておくことをおすすめします。
| 確認したいこと | 質問例 |
|---|---|
| 介護度が上がった場合 | 要介護5になっても住み続けられますか? |
| 認知症が進んだ場合 | どのような状態になると転居の相談が必要になりますか? |
| 医療ケアが増えた場合 | 現在対応できる医療処置と、対応できなくなる目安を教えてください |
| 長期入院した場合 | 入院が長引いた場合、居室や契約はどうなりますか? |
| 看取り | どのような状態まで施設で看取りを行っていますか? |
「今入れるか」より、「状態が変わったときもここで暮らせるか」を聞く。
この視点があると、途中で転居しなければならない可能性を考えながら施設を選べます。
老人ホームの退去・転居については、こちらの記事で詳しく解説しています。
→「老人ホームの退去理由とは?退去になるケースと対処法をケアマネが解説」
入居条件を調べるときは公的な情報も使える
老人ホームを比較するときは、施設のホームページやパンフレットだけでなく、国の介護サービス情報公表システムも参考になります。
介護保険法に基づく情報公表制度で、全国の介護サービス事業所について、サービス内容などの情報を検索・確認できます。
ただし、公表情報だけを見れば本人を受け入れられるかまで分かるわけではありません。
最終的には、現在の本人の状態を伝えて施設へ確認してください。
老人ホームの入居条件に関するよくある質問
要介護認定がなくても入居できる高齢者向け住まい・有料老人ホームはあります。
有料老人ホームには、自立している人から入居できるホームもあります。
一方、特別養護老人ホームやグループホームなど、介護保険制度上の利用条件が定められている施設・サービスもあります。
希望する施設の入居条件を個別に確認してください。
認知症があるという理由だけで老人ホームへ入れないわけではありません。
グループホームのように認知症の人を対象としたサービスもありますし、介護付き有料老人ホームなどで認知症の人を受け入れている施設もあります。
ただし、認知症の状態や必要な支援、施設の受け入れ体制によって判断は異なります。
診断名だけで一律に入居できないとは言えません。
現在の症状、服薬、必要な支援、医療機関との連携、施設側の支援体制などを個別に確認します。
私が勤務していたグループホームのように、精神科医療との連携を背景に精神疾患のある方を受け入れている施設もありました。
まず現在の状態を正確に伝えて施設へ相談してください。
対応している施設はありますが、すべての施設で対応できるわけではありません。
看護体制、医療機関との連携、処置の内容・時間帯などによって判断が異なります。
「胃ろうがあります」だけではなく、現在必要な医療ケアの内容を具体的に伝えて確認しましょう。
本人の身体状況、認知症、医療ケア、食事・排泄・移動などに必要な介助、夜間の様子、普段の生活などを確認されることがあります。
施設によって確認方法や内容は異なります。
良く見せることより、普段の状態を正確に伝えることが大切です。
いいえ。
一つの施設で受け入れが難しくても、別の施設なら対応できることがあります。
なぜ断られたのかを確認して、その理由に対応できる施設を探すことが大切です。
必要に応じてケアマネジャーや老人ホーム紹介サービスなどへ相談する方法もあります。
まとめ|老人ホームの入居条件は「○か×か」だけでは決まらない
この記事は、介護業界18年/介護福祉士/ケアマネジャー/施設ケアマネ経験/老人ホーム入居相談員としての経験をもとに、厚生労働省などの公的資料を確認しながら執筆・監修しています。
- 老人ホームの種類によって制度上の入居条件が違う
- 同じ種類でも施設ごとの受け入れ条件は異なる
- 年齢・介護度だけで入居できるかは決まらない
- 病気・医療ケア・認知症・夜間の状態なども確認されることがある
- 書類や短時間の面談だけでは本人の生活すべては分からない
- 精神疾患や医療ケアがあるだけで一律に入居不可とは言えない
- 一つの施設に断られても、別の施設なら入居できることがある
- 「今入れるか」だけでなく「その後も暮らせるか」を確認する
老人ホームの入居条件というと、
65歳以上。
要介護○以上。
認知症の診断。
そんな数字や条件に目が向きます。
もちろん制度上の条件は大切です。
でも、実際に入居相談をしてきた私の感覚では、それだけで本人の入居が決まるわけではありませんでした。
同じ病気でも、状態は人によって違う。
同じ要介護3でも、必要な介護は違う。
同じ認知症でも、昼と夜では様子が違うことがあります。
そして施設側も同じではありません。
医療に強い。
認知症への対応経験が豊富。
精神科医療との連携がある。
比較的自立した人を中心としている。
施設ごとに特徴があります。
老人ホーム探しは、「この人は老人ホームに入れるか?」ではなく、「この人に合う老人ホームはどこか?」と考えた方がうまくいきます。
入居相談をしていた頃、
「この人、書類だけ見ると結構大変そうだな……」
と思って本人に会いに行ったら、
「めちゃくちゃ穏やかじゃん(笑)」
ということがありました。
逆もあります。
面談では穏やかだったのに、入居して生活が始まってみると、
夜はほとんど眠らない。
大きな声が続く。
聞いていた生活と結構違う。
そんなこともありました。
これは誰かが嘘をついていたという話ではありません。
人の生活って、書類や短時間の面談だけでは全部分からないんです。
だから施設側も慎重になります。
家族側も、断られるのが怖くて本人の状態を良く見せすぎる必要はないと思います。
大変なところも伝える。
でも、
「こうすると落ち着きます」
という本人の良い情報も伝える。
そのうえで、
「この人なら、ここで暮らしていけそう」
と施設側にも納得して受け入れてもらう。
私はそれが一番いい入居だと思っています。
監修・執筆:よっしー
介護福祉士/介護支援専門員(ケアマネジャー)
介護業界18年。介護職として10年以上の現場経験を持ち、施設ケアマネジャーとして約5年勤務。老人ホーム入居相談員として施設探しにも携わる。
介護現場・施設ケアマネ・入居相談の経験をもとに、制度だけでは見えにくい老人ホーム選びや介護の実情を家族目線で分かりやすく発信しています。




